コアラの歩み

三条 よもぎ

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高校生編

第27話 悩み事

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佐藤と別れて朋花はそのまま家に帰ったが、瞳はまだ帰宅していなかった。
1人きりの静かな家にいると先程の佐藤の言葉が頭の中を駆け巡る。

まさかこの歳になって告白されるなんて思わなかったわ。
確かに久しぶりに話しても、学生時代と同じように盛り上がって楽しかった。
でも、付き合うってなるといろいろと考えないといけないことがあるわね……。

どれくらいの時間が経っただろうか。
朋花が1人思い悩んでいると、玄関の扉が開く音と瞳の声が聞こえた。

「ただいまー。お母さん、もう帰ってる?」

その声を聞いて我に返った朋花は慌てて玄関に出迎えに行く。

「お、おかえり。今日はお疲れ様」

瞳の荷物を持つのを手伝おうと朋花は玄関に向かったが、声を掛ける時に口ごもってしまった。
そんな朋花を見て瞳は訝しい表情をする。

「お母さんの方こそ疲れてない?今日のお出掛けはあんまり楽しくなかったの?」

毎日一緒に過ごしている瞳は朋花の些細な違いにもすぐ気付く。
しかし、本当の理由を言えない朋花は誤魔化すしかなかった。

「うーん、いっぱい歩いたからいつの間にか疲れていたのかなあ。今日は友達といっぱい話せて楽しかったよ」
「へえ、そうだったんだね。やっぱり友達と出掛けるっていいね」

その言葉を聞いて瞳は不信感を残しながらもそれ以上問い詰めることはしなかった。
瞳に疑われていることが分かった朋花は苦笑いをしながらやり過ごす。

「それで今日の練習試合はどうだった?」
「勝ったり負けたりだったよ。まず最初の試合はね……」

そして、今度は朋花が今日の練習試合の結果を瞳に質問し、話を逸らすことに成功した。
瞳の試合の話となり、朋花は安堵しながら話を聞く。
そのまま瞳は朋花のいつもと違う様子のことを忘れたようで、その後に話題に出ることは無かった。


数日後、瞳は時折朋花が考え事をしていることが気になっていた。
この前は朋花が何とも無いと言っていたが、やはり様子がいつもと違うと感じた瞳は思い切って質問する。

「ねえ、お母さん。最近よくぼーっとしていることがあるけど、何か悩み事があるんじゃないの?」

瞳の質問は図星であったが、内容を瞳に言えない朋花は以前と同じように誤魔化す。

「えっ、そうかなー?歳を取って疲れやすくなったからぼーっとしているのかも」

そう朋花は返事をしたが、今日の瞳は引き下がらない。

「それだけじゃないでしょう?お母さんは私に悩んでいるなら教えてって言うじゃん。お母さんも悩んでいるなら教えてよ。私だってお母さんの力になりたい」

力強い瞳の言葉を聞いて朋花はついに降伏する。

確かにそうね。
瞳の優しさをこのまま蔑ろには出来ないわ。

そして、朋花が悩んでいる本当の理由を瞳に説明しようと口を開いた。
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