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第 二 章 虚構と言う名の現実

第七話 ライヴァル登場?

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~ 2002年9月9日、月曜日 ~

 今月でもうあれから一年も経つのか、昨日久しぶりに涼崎さんの見舞いに行ってきたが変化ナッシング。
 生きているけど眠ったまま。植物人間とは違うって医者は言っていた。
 俺から見たらなんら植物人間と変わり無い。
 彼女はいつ覚醒するのだろうな?目覚めた時、彼女は変わってしまった現実をしっかりと受け止められるのだろうか?
 彼女は隼瀬を許せるのだろうか?彼女じゃない、俺がそんな事を分かるはずが無い。
 今、宏之は隼瀬なしじゃダメなくらいべったりしている。
奴もやっと立ち直った。
 一年も掛けて。
 貴斗の奴は相変わらず記憶喪失のままだ。
 最近、色々な意味でヤツの記憶が戻らない方がいいのではと思い始めた。
 今、藤宮さんと一緒に居て幸せそうに見えるアイツ、過去の悲惨な記憶などいらなくてもいい。
 別に彼女が幼馴染みだって覚えてなくたっていい。
 今が上手く言っていれば。
 これ以上、この現実を壊したくない。
 貴斗にとっては記憶が無い方が非現実なのかもしれないけどな。
 この広いキャンパス内を歩きながらそんな風に近状について考えていた。
「ヘイッ、ユーっ!」
 誰かが俺を呼んでいる、だが無視だ。
 知らない人について行っては駄目だと両親にも姉貴にも言われている。
 今後、可愛く成長するだろう俺の妹にも言われそうだから無視する。・・・妹の右京は絶対姉貴を見習わないで成長して欲しいと願いながら振り向かず歩く。
「ユー、ストップ、ストップ、プリーズ!」
 聞こえない、聞こえない、理解できない、判らない、無視して歩く速度を上げた。
 何故か俺の足音と同じく、シカトを決め込んだやつの足音も早くなっていた。
「ハァ~~~、二ホン人ツメタイですネェ。ミーは二ホン人ミナ、カインドだとキキしていました。オーマイッガッ、ジィーズッ!」
「オイッ、先入観だけで日本人をみんなそうと思うな!お前の国のやつらは皆クリスチャンか?」
〈しっ、しまったつい受け答えをしてしまった〉
「Answer is NOです、それにミーはオマエなんてネームでないです。Clife Ford、ミーをクライフってヨバレてください」
「俺はヤガミ・シンジ、しょうがないから付きやってやる、クライフって言ったけ?」
「やっと、ミーのコト、キにしてくれました。サンクス!ミスター・ヤぁガぁ~~~ミっ!」
「でっ、クライフとやら、何か用事か?」
「ミーは〝クライフトヤラ〟でないクライフ、OK、ミスター・ヤガミ?」
〈コイツ、もう俺の苗字、覚えやがった、なかなかやるな!〉
 だが、しかし、まだ日本語に順応しきれていないだけなのかボケを言っているのかこのクライフとやらは解析不能。
「クライフ、俺に何か用か?」
「ワタシ、マヨッテしまいまシタ。キャンパスはラージ。SSCはドコです」
「SSC?何だ、そりゃ?」
 聞きなれない言葉を耳にした俺の顔は変に崩れたと・・・、思う。
「スチューデント・サービス・センターでSSCデス。ザ・デパートメント・オブ・エデュケーショナル・アフェアーズともいいますです。ミー、マダニホンごヨクわからないデス。クラス・スケジュールなどをキイタリするトコロデス。ミーのクニではそこでクレジット、チェックします」
 彼の言っている事を要約して見る?・・・分からん、貴斗に聞いて見た方が早い。
 何故そう思ったかは秘密。
「クライフ、3分くれ!」
「インスタント・ヌードル、イートデスか?」
「ちがう!」
「ミーのクニでも大人気デス」
 やつを無視して貴斗の携帯に電話!
「もしもし、貴斗か?」
「ハイ、あなたの仰るとおり藤原貴斗デス。ちら様でしょうか?」
 変な事を言えば即切られるのを学習済み、素直に名前と用件を言った。
「八神慎治、貴斗に聞きたい英単語がある」
「俺の知っている言葉だったら、答えられる」
「SSCかザ・デパートメント・オブ・エデュケーショナル・アホヤーズ。分かるか?」
 クライフが言った言葉を間違えず貴斗に伝えた。多分・・・、間違っていないはず。
「SSC?・・・、学生課か?ザ・デパートメント・オブ・エデュケーショナル・アホ?・・・、アフェアーズ・・・・・・たしか、教務課の筈」
 ヤツSSCだけで何の訳か分かったのか?凄い。
「貴斗、サンキュ!」
「イギリスでは学生課と教務課別々に存在するが米国は一緒にする事が多い。レジストレーション・オフィス、大学内では学科登録・会計課をさす。アドミニストレーションオフィスは学部の教諭管理課、職員室の方があっているかも」
とヤツはさらにそう補足まで付け加えてくれた。
「今、どこにいる?」
「バイトに向かっている途中」
 こいつ、また藤宮さんをほっぽりだして、仕事に行く気だな?またっく、どうしてくれよう?・・・、やっぱここは言うべきだろうな、彼女のためにも。
「お前、少しは藤宮さんともっと居てやろうと思わないのか?」
『ブッ、ツゥーーーっ!』
 余計な事を言えば直ぐこれだ。
マアいいや、用件はバッチリ、聞いたし。しかし、なんだぁな、記憶喪失で失語症になることもあるようだけど。
 大抵、言語関係と体に染み付いた行動や技術、っていうのは忘れる事は少ないらしいんだよな、同じ記憶でも。だが、奴にとってアメリカ英語は第二外国語、そこまで容易に覚えているものだろうか?、まあいいや。
「クライフ、分かったぜ」
「ユぅー、ノー?Good!プリーズ、テイク、ミー、ゼアーっ!」
 多分、連れて行けといっているんだろう。
 ショウガナイここでこいつをほったらかしにしても可哀想だ。
 それに、こんな所でさよならしたら他の連中にも同じ様にしつこく付きまといそうだし、俺が貧乏くじ引いてやるか?
 サークルは遅れても大丈夫だから連れて行ってやるとする。
「OK、レッツ、ゴーっ!」とクライフに言ってやった。
 学生課に着くまでクライフに色々聞いたし聞かれた。
 奴はアメリカ生まれでミシガン州と言う州で育ったと言っていた。
 母方の父親は日本人。クウォーターってやつ。
 学部はなんと同じ国際経済学部。
 この国と自分の国の経済を回復したいそうだ。
 夢がでかい。
 学生課に着いた時、俺の時間割を聞かれたので答えてやったが・・・言わなかった方が良かったかも。
 俺と全部同じ時間割にしやがった。
 学生課、会計課、教務課、最後に取るクラスの講師たちに挨拶したいって言ったから学部の職員室につれて行ってやった。
 結構律儀なやつ。
「ミスター・ヤガミ、サンクス!アイ、リアリー、アプリシエイチュー」
「オーケー、オーケー、ノープロブレムだ」
 最後クライフが言った言葉の意味は分からなかったけど俺はそう返してやった。
「ウェル、ミスター・ヤガミ、ミーはクラブにジョインしたいです。ハウ、ドゥー、ザット?」
「・・・?!」
 わからネェ~~~英語勉強しなおしか?国際経済学部だから英語は必修。
 こいつにまともな日本語を教える代わりに英語を習おう。
 即そう決めた。
「ミスター・ヤガミ、アイ、ウォンナ、ジョイン、ザ、クラブ!」
「分かった、分かった、おちつけ、で何のクラブだ?」
「レッツ、プレイ、テニス」
 クライフはラケットを振る動作をして見せた。
かなり様になっている。
 こやつ出来るッ!はぁ~、サークルまで同じかよ!
 即座にコイツを連れて行くか悩んでしまった。
 人生の分岐点!
「ミスター、プリーズ、プリ~ズっ!」
 やつはアメリカン・スマイルをしながら訴えてくる。しかも強引な感じでだ。
「サークルまで一緒かよ、全く」
「サークル?ファッツ?」
 英語ではクラブとサークルって違う意味なのか?と疑問に思った。
「サークルとクラブは一緒の意味」
「ニホン語ムズカしいデス」
 これ以上コイツと話していたら精神疲労が溜まる一方だ。
 ササッと部室に連れて行って事無きに収めよう。
 こうしてクライフ・フォードと言う留学生と知りあるようになった。
 腐れ縁で大学卒業後も付き合うようになる要注意人物。
 まあ、こんなやつが友達にいてもいいかな?
 貴斗と違って交友関係を広めたいからな。
 広めたいと思うだけで誰とでも深く付き合うわけじゃない。
 これから先も野郎は宏之や貴斗の様に深く付き合って行きたいと思うのは馬が合うやつだけだ。
 女の子は別だけどね。
 こんな事を思ってはいるけど今でもあいつの事を変わらず想っている俺がそこにいた。・・・・・・・・・なぁ~~~んって思っては見るが俺には似合わない。
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