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第七章 アメリカ本土空襲
艦隊決戦Ⅲ
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瑞牆率いる水雷戦隊は、米戦艦ミズーリを中心とする前衛部隊と激しい砲撃戦を続けていた。
既に米側の重巡洋艦2隻を撃沈、2隻を大破炎上させ、駆逐艦3隻を撃沈しているが、瑞牆は10発以上の41cm砲弾を喰らって2番主砲塔が大破、高雄は4番5番主砲塔が使用不能という状況であった。妙高は幸いにして大きな損傷はない。
『ま、まったく……戦艦の相手なんて、するもんじゃないね……』
「瑞牆さん……」
『ああ、大丈夫だ。君達より装甲は厚いしダメージコントロールもできる』
瑞牆は強がって平気そうにしているが、既に浸水が広がって艦が沈んできており、本来なら今すぐ撤退すべき状況であった。
『あの戦艦を相手にしていては、いずれわたくし達が撃ち負けるだけです。そろそろ攻勢に出るべきかと』
高雄はそう提案した。
『そうだね。そろそろ潮時だ。雪風、いいなな?』
『もちろんです。雪風に仕事を任せて、結果は保証できませんが』
『君は相変わらずだねえ。任せたよ』
『はい。全力は尽くします』
駆逐艦4隻、即ち雪風、峯風、綾波、天津風がついに動く。敵の前衛が壊滅したところでミズーリに対し雷撃を仕掛けるのである。
○
「駆逐隊、全艦散開。各々ミズーリに突撃せよ」
船魄化によってお互いの連携を取るのは非常に容易である。であれば、わざわざ一纏まりになって敵の艦砲の的になる必要もない。駆逐隊は分散して、敵艦隊の三方から攻め懸かるのである。
「さて、今度も誰も死なないといいのですが……」
残った重巡とミズーリの副砲の攻撃をジグザグ機動で回避しながら、雪風は全速前進する。駆逐艦は本気を出せば時速80kmは出せるので、それが本気で回避行動を取れば砲弾を命中させるのは非常に困難である。
『こちら峯風。敵戦艦を射程に収めた』
「流石、島風型は速いですね。魚雷全門発射してください」
『無論だ』
峯風は魚雷15本を一気に発射する。ミズーリが回避行動を取っても当たるように扇状に撃っているので、3本も当たれば十分である。
だが、その魚雷は突如として間に割って入ってきた駆逐艦によって阻まれた。
『何? まだ生きていたのか?』
「たった今死にましたがね」
『そ、それはそうだが』
どうやら死んだフリをして好機を待ち構えていたらしい駆逐艦は、峯風の酸素魚雷を舷側にモロに喰らい、たちまち船体が真っ二つになって沈んでいった。
「峯風、一旦退避し魚雷の装填を。っと、こちらにも敵が来たようです」
もう死んだフリは通用しないと思ったのか、駆逐艦が一隻、雪風に突進して来た。刺し違えてでも食い止めるといったところだろう。
『主砲が全部高角砲になっていて対処できるのか?』
「雪風は問題ありませんよ。12.7cmもあれば、攻撃力は十分です」
『そういう問題か……?』
一部の主砲を高角砲に置き換えるくらいなら駆逐艦でよくあることだが、雪風は珍しく全ての主砲を高角砲に換装していた。具体的には12.7cm連装高角砲が先頭に、後ろの2つは長10cm連装高角砲である。
「普通の主砲に航空機は狙えませんが、高角砲は航空機も水上艦艇も狙えるんですよ」
『な、ならいいが……』
「問題ありませんよ」
単純な攻撃力なら普通の駆逐艦の主砲と大差ない。雪風は敵駆逐艦の砲撃を回避しながら、早速全ての高角砲で砲撃を開始した。12.7cm砲弾が1発、10cm砲弾が2発命中する。
「ふむ、やはり10cmで対艦攻撃は無理がありましたか」
いずれも炸裂弾である。12.7cmの方は敵艦の艦橋前方の甲板を吹き飛ばしたが、10cmの方は装甲表面で食い止められてしまった。元より航空機を狙うものであり、紙装甲とは言え駆逐艦には相性が悪い。
「まあ、それはそれで、主砲塔一基に集中できるのはいいことですね」
雪風は長10cm砲は牽制に適当に撃つだけで、きちんと狙いを定めるのを12.7cm砲に絞った。雪風が本気を込めた主砲はたちまち10発以上の命中弾を与える。だが雪風も12.7cm砲弾を4発は、それも対艦用の徹甲弾を喰らっていた。
「なかなか、沈みませんね……」
『おい大丈夫か、雪風?』
凛々しい声で尋ねてくるのは駆逐艦綾波であった。長門並に軍人気質の船魄である。
「敵もそろそろ落ちますよ。あなたは自分のことに集中してください」
『そうか。しかし、こちらも敵艦の妨害に遭い戦艦に近寄れぬ』
「そっちに駆逐艦を引き付けてくれていれば、問題ありません。引き続きそのままで」
『承知した』
雪風が放った砲弾が命中すると、敵の駆逐艦は弾薬に引火して大炎上し、戦闘能力を完全に喪失した。綾波と天津風が敵を引き付けているお陰で、雪風を阻むものは何もない。
「さて、それでは行きましょうか。峯風、魚雷の用意はいいですか?」
『いつでもいいぞ!』
「では、魚雷斉射」
峯風と雪風が魚雷を放つ。峯風は15本、雪風は8本である。放射状に描かれる雷跡は美しく斜交し、ミズーリに逃げ場などない。
『命中。4本は当たったぞ!』
「こちらも2本は当たりました。勝ちみたいですね」
ミズーリは6本の魚雷を喰らい沈黙した。
既に米側の重巡洋艦2隻を撃沈、2隻を大破炎上させ、駆逐艦3隻を撃沈しているが、瑞牆は10発以上の41cm砲弾を喰らって2番主砲塔が大破、高雄は4番5番主砲塔が使用不能という状況であった。妙高は幸いにして大きな損傷はない。
『ま、まったく……戦艦の相手なんて、するもんじゃないね……』
「瑞牆さん……」
『ああ、大丈夫だ。君達より装甲は厚いしダメージコントロールもできる』
瑞牆は強がって平気そうにしているが、既に浸水が広がって艦が沈んできており、本来なら今すぐ撤退すべき状況であった。
『あの戦艦を相手にしていては、いずれわたくし達が撃ち負けるだけです。そろそろ攻勢に出るべきかと』
高雄はそう提案した。
『そうだね。そろそろ潮時だ。雪風、いいなな?』
『もちろんです。雪風に仕事を任せて、結果は保証できませんが』
『君は相変わらずだねえ。任せたよ』
『はい。全力は尽くします』
駆逐艦4隻、即ち雪風、峯風、綾波、天津風がついに動く。敵の前衛が壊滅したところでミズーリに対し雷撃を仕掛けるのである。
○
「駆逐隊、全艦散開。各々ミズーリに突撃せよ」
船魄化によってお互いの連携を取るのは非常に容易である。であれば、わざわざ一纏まりになって敵の艦砲の的になる必要もない。駆逐隊は分散して、敵艦隊の三方から攻め懸かるのである。
「さて、今度も誰も死なないといいのですが……」
残った重巡とミズーリの副砲の攻撃をジグザグ機動で回避しながら、雪風は全速前進する。駆逐艦は本気を出せば時速80kmは出せるので、それが本気で回避行動を取れば砲弾を命中させるのは非常に困難である。
『こちら峯風。敵戦艦を射程に収めた』
「流石、島風型は速いですね。魚雷全門発射してください」
『無論だ』
峯風は魚雷15本を一気に発射する。ミズーリが回避行動を取っても当たるように扇状に撃っているので、3本も当たれば十分である。
だが、その魚雷は突如として間に割って入ってきた駆逐艦によって阻まれた。
『何? まだ生きていたのか?』
「たった今死にましたがね」
『そ、それはそうだが』
どうやら死んだフリをして好機を待ち構えていたらしい駆逐艦は、峯風の酸素魚雷を舷側にモロに喰らい、たちまち船体が真っ二つになって沈んでいった。
「峯風、一旦退避し魚雷の装填を。っと、こちらにも敵が来たようです」
もう死んだフリは通用しないと思ったのか、駆逐艦が一隻、雪風に突進して来た。刺し違えてでも食い止めるといったところだろう。
『主砲が全部高角砲になっていて対処できるのか?』
「雪風は問題ありませんよ。12.7cmもあれば、攻撃力は十分です」
『そういう問題か……?』
一部の主砲を高角砲に置き換えるくらいなら駆逐艦でよくあることだが、雪風は珍しく全ての主砲を高角砲に換装していた。具体的には12.7cm連装高角砲が先頭に、後ろの2つは長10cm連装高角砲である。
「普通の主砲に航空機は狙えませんが、高角砲は航空機も水上艦艇も狙えるんですよ」
『な、ならいいが……』
「問題ありませんよ」
単純な攻撃力なら普通の駆逐艦の主砲と大差ない。雪風は敵駆逐艦の砲撃を回避しながら、早速全ての高角砲で砲撃を開始した。12.7cm砲弾が1発、10cm砲弾が2発命中する。
「ふむ、やはり10cmで対艦攻撃は無理がありましたか」
いずれも炸裂弾である。12.7cmの方は敵艦の艦橋前方の甲板を吹き飛ばしたが、10cmの方は装甲表面で食い止められてしまった。元より航空機を狙うものであり、紙装甲とは言え駆逐艦には相性が悪い。
「まあ、それはそれで、主砲塔一基に集中できるのはいいことですね」
雪風は長10cm砲は牽制に適当に撃つだけで、きちんと狙いを定めるのを12.7cm砲に絞った。雪風が本気を込めた主砲はたちまち10発以上の命中弾を与える。だが雪風も12.7cm砲弾を4発は、それも対艦用の徹甲弾を喰らっていた。
「なかなか、沈みませんね……」
『おい大丈夫か、雪風?』
凛々しい声で尋ねてくるのは駆逐艦綾波であった。長門並に軍人気質の船魄である。
「敵もそろそろ落ちますよ。あなたは自分のことに集中してください」
『そうか。しかし、こちらも敵艦の妨害に遭い戦艦に近寄れぬ』
「そっちに駆逐艦を引き付けてくれていれば、問題ありません。引き続きそのままで」
『承知した』
雪風が放った砲弾が命中すると、敵の駆逐艦は弾薬に引火して大炎上し、戦闘能力を完全に喪失した。綾波と天津風が敵を引き付けているお陰で、雪風を阻むものは何もない。
「さて、それでは行きましょうか。峯風、魚雷の用意はいいですか?」
『いつでもいいぞ!』
「では、魚雷斉射」
峯風と雪風が魚雷を放つ。峯風は15本、雪風は8本である。放射状に描かれる雷跡は美しく斜交し、ミズーリに逃げ場などない。
『命中。4本は当たったぞ!』
「こちらも2本は当たりました。勝ちみたいですね」
ミズーリは6本の魚雷を喰らい沈黙した。
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