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番外編・新婚生活に恋のエッセンスは必要か
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しおりを挟む「じゃあ、行ってきます」
「うん、行ってらっしゃい。気をつけてね」
玄関にある鏡の前でネクタイのチェックをする晃史さんに、鞄を手渡した。
入籍して一ヶ月。
彼のマンションで暮らし始めてからは、三ヶ月が過ぎていた。
けれど、「行ってきます」「行ってらっしゃい」のやり取りは未だに面映く、朝から晩まで彼がそばにいることが幸せ過ぎて慣れない。
それに──。
「忘れ物」
「え、なに……っ」
玄関のドアを開けたまま口づけられて、私は手をばたつかせた。
誰かが通るかもしれないのにと、恨みがましく視線を送るが彼はまったく気にも留めない。
「んっ……ん」
触れるだけですぐに離れていくと思っていたのに、晃史さんはますます口づけを深めていった。
舌が入れられて、唾液が送られる。互いの唇が濡れるのもお構いなしに、執拗に口腔内への愛撫は繰り返された。
「ふっ、あ……遅れ、ちゃ……っ」
「もうちょっと」
トンと胸を叩いた手ごと壁に身体が押しつけられて、エプロンが捲り上げられた。
シャツの隙間から入り込んできた手にブラジャーのホックを外されて、冷たい風が外から流れ込んでくるのも構わずに、尖った赤い実が外気に晒された。
「さ、む……っよ」
「すぐ、暑くなる」
指の腹で転がされて硬くしこった実は、ますます腫れていく。胸元から熱が身体中に広がり、私の身体を疼かせた。
シャツは完全に捲られて晃史さんの唇が下へと移動した。首筋を辿りながら、ときおり痛いほどに強く吸われてしまう。
ブラジャーからはみ出した柔らかな肌にいくつもの赤い花びらが散った。
ふるりと揺れる実を口に含まれて、私の身体は快感に戦慄いた。
「ん、あっ……ダメ、だって、ば」
「エプロン姿、唆られるんだよ。仕方ないでしょ」
晃史さんの口の中は熱く、舌での愛撫は私の身体を簡単に昂ぶらせた。もう引き返せない。触れられてもいないのに下肢が疼き、淫らな蜜がとろりと溢れ下着を濡らした。
もうダメだと縋りつくと、開け放たれていた玄関のドアがいささか乱暴に閉められた。
「今日はちょっと早めに行こうって思ってたのに……可愛すぎて無理だ」
「そんなの、知らなっ」
「だってみのり、もう濡れてるだろ? 俺に……足開いてソコ見せてよ」
ツッと内腿を撫でられただけで、無意識に足が開いてしまう。
そうやって数え切れないほど彼に抱かれ、女としての悦びを教え込まれた。
「や、だっ……恥ずかし、からっ」
「早くしないと、遅刻しちゃうよ? みのりも、俺も。責任感の強いみのりは、遅刻とか無断欠勤とか絶対に無理だよね?」
私がそう言われたら逆らえないのをわかっててやっている。
恋人として付き合うようになって、すぐに同棲して、そのあと数ヶ月で結婚した私たちは、まだ出会ってから一年も経っていない。
同棲してからの毎日は驚きの連続だ。
一途で愛情深いところは変わらなかったけれど、彼はかなり意地悪だし、粘着質な性格だった。
身体を重ねていると、もう無理だと白旗を上げてもなかなか離してはもらえない。指で、口で、執拗に愛撫を繰り返されて何度も昇りつめてしまう。
嫌なわけではない。たとえ、どれだけのことをされようと、嫌いになどなれないから困っている。
今だって、逆らう気なんてさらさらない自分が、どれだけ彼に溺れているのかと考えると怖いほどだ。
私は震える手でスカートを捲り上げると、立ったままおずおずと足を開いた。厚手のストッキングを履いていたし、そこまで恥ずかしくはない。
「ストッキング、脱ごうね」
晃史さんは羞恥心が足りないとばかりに、私のストッキングと下着に手をかけて、膝上まで下ろした。
玄関先にしゃがみ込んだ晃史さんの顔が近づいた。淡い茂みは見なくとも濡れて湿り気を帯びているのがわかる。マジマジと見つめられて、私の中はますます疼いた。
晃史さんの長い舌が私の茂みの奥をかき分け、陰核を探しあてた。
「ひぁっ……そ、れ、ダメっ」
「ほら、やっぱり……ここ、もうとろとろだ」
晃史さんの喉が上下に動き、いじられるたびに溢れでる蜜を飲み込まれた。プツリと硬さを増した花芯ばかりを、執拗に責められる。
「あっ、はぁ、ん、ん、そこばっか、や」
「気持ちいいくせに」
だからイヤなのに。
気持ちよすぎて何も考えられなくなるほど、晃史さんを求めてしまうから。
くちゅくちゅと淫靡な音を立てながら舐められて、私は無意識に晃史さんの舌に合わせて腰を揺らしていた。硬く尖った陰核を舌に擦りつけるような動きになってしまう。
快感に慣らされた身体はどうすれば受け入れやすいかを本能的に理解し、より深い快感を得ようとしている。
「後ろ向いて、壁に手をついて」
私は言われるがまま、壁に手をついた。
背後からベルトのバックルを外す音が聞こえる。挿れられるのだと期待した身体は、一気に蜜が溢れ太ももへと垂れていく。
「ん、あっ……はぁ」
「濡れてぬるぬるだ、ここ」
晃史さんの陰茎が後ろから太ももの間に差し込まれて、抜き差しを繰り返した。そのたびに陰部から溢れた愛液が、晃史さんの性器を濡らしぬちぬちと淫らな音を立てる。
「はっ……いいね、これ。擦るだけで、溢れてくる……」
血管の浮き出た赤黒い性器が、私の敏感な花芽を擦るたびに、次から次へと愉悦の波がやってきた。
「あっ、あっ、激しっ、気持ちい……っ」
「っ、俺も」
今にもはちきれそうなほど、足の間でどくどくと怒張が脈打っている。背後から聞こえる彼の声が切羽詰まったものへと変わっていく。
腰を打ちつけるスピードが速くなり、擦られ続けた陰部は形を変えて誘うようにヒクついていた。
「晃史さっ、も……イッちゃうからっ、やっ」
「……っ、挿れてもいないのに? みのりは、随分エッチな身体になったよね」
そう告げる晃史さんにも余裕はなさそうだった。
私の足の間で硬く反り返った陰茎は、時折ビクンビクンと震えている。その度に、快感を散らすように晃史さんは深く息をつき動きを止めていた。
「や、なの」
「いや?」
「奥、ジンジンするから……」
腰を揺らし膣口を亀頭に擦りつける。すると、私の身体を押さえる手に力がこもる。
ヒクついた陰唇を拡げるように、性器の先端が浅い場所を抜き差しする。
私はあまりのもどかしさに、もっと奥へと誘うような動きで彼を誘ってしまう。
「俺のが欲しくて、こんな風になってるの? 入り口がパクパクして、擦ってるだけで乗り込まれそうだ」
「ああっ……や、そこ……」
ちゅぽっと先端が挿れられるだけで、高みに昇ってしまいそうだった。
けれど、ジンジンと奥深くが収縮を繰り返していて、疼きは一向に収まらない。どうすればいいかなど、わかりきっている。
「どうして欲しい?」
「もっ、おねが……挿れて」
「よくできました。ご褒美だよ」
「欲しっ、の……あぁぁっ」
そそり勃った欲望が一気に奥まで突き入れられる。あまりの充足感に、私は呆気なく達してしまった。
「ひ、あっ──!」
「中、ビクビクしてる。もしかして、挿れただけでイッちゃった?」
痙攣し蠢く中を無意識に締めつけると、晃史さんの性器が一段と大きく膨れ上がった。
根元まで埋められた性器が一気に引き抜かれ、彼自身の快感を追うように遠慮なく腰が打ちつけられる。
「あっ、あっ、あぁっ、ダメ、それっ……また、イッちゃう」
ジュッと結合部から愛液が飛び散った。ここが玄関だということも忘れて、私は甲高い声で啼き続けた。
「……っ、俺も……いきそ」
後ろで息を詰めたような気配があり、とろりと粘り気のある精液が中に注がれた。
ずるりと陰茎が引き抜かれると同時に、秘部からは溢れた精液が太ももを伝いタイツを濡らした。
時間がないはずなのに、互いに荒い息を吐き出しながら、それでも名残惜しむような口づけが繰り返される。
「全然足りない。帰ったら、抱くよ」
乱れた衣服を直されて、何事もなかったかのように晃史さんは出勤していった。残された私は、身体の中心に未だに残る熱をどうすることもできずに、誰もいない玄関のドアを睨んだ。
「もう、ばか……」
私が、まだ全然足りてない。
時計を見れば、出勤時間に近い。乱れてしまった髪を整えて、慌ててタイツを履き替える。家から駅までの道を走っていると、ようやく仕事へとスイッチが切り替えられた。
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