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番外編
宝物(瞳の誕生) 前編
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2005年6月10日、それは理人と梨花にとって大切な日である。
この日の朝、梨花は出勤する理人を見送った後、洗濯物を干していた。
うー、まただ……。
今日はお腹の張りが続いているなあ。
しかも、何だか痛みが強くなっている気がする。
梨花は命が宿った大きなお腹を擦りながら痛みの波に耐えている。
何とか休みながら洗濯物を干し終えた梨花は病院へ電話した。
その結果、予定日1週間前の現在であることを考慮すると陣痛の可能性があると言われ、診察を行うために病院へ来院するように勧められた。
電話を終えた梨花は予め用意していた入院セットを持ってタクシーで病院へ向かう。
「あっ、理人くんに連絡しないと」
タクシーの中で仕事中の理人に梨花はメールを送った。
陣痛が来たかも。
今、タクシーで産院に向かっています。
しかし、仕事中の理人はその連絡に気付かず、梨花が産院に着くまでに返信は無かった。
そして、理人がその連絡に気付いたのは2時間後のお昼休憩の時である。
「あっ、梨花ちゃんから連絡がきてる」
梨花のメールを読んだ理人はその送信時間に気付き、慌てて返信する。
今日は仕事を抜けられそうに無くてごめん。
仕事が終わったらすぐに向かうから。
安産になることを願っているよ。
そのメールが届き、梨花の鞄の中で携帯の受信音が鳴る。
しかし、陣痛に耐えていた梨花が携帯を見る余裕は無い。
病院に着いてから痛みが本格的に続くようになった梨花はそのまま分娩のために入院することが決まっていた。
やがて、痛みを乗り越えた結果、分娩室に元気な赤ちゃんの産声が響く。
「元気な女の子ですよ!」
その声と共に助産師が赤ちゃんを抱いて梨花に近付く。
疲労困憊の梨花であったが、助産師に抱かれた我が子を見ると顔に笑みが浮かんだ。
「ふふっ、かわいい」
体に痛みが残ってまだ苦しかったが、我が子の可愛さに梨花は癒されていた。
梨花が出産してから3時間後に仕事を終えた理人が病院に駆け付ける。
その頃には梨花も普通に話せる状態まで回復し、病室に移って体を休めていた。
「遅くなってごめん!もしかしてもう産まれた?」
「お仕事、お疲れ様。うん、元気な女の子が産まれたよ!新生児室にいるから先に顔を見ておいで」
ちょうど梨花が夕飯を食べていた時であったため、理人に先に赤ちゃんを見るように勧める。
そう言われた理人は梨花に労りの言葉を掛けてから、一度病室を後にした。
そして、梨花が夕飯を食べ終わった頃、理人が再び病室に現れる。
「赤ちゃんを見てきたよ。梨花ちゃんに似てかわいい顔をしているね!」
「えー、そうかなー?理人くんに似ているから、かわいいんだよ」
赤ちゃんを見てお互いに愛する人に似ていると感じた2人は、顔を合わせて微笑み合う。
「ふふっ、どっちにも似ていて2人の子どもって感じがするね」
「そうね。そして、我が子が1番かわいく見えるからどっちも親バカになりそうだわ」
愛する我が子の誕生を2人とも喜び、幸せに満ちていた。
後日、生まれた赤ちゃんは「瞳」と名付けられる。
この日の朝、梨花は出勤する理人を見送った後、洗濯物を干していた。
うー、まただ……。
今日はお腹の張りが続いているなあ。
しかも、何だか痛みが強くなっている気がする。
梨花は命が宿った大きなお腹を擦りながら痛みの波に耐えている。
何とか休みながら洗濯物を干し終えた梨花は病院へ電話した。
その結果、予定日1週間前の現在であることを考慮すると陣痛の可能性があると言われ、診察を行うために病院へ来院するように勧められた。
電話を終えた梨花は予め用意していた入院セットを持ってタクシーで病院へ向かう。
「あっ、理人くんに連絡しないと」
タクシーの中で仕事中の理人に梨花はメールを送った。
陣痛が来たかも。
今、タクシーで産院に向かっています。
しかし、仕事中の理人はその連絡に気付かず、梨花が産院に着くまでに返信は無かった。
そして、理人がその連絡に気付いたのは2時間後のお昼休憩の時である。
「あっ、梨花ちゃんから連絡がきてる」
梨花のメールを読んだ理人はその送信時間に気付き、慌てて返信する。
今日は仕事を抜けられそうに無くてごめん。
仕事が終わったらすぐに向かうから。
安産になることを願っているよ。
そのメールが届き、梨花の鞄の中で携帯の受信音が鳴る。
しかし、陣痛に耐えていた梨花が携帯を見る余裕は無い。
病院に着いてから痛みが本格的に続くようになった梨花はそのまま分娩のために入院することが決まっていた。
やがて、痛みを乗り越えた結果、分娩室に元気な赤ちゃんの産声が響く。
「元気な女の子ですよ!」
その声と共に助産師が赤ちゃんを抱いて梨花に近付く。
疲労困憊の梨花であったが、助産師に抱かれた我が子を見ると顔に笑みが浮かんだ。
「ふふっ、かわいい」
体に痛みが残ってまだ苦しかったが、我が子の可愛さに梨花は癒されていた。
梨花が出産してから3時間後に仕事を終えた理人が病院に駆け付ける。
その頃には梨花も普通に話せる状態まで回復し、病室に移って体を休めていた。
「遅くなってごめん!もしかしてもう産まれた?」
「お仕事、お疲れ様。うん、元気な女の子が産まれたよ!新生児室にいるから先に顔を見ておいで」
ちょうど梨花が夕飯を食べていた時であったため、理人に先に赤ちゃんを見るように勧める。
そう言われた理人は梨花に労りの言葉を掛けてから、一度病室を後にした。
そして、梨花が夕飯を食べ終わった頃、理人が再び病室に現れる。
「赤ちゃんを見てきたよ。梨花ちゃんに似てかわいい顔をしているね!」
「えー、そうかなー?理人くんに似ているから、かわいいんだよ」
赤ちゃんを見てお互いに愛する人に似ていると感じた2人は、顔を合わせて微笑み合う。
「ふふっ、どっちにも似ていて2人の子どもって感じがするね」
「そうね。そして、我が子が1番かわいく見えるからどっちも親バカになりそうだわ」
愛する我が子の誕生を2人とも喜び、幸せに満ちていた。
後日、生まれた赤ちゃんは「瞳」と名付けられる。
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