Fragment of the Fantasy

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第二章 天空へと到る道

第十六話 聖 剣

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 大いなる力を手にしたアルエディー達は竜王ヴェスドラの好意でカラミティー・ウォールの付近に着陸してもらった。
「主らよ、あとはそなたらの力で解決するのだ。平穏が訪れた後、再び我の前に来る事があればまた相手をしてやろう」
 竜王ヴェスドラの言葉にみなそれぞれ挨拶をするとそれを聞き終えたヴェスドラは大きな翼を優々しく広げ、飛ぶためにそれを羽ばたかせた。彼の周りの空気が激しく揺れるのにも拘らず、その場にいる者たちが吹き飛ばされる事が無かった。そして、優雅に地上から離陸して行く。
 天空の島に行っている間にカラミティー・ウォールが王国内まで進攻し国境付近の町は大被害を受けていた。民衆の被害はそ探索探知器けではない。異常にあふれ出る異形の怪物達、南部大陸からの進攻で沈静化していた帝国軍の王国内支配がふたたび活性化し始めていた。短期間で南部との決着が付いたのではなくカラミティー・ウォールが南部大陸まで侵食し、そこから来る軍隊は一月も経たなくして撤退を余儀なくされたのだ。
 アルエディー達は破壊の壁の方へ向かって前進して行く。それから途中、王国内国境の町エストから逃れた難民キャンプに立ち寄り国内の状況の情報を集めていた。人々と話す度、アレフ新王とセフィーナ姫の存在を知った者たちは二人の生存に喜び、希望の光を見出したような瞳をその場にいる全員に見せていた。

 怪爽の月27日目、カラミティー・ウォールの前にアレフは立ち塞がり、剣を構える。
「私の方は準備できた。アルの方は?」
「あと少し待ってくれ・・・、おいレザードこれどうやって動かすんだ?」
 騎士は使い方が分からないエーテルヴィジョン放送を流すための機材をレザードに尋ねていた。
「あぁああぁーーーっ、アルエディーは何もしなくていいですから放送後に現れるかもしれない帝国兵迎撃のために戦う方の準備に徹してください」
 彼等はカラミティー・ウォールの脅威を取り払うため、国民全体の思いの力を集めるのにエーテルヴィジョンを使って報せようと言うのである。ここまで来るのに元王国兵士や帝国の圧政や怪物の脅威から民衆を護るレジスタンスが幾らか同行していた。
「アレフ新王、準備はできましたよ。こちらに向いて王国民衆に演説をお願いいたします」
 一度鞘に剣を収め、エーテル映像送信機へ向きなおした。
「国民の皆様、今まで身を潜めて新たな王として皆様に何もできなかった事を悔やむばかりです。しかし今、私は大切な仲間と共に帝国と戦う事を決意しました。その最初に我が国に脅威をもたらし徐々に国内を破壊し侵食し、迫り来る私の後方に見えるあの壁を取り払うために皆様の力をお借りしたい。皆様が強くあの壁を壊したいと念じれば、この剣がその力を現実化してくれるでしょう。私にみなの力を!」
 アレフは鞘からエクスペリオンを抜き出し、それを天高々と掲げ、影像を通してそれを見ている者たちへ示した。それの放送を見ていた各地の国民は新王アレフの生存を知って大喜びし、彼の言葉に従うよう強くそれに念じ答えた。
 人々の思いを受け始めた剣がまばゆく輝きだす。アレフの中に人々の思いの強さが伝わり始めていた。アレフは静かに目を瞑り、どれ程まで力をためれば前方の大きな巨壁を打ち砕けるか探っていた。人々の思いを剣の力にする事、約10ヌッフ。掲げていた剣先から光の筋がほとばしる。アレフは目を見開き、前方の壁に向かって勢いよく突進、そして大きく跳躍し今まで上げていた腕を渾身の力で振り下ろす。剣先からのびていた光の筋、光の牙がカラミティー・ウォールに食い込んで行く。
 その光牙を巧みに操るように眼前の壁を滅多切りにし光牙が完全に消え去った頃、今までそこにすさまじい衝撃波で天に昇っていた巨大で広大な広さを持っていたカラミティー・ウォールもまた消滅していたのであった。
 アレフは一緒にここへ来ていたレジスタンスや元王国兵、そして仲間達の歓喜の声が聞こえてくるのではと思い振り返ってみるが・・・。しかし、それは無かった。エーテルヴィジョンを見ていたのは何も王国国民だけではない。この国に駐屯している帝国兵だって見ていたのだ。最も近場にいた帝国兵の軍隊がそれを見て阻止にやってきたのである。アレフの所にアルエディー、セフィーナ、セレナ、レザード、アルティアが送甲虫数匹を連れ駆け込んできた。
「アレフ、早く乗れ、一先ずここは退却して身を潜めるぞ」
「何を言っているアルよっ、彼等を置いて行こうと言うのか!?」
「違うっ!彼等は俺達を逃がすために戦ってくれているんだ。アレフ、この人数だけで帝国に勝てると思うのか?今は戦力を整え、奴らに対抗できるようになってから迎え撃てばいい」
「そうですよ、アレフ新王、あの放送を流したのです。レジスタンスや元王国兵もどこかに集まっておのおのに決起するでしょう。ですから私達もそれまで戦力を整え、準備ができたら戦えば良いのです」
「分かった。今は君たちの言葉に従わせてもらおう」
 アルエディーは手を差し伸べ送甲虫にアレフを乗せて、移動を開始しさせた。
「みなのモノありがとう」
 アレフは帝国兵と戦っている者たちの方を振り向き、小さくそう口にしていた。
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