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25:黄金の騎士

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 黄金の騎士、扉の先にそれはいた。
 サイズは普通の成人サイズだ。
 右手に黄金の長剣、左手に黄金の盾。金色の鎧に赤いマント。意匠の凝った鎧は芸術品の様だ。
 子は兜に覆われて確認できない。いや、ひょっとしたら鎧自体が魔物で、中身などいないのかも知れない。

 黄金の騎士が徐に一歩こちらに近づく、長剣の切っ先が少し上を向いた。
 僕も【シャドウエッジ】で長剣を作り、黄金の騎士と対峙する。

 2人同時に地面を蹴った。

 黄金の長剣と漆黒の長剣がぶつかり火花を散らす。

 【シャドウエッジ】の長剣を力任せに上に弾くと、黄金の長剣が宙に舞った。
 しかし、黄金の騎士は隙を見せない。
 直ぐに盾を前面に構え、そのまま突撃してくる。
 思い切り横っ飛びをしてそれを躱した。
 
 振り返ると、宙から落ちて来た長剣をキャッチする黄金の騎士の姿があった。

 強い……わけではないと思う。
 動きや力は今までのフロアボスとそこまで差はない。
 ただ、なんというか違和感がある。

 違和感の正体に気づけないまま、数度切り結び、今度は騎士の構えた盾ごと【シャドウエッジ】で切り裂く。
 そこで僕は漸く違和感の正体に気が付いた。

 無傷。

 盾も鎧も、何度も切り結んだはずの剣さえも、刃こぼれの一つもしていない。
 【シャドウエッジ】がここまでダメージを与えられないなんて今までになかった。
 単に黄金の騎士の防御力が今までの魔物の比ではないほどに高いのか、それとも別の何かがあるのか。
 残念ながら僕に【鑑定】のスキルはない。
 ただ幸いなことにこっちにはスキルレベルMAXの【鑑定】を持った死神がいる。

 『死神さん。この魔物、攻撃が一切効かないみたいなんですけど―――』
 『……ふむ……【鑑定】……』

 死神が黄金の騎士に【鑑定】のスキルを使う。
 死神は既にこのフロアボスと戦った事があるはず、それなのに【鑑定】を使うと言う事は、死神は問題なくこのフロアボスを倒すことが出来、尚且つ僕がダメージを与えられない原因が分からないから、ということだろう。

 『……どうやらそやつは物理攻撃しか効かんらしい……ダメージが与えられない原因は【シャドウエッジ】のようだな……』

 なるほど、要は20階層にいた半透明な鎧の逆ということか。
 死神が覚えていなかったのは、このダンジョンの敵は物理攻撃で倒しているからだろう。
 逆に半透明の鎧の方だけ別の方法で倒す必要があったから、そちらだけ覚えていたのだろう。

 そうと分かれば簡単だ。【シャドウエッジ】以外の武器で攻撃すれば良い。
 ――ってあれ?
 僕他の武器を持っていないぞ。魂喰いの大鎌ソウルイーターはフロアボスには効かないし……
 
 どうしよう
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