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第十五章 第二次世界大戦(攻勢編)
無意味な抵抗
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グラーフ・ツェッペリンによって英仏海峡の制海権を握られている連合軍は、ドイツ軍が悠々と準備を進めるのを指をくわえて見ていることしかできなかった。
そしてドイツ軍が上陸の準備を始めておよそ4ヶ月、国防軍最高司令部は、イギリス上陸作戦として凍結されていた『ゼーレーヴェ作戦』を再度発令した。同時にイギリスに対し何度目かも分からない和平交渉の申し出を行ったが、チャーチルは聞く耳を持たなかった。
○
「首相閣下、ドイツ軍は上陸作戦の準備をほとんど完了させたと見て間違いないでしょう。いつ仕掛けてきてもおかしくはありません」
アイゼンハワー大将は報告をしにチャーチルを訪ねていた。
「そうか。なら全力で阻止しろ。ジブラルタルに係留してある艦隊を全て出せ。ドイツ人を一人たりともブリテンに踏みいらせるな!」
「分かりました。全力は尽くしましょう」
アメリカ海軍は既に壊滅状態であり、グラーフ・ツェッペリンへの対処は王立海軍の残存艦艇のみで行わねばならない。アイゼンハワー大将は陸軍軍人であるが、勝ち目がないことくらいは分かる。
○
一九四五年三月十六日、英領ジブラルタル。
ジブラルタルに駐留する艦隊は、名前だけは本国艦隊ということになっている。それを指揮するのは今回もヘンリー・ムーア大将である。
「出撃、か。勝てる訳がないというのにな」
「か、閣下、そのようなことは……」
「もう強がっていても仕方なかろう。我々はせめて、王立海軍の誇りを世界に見せつけて、華々しく全滅しようじゃないか」
「は、はい……」
絶望的な空気が漂う中、本国艦隊はジブラルタルを出撃した。ムーア大将の旗艦は戦艦デューク・オブ・ヨークである。
「このような愚かな行為に巻き込まれる軍艦が、可哀想なものだな」
「ええ……」
「いっそのこと艦隊ごとドイツに降伏した方がいいか?」
「な、何を仰いますか!?」
「冗談だ。そんなことをしたら、我が国の歴史に裏切り者として永遠に記録されるだろう」
「閣下! 敵です! 敵が現れました!!」
「何だと!? 早すぎる!」
本国艦隊はまだポルトガルの沿岸を航行している。スペインやポルトガルは中立を保っており、ここにドイツの手が伸びている筈はないのだ。
「し、しかし、間違いありません!」
「まさか、スペインが密かにドイツと通じていたのか……? 確かにフランコはドイツ寄りだが……」
「そうだとすれば、ここはドイツの勢力圏内ということです」
「戦場に辿り着く前に壊滅するなど許されんぞ! 全空母は直ちに戦闘機を出せ! 全艦対空戦闘用意! ……戦艦を守れ!!」
「戦艦、ですか? 空母ではなく?」
「空母など生き残っていたところで大して変わらん! グラーフ・ツェッペリンに止めを刺せる可能性があるのは戦艦だけなんだッ!」
普通は戦艦や巡洋艦や駆逐艦が空母を護衛するものである。しかしムーア大将は逆に、空母の備砲で戦艦を護衛するように命じた。本土にある航空戦力と比べれば空母艦載機など大した戦力ではなく、逆に戦艦を代替する手段はないのだ。
艦載機を発艦させおわった空母は高角砲のキャリアーとして扱い、戦艦を中心とした輪形陣を取って、本国艦隊はドイツ軍の襲撃を迎え撃った。
「ダメです!! こちらの戦闘機ではまるで相手になりません!!」
「やはりグラーフ・ツェッペリンの艦載機が相手か。無茶苦茶な奴め……」
ツェッペリンが艦載機(正確にはツェッペリンと接続した陸上機)をフィンランドから発進させてソ連と戦っていると、イギリスも把握していた。それを今度はスペインから発信させているようだ。
「防衛ラインは突破されました! 敵が来ます!!」
「耐えて全速力で本土を目指せ!! 戦艦を一隻でも生かして本土に到達させろ!!」
それはまさに死に物狂いの作戦であった。ツェッペリンは自らを邪魔するイギリス軍機を叩き落とすと、すぐさま艦隊への攻撃を開始した。本国艦隊は輪形陣の優れた対空砲火でツェッペリンを撃退することを試みるが、精々は時間稼ぎにしかならない。
「イラストリアスが大破! 自力航行不能!!」
戦闘開始10分にして、装甲空母だった筈のイラストリアスが散々に爆弾を落とされ、大破炎上して戦闘能力を喪失した。
「自沈処理をする暇はない! 捨て置いて前進せよ!!」
「はっ!」
「しかし……奴は空母を優先して狙っている。これならば、まだ勝機はあるぞ。甚だ酷い作戦だがな」
グラーフ・ツェッペリンは自分自身が空母であるからなのか、空母を優先して攻撃しているようだ。ムーア大将にとってこれは千載一遇の好機である。空母など全滅しても一向に構わないのだから。
「インドミタブル、轟沈!」
「構うな」
「クイーン・エリザベス大破!! 総員退艦とのこと!」
「クッ……戦艦に狙いを変えたのか……?」
「ヴィクトリアス、動力喪失しました!」
「奴の気はまだ変わっていないようだな……」
「敵が、敵が撤退していくようです!!」
「燃料か弾薬が切れたようだな」
4時間ほどの戦闘で空母5隻と戦艦2隻を失いつつも、本国艦隊は何とか生き延びたようだ。しかし第二波がいつ襲って来るか分からない。
そしてドイツ軍が上陸の準備を始めておよそ4ヶ月、国防軍最高司令部は、イギリス上陸作戦として凍結されていた『ゼーレーヴェ作戦』を再度発令した。同時にイギリスに対し何度目かも分からない和平交渉の申し出を行ったが、チャーチルは聞く耳を持たなかった。
○
「首相閣下、ドイツ軍は上陸作戦の準備をほとんど完了させたと見て間違いないでしょう。いつ仕掛けてきてもおかしくはありません」
アイゼンハワー大将は報告をしにチャーチルを訪ねていた。
「そうか。なら全力で阻止しろ。ジブラルタルに係留してある艦隊を全て出せ。ドイツ人を一人たりともブリテンに踏みいらせるな!」
「分かりました。全力は尽くしましょう」
アメリカ海軍は既に壊滅状態であり、グラーフ・ツェッペリンへの対処は王立海軍の残存艦艇のみで行わねばならない。アイゼンハワー大将は陸軍軍人であるが、勝ち目がないことくらいは分かる。
○
一九四五年三月十六日、英領ジブラルタル。
ジブラルタルに駐留する艦隊は、名前だけは本国艦隊ということになっている。それを指揮するのは今回もヘンリー・ムーア大将である。
「出撃、か。勝てる訳がないというのにな」
「か、閣下、そのようなことは……」
「もう強がっていても仕方なかろう。我々はせめて、王立海軍の誇りを世界に見せつけて、華々しく全滅しようじゃないか」
「は、はい……」
絶望的な空気が漂う中、本国艦隊はジブラルタルを出撃した。ムーア大将の旗艦は戦艦デューク・オブ・ヨークである。
「このような愚かな行為に巻き込まれる軍艦が、可哀想なものだな」
「ええ……」
「いっそのこと艦隊ごとドイツに降伏した方がいいか?」
「な、何を仰いますか!?」
「冗談だ。そんなことをしたら、我が国の歴史に裏切り者として永遠に記録されるだろう」
「閣下! 敵です! 敵が現れました!!」
「何だと!? 早すぎる!」
本国艦隊はまだポルトガルの沿岸を航行している。スペインやポルトガルは中立を保っており、ここにドイツの手が伸びている筈はないのだ。
「し、しかし、間違いありません!」
「まさか、スペインが密かにドイツと通じていたのか……? 確かにフランコはドイツ寄りだが……」
「そうだとすれば、ここはドイツの勢力圏内ということです」
「戦場に辿り着く前に壊滅するなど許されんぞ! 全空母は直ちに戦闘機を出せ! 全艦対空戦闘用意! ……戦艦を守れ!!」
「戦艦、ですか? 空母ではなく?」
「空母など生き残っていたところで大して変わらん! グラーフ・ツェッペリンに止めを刺せる可能性があるのは戦艦だけなんだッ!」
普通は戦艦や巡洋艦や駆逐艦が空母を護衛するものである。しかしムーア大将は逆に、空母の備砲で戦艦を護衛するように命じた。本土にある航空戦力と比べれば空母艦載機など大した戦力ではなく、逆に戦艦を代替する手段はないのだ。
艦載機を発艦させおわった空母は高角砲のキャリアーとして扱い、戦艦を中心とした輪形陣を取って、本国艦隊はドイツ軍の襲撃を迎え撃った。
「ダメです!! こちらの戦闘機ではまるで相手になりません!!」
「やはりグラーフ・ツェッペリンの艦載機が相手か。無茶苦茶な奴め……」
ツェッペリンが艦載機(正確にはツェッペリンと接続した陸上機)をフィンランドから発進させてソ連と戦っていると、イギリスも把握していた。それを今度はスペインから発信させているようだ。
「防衛ラインは突破されました! 敵が来ます!!」
「耐えて全速力で本土を目指せ!! 戦艦を一隻でも生かして本土に到達させろ!!」
それはまさに死に物狂いの作戦であった。ツェッペリンは自らを邪魔するイギリス軍機を叩き落とすと、すぐさま艦隊への攻撃を開始した。本国艦隊は輪形陣の優れた対空砲火でツェッペリンを撃退することを試みるが、精々は時間稼ぎにしかならない。
「イラストリアスが大破! 自力航行不能!!」
戦闘開始10分にして、装甲空母だった筈のイラストリアスが散々に爆弾を落とされ、大破炎上して戦闘能力を喪失した。
「自沈処理をする暇はない! 捨て置いて前進せよ!!」
「はっ!」
「しかし……奴は空母を優先して狙っている。これならば、まだ勝機はあるぞ。甚だ酷い作戦だがな」
グラーフ・ツェッペリンは自分自身が空母であるからなのか、空母を優先して攻撃しているようだ。ムーア大将にとってこれは千載一遇の好機である。空母など全滅しても一向に構わないのだから。
「インドミタブル、轟沈!」
「構うな」
「クイーン・エリザベス大破!! 総員退艦とのこと!」
「クッ……戦艦に狙いを変えたのか……?」
「ヴィクトリアス、動力喪失しました!」
「奴の気はまだ変わっていないようだな……」
「敵が、敵が撤退していくようです!!」
「燃料か弾薬が切れたようだな」
4時間ほどの戦闘で空母5隻と戦艦2隻を失いつつも、本国艦隊は何とか生き延びたようだ。しかし第二波がいつ襲って来るか分からない。
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