37 / 39
34:魔道具店
しおりを挟む
塀を飛び越えた先に有ったのは立派な豪邸だった。
死神の話ではここは魔道具を扱う店だという事だったけど、店と言うより屋敷といった感じだ。
塀から降りた先は庭らしく、生垣には綺麗な花が咲き誇っている。
隅々まで手入れが行き届いている庭は見ていて飽きない。
「うわぁ、凄いわね。お金持ちのお屋敷って感じ。入るところ間違えてない?」
『……そんな訳なかろう……ほら……店主の奴がきおったぞ……』
死神の視線の方を見ると、屋敷からぞろぞろと人が出て来て、こちらに駆け寄って来ている。ざっと30人はいそうだ。
皆、必死の形相で、全力疾走と言った感じだ。
「お出迎え――って感じじゃないわね。何か怖いんだけど?貴方、何をやったのよ?」
『……こやつらの出迎えはいつも大体こんな感じだが?……』
「ようこそお越しくださいました!!デス様!!」
「「「「「ようこそお越しくださいました!!」」」」」
「ひっ!!」
先頭の中年男性が飛び込むように土下座の姿勢をとる。おそらく彼が店主だろう。後ろの人たちもそれに続く。いや、土下座というより五体投地に近いかもしれない。
あまりの迫力に灰田さんが一歩仰け反る。
店主は小太りだが身なりがかなり良い。そんな彼は、着ている高そうな衣装が土で汚れることなど一切気にしていないようだ。
それにしても、死神は名前があったのか。デス、如何にもな名前だ。
『……ふむ、久しいな……今日は買い取りと……【収納の腕輪】があれば買わせて貰いたい……』
「ははっ!……【収納の腕輪】は現在。最大で50kgの物しか在庫が御座いませんが、宜しいでしょうか?」
『……50か……小さいな……それ1つか?……』
「次いで容量が大きのが30kg、こちらは2つ在庫が御座います」
『……では50が1つと……30が1つだ……』
「かしこまりました!!」
会話をする間も、店主は五体投地の姿勢のまま顔を上げずにいる。当然後ろの人たちもだ。
『……買い取って貰いたいのはダンジョン産のドロップ品だ……ここで出しても構わんか?……』
「出来ましたならば、店の方で出して頂けると幸いです」
『……ふむ、良かろう……さっさと案内しろ……』
「ははっ!!」
店主は五体投地の姿勢から一気に立ち上がり、ビシリと姿勢を正す。後ろの人々はまだ体制を変えない。
「こちらで御座います。お連れの方々もどうぞご一緒に」
店主がくるりと踵を返し歩き始める。
僕らは頭を地面に擦り付けたままの人たちの間を縫うように進んだ。
「貴方、凄い人だったの?まるで王様でも接待してるような勢いなんだけど?」
灰田さんはそう言うが、普通の王様にあんな接待はしないと思う。暴君相手ならするかもだけど。
『……普通に買い物をしているだけだが?……それと、我は人ではない……』
「まぁ、アンデッドらしいけど。ってか名前あるんじゃない。デスっていうのね」
『……それは種族名だ……正確にはロード・オブ・デスという種族……らしい……長いのでデスと呼ばせていた……』
「なんだ、名前じゃないのね。それにしても魔物の種族名にロード・オブ・デスって、あまりに物騒ね」
『……まぁ、種族名と言っても……同族は見たことは無いがな……』
「ふ~ん」
会話をしながら、案内されるままに屋敷の中に入る。
まるで正門の様な煌びやかで精巧な作りの両扉を潜ると、内装も凄かった。
柱の一本一本に細やかな細工が施され、廊下には一定間隔で壺や像などの調度品が飾られている。
床には赤い絨毯が敷かれており、埃一つ許さないと言わんばかりに掃除が行き届いている。
「凄っ。あの壺とか、いくら位するのかしらね?」
そんな事を言いながら廊下を進む。
幾つか扉を抜けた先に漸く店らしい場所に出た。
幾つもの商品が展示された場所だが客は一人もいない。それはそうか、よく考えれば死神の姿を人に見せる訳にはいかないし。
「では、買い取りをご希望のアイテムはコチラの台の上にお出しください」
『……ああ……』
死神が指定された台の上に腕輪から次々とアイテムを取り出して置いて行く。
僕の見た事のないアイテムも多い。どうやら深森のダンジョン以外のドロップ品もまとめて売ってしまう様だ。
『……今回はこれだけだ……いくらになる?……』
山積みになったアイテムを前にしても店主は顔色を変えずに答える。
「おそらくは2億ギールにはなるかと。ただ、量が御座いますので、査定に少々をお時間を頂きたく……」
2億!?正直1ギールが日本円に換算するといくら位なのか、まだピンとこないけど、前の村にあった雑貨屋の値段から換算すると大体1ギール10円から30円ぐらいな気がする。
もしそうだとすると2億ギールは、日本円で20~60億!!
……いや、いくらんでもそれはないな。僕の換算ミスだろう。
とはいえ大金なのは間違いない。もしかしなくても死神は大金持ちなのだろう。
『……時間か……どのぐらい掛かる……』
「2、い、いえ――1時間ほど頂ければ、と」
『……ふむ、1時間か……』
「3,30分で終わらせます!!」
『……ふむ、そうしろ……』
「ははっ!!」
店主が頭を下げて即答するが、それに待ったを掛けたのが灰田さんだった。
「いやいや、査定はしっかりして貰いなさいよ。それと、そんなに脅さない。可哀そうでしょ」
『……別に脅してなどいないが?……』
「お、お嬢さん!わ、私のことなど構いませんので、どうぞデス様の望み通りに!」
今度はあわてて店主が灰田さんを止めようとする。
「そもそも私たち別に急いでないでしょ?査定している間、店の中をいろいろと見せて貰いましょうよ。もしかしたら腕輪の他にも掘り出し物が見つかるかもよ?」
『そうだね。こんなに広い店だとかなり時間も潰せるだろうし。あ、でも一般のお客さんがいるところには死神さんは行けないか』
『……まぁ良かろう……店主よ……店の中を見て回りたい……案内を付けろ……』
「はは!!」
おっちゃんは再び即答し、深く頭を下げた。
死神の話ではここは魔道具を扱う店だという事だったけど、店と言うより屋敷といった感じだ。
塀から降りた先は庭らしく、生垣には綺麗な花が咲き誇っている。
隅々まで手入れが行き届いている庭は見ていて飽きない。
「うわぁ、凄いわね。お金持ちのお屋敷って感じ。入るところ間違えてない?」
『……そんな訳なかろう……ほら……店主の奴がきおったぞ……』
死神の視線の方を見ると、屋敷からぞろぞろと人が出て来て、こちらに駆け寄って来ている。ざっと30人はいそうだ。
皆、必死の形相で、全力疾走と言った感じだ。
「お出迎え――って感じじゃないわね。何か怖いんだけど?貴方、何をやったのよ?」
『……こやつらの出迎えはいつも大体こんな感じだが?……』
「ようこそお越しくださいました!!デス様!!」
「「「「「ようこそお越しくださいました!!」」」」」
「ひっ!!」
先頭の中年男性が飛び込むように土下座の姿勢をとる。おそらく彼が店主だろう。後ろの人たちもそれに続く。いや、土下座というより五体投地に近いかもしれない。
あまりの迫力に灰田さんが一歩仰け反る。
店主は小太りだが身なりがかなり良い。そんな彼は、着ている高そうな衣装が土で汚れることなど一切気にしていないようだ。
それにしても、死神は名前があったのか。デス、如何にもな名前だ。
『……ふむ、久しいな……今日は買い取りと……【収納の腕輪】があれば買わせて貰いたい……』
「ははっ!……【収納の腕輪】は現在。最大で50kgの物しか在庫が御座いませんが、宜しいでしょうか?」
『……50か……小さいな……それ1つか?……』
「次いで容量が大きのが30kg、こちらは2つ在庫が御座います」
『……では50が1つと……30が1つだ……』
「かしこまりました!!」
会話をする間も、店主は五体投地の姿勢のまま顔を上げずにいる。当然後ろの人たちもだ。
『……買い取って貰いたいのはダンジョン産のドロップ品だ……ここで出しても構わんか?……』
「出来ましたならば、店の方で出して頂けると幸いです」
『……ふむ、良かろう……さっさと案内しろ……』
「ははっ!!」
店主は五体投地の姿勢から一気に立ち上がり、ビシリと姿勢を正す。後ろの人々はまだ体制を変えない。
「こちらで御座います。お連れの方々もどうぞご一緒に」
店主がくるりと踵を返し歩き始める。
僕らは頭を地面に擦り付けたままの人たちの間を縫うように進んだ。
「貴方、凄い人だったの?まるで王様でも接待してるような勢いなんだけど?」
灰田さんはそう言うが、普通の王様にあんな接待はしないと思う。暴君相手ならするかもだけど。
『……普通に買い物をしているだけだが?……それと、我は人ではない……』
「まぁ、アンデッドらしいけど。ってか名前あるんじゃない。デスっていうのね」
『……それは種族名だ……正確にはロード・オブ・デスという種族……らしい……長いのでデスと呼ばせていた……』
「なんだ、名前じゃないのね。それにしても魔物の種族名にロード・オブ・デスって、あまりに物騒ね」
『……まぁ、種族名と言っても……同族は見たことは無いがな……』
「ふ~ん」
会話をしながら、案内されるままに屋敷の中に入る。
まるで正門の様な煌びやかで精巧な作りの両扉を潜ると、内装も凄かった。
柱の一本一本に細やかな細工が施され、廊下には一定間隔で壺や像などの調度品が飾られている。
床には赤い絨毯が敷かれており、埃一つ許さないと言わんばかりに掃除が行き届いている。
「凄っ。あの壺とか、いくら位するのかしらね?」
そんな事を言いながら廊下を進む。
幾つか扉を抜けた先に漸く店らしい場所に出た。
幾つもの商品が展示された場所だが客は一人もいない。それはそうか、よく考えれば死神の姿を人に見せる訳にはいかないし。
「では、買い取りをご希望のアイテムはコチラの台の上にお出しください」
『……ああ……』
死神が指定された台の上に腕輪から次々とアイテムを取り出して置いて行く。
僕の見た事のないアイテムも多い。どうやら深森のダンジョン以外のドロップ品もまとめて売ってしまう様だ。
『……今回はこれだけだ……いくらになる?……』
山積みになったアイテムを前にしても店主は顔色を変えずに答える。
「おそらくは2億ギールにはなるかと。ただ、量が御座いますので、査定に少々をお時間を頂きたく……」
2億!?正直1ギールが日本円に換算するといくら位なのか、まだピンとこないけど、前の村にあった雑貨屋の値段から換算すると大体1ギール10円から30円ぐらいな気がする。
もしそうだとすると2億ギールは、日本円で20~60億!!
……いや、いくらんでもそれはないな。僕の換算ミスだろう。
とはいえ大金なのは間違いない。もしかしなくても死神は大金持ちなのだろう。
『……時間か……どのぐらい掛かる……』
「2、い、いえ――1時間ほど頂ければ、と」
『……ふむ、1時間か……』
「3,30分で終わらせます!!」
『……ふむ、そうしろ……』
「ははっ!!」
店主が頭を下げて即答するが、それに待ったを掛けたのが灰田さんだった。
「いやいや、査定はしっかりして貰いなさいよ。それと、そんなに脅さない。可哀そうでしょ」
『……別に脅してなどいないが?……』
「お、お嬢さん!わ、私のことなど構いませんので、どうぞデス様の望み通りに!」
今度はあわてて店主が灰田さんを止めようとする。
「そもそも私たち別に急いでないでしょ?査定している間、店の中をいろいろと見せて貰いましょうよ。もしかしたら腕輪の他にも掘り出し物が見つかるかもよ?」
『そうだね。こんなに広い店だとかなり時間も潰せるだろうし。あ、でも一般のお客さんがいるところには死神さんは行けないか』
『……まぁ良かろう……店主よ……店の中を見て回りたい……案内を付けろ……』
「はは!!」
おっちゃんは再び即答し、深く頭を下げた。
31
お気に入りに追加
80
あなたにおすすめの小説
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
その幼女、最強にして最恐なり~転生したら幼女な俺は異世界で生きてく~
たま(恥晒)
ファンタジー
※作者都合により打ち切りとさせて頂きました。新作12/1より!!
猫刄 紅羽
年齢:18
性別:男
身長:146cm
容姿:幼女
声変わり:まだ
利き手:左
死因:神のミス
神のミス(うっかり)で死んだ紅羽は、チートを携えてファンタジー世界に転生する事に。
しかしながら、またもや今度は違う神のミス(ミス?)で転生後は正真正銘の幼女(超絶可愛い ※見た目はほぼ変わってない)になる。
更に転生した世界は1度国々が発展し過ぎて滅んだ世界で!?
そんな世界で紅羽はどう過ごして行くのか...
的な感じです。
[完結:1話 1分読書]幼馴染を勇者に寝取られた不遇職の躍進
無責任
ファンタジー
<毎日更新 1分読書> 愛する幼馴染を失った不遇職の少年の物語
ユキムラは神託により不遇職となってしまう。
愛するエリスは、聖女となり、勇者のもとに行く事に・・・。
引き裂かれた関係をもがき苦しむ少年、少女の物語である。
アルファポリス版は、各ページに人物紹介などはありません。
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
この物語の世界は、15歳が成年となる世界観の為、現実の日本社会とは異なる部分もあります。
異世界でのんきに冒険始めました!
おむす微
ファンタジー
色々とこじらせた、平凡な三十路を過ぎたオッサンの主人公が(専門知識とか無いです)異世界のお転婆?女神様に拉致されてしまい……勘違いしたあげく何とか頼み込んで異世界に…?。
基本お気楽で、欲望全快?でお届けする。異世界でお気楽ライフ始めるコメディー風のお話しを書いてみます(あくまで、"風"なので期待しないで気軽に読んでネ!)一応15R にしときます。誤字多々ありますが初めてで、学も無いためご勘弁下さい。
ただその場の勢いで妄想を書き込めるだけ詰め込みますので完全にご都合主義でつじつまがとか気にしたら敗けです。チートはあるけど、主人公は一般人になりすましている(つもり)なので、人前で殆んど無双とかしません!思慮が足りないと言うか色々と垂れ流して、バレバレですが気にしません。徐々にハーレムを増やしつつお気楽な冒険を楽しんで行くゆる~い話です。それでも宜しければ暇潰しにどうぞ。
転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった
お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。
全力でお母さんと幸せを手に入れます
ーーー
カムイイムカです
今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします
少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^
最後まで行かないシリーズですのでご了承ください
23話でおしまいになります
魔力吸収体質が厄介すぎて追放されたけど、創造スキルに進化したので、もふもふライフを送ることにしました
うみ
ファンタジー
魔力吸収能力を持つリヒトは、魔力が枯渇して「魔法が使えなくなる」という理由で街はずれでひっそりと暮らしていた。
そんな折、どす黒い魔力である魔素溢れる魔境が拡大してきていたため、領主から魔境へ向かえと追い出されてしまう。
魔境の入り口に差し掛かった時、全ての魔素が主人公に向けて流れ込み、魔力吸収能力がオーバーフローし覚醒する。
その結果、リヒトは有り余る魔力を使って妄想を形にする力「創造スキル」を手に入れたのだった。
魔素の無くなった魔境は元の大自然に戻り、街に戻れない彼はここでノンビリ生きていく決意をする。
手に入れた力で高さ333メートルもある建物を作りご満悦の彼の元へ、邪神と名乗る白猫にのった小動物や、獣人の少女が訪れ、更には豊富な食糧を嗅ぎつけたゴブリンの大軍が迫って来て……。
いつしかリヒトは魔物たちから魔王と呼ばるようになる。それに伴い、333メートルの建物は魔王城として畏怖されるようになっていく。
~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます
無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる