ずっと隣にいます

三条 よもぎ

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第7話 教えて欲しいの

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「あのね、実はこの前、私が風邪を引いて学校を休んだ日のことなんだけどね。差し入れはありがたかったんだけど、どうして学校を休んだのが分かったのかなと思って……」

緊張で俯きがちになりながら千景はストレートに侑人に疑問をぶつけた。

「ああ、そのことでしたか。簡単ですよ。先輩が朝、いつもの時間に家を出なかったから、今日は休みなんだなって確信したんです」

その言葉を聞いて千景は訳が分からず、怪訝な表情になる。
一方、侑人はそんな千景を気にせずにそのまま話を続ける。

「後は差し入れを持っていった時に『体調不良で休んだって聞いたんですけど』って先輩のお母さんに鎌を掛けたら夏風邪だって教えてくれたから、風邪用に用意していた袋を渡したんです」

侑人は飄々とした表情で答えるが、千景はより一層疑問が深まる。

「えっ、お母さんに鎌を掛けたって、当てずっぽうで来たの?それと、私が家を出るのをいつも確認してるのってどういうこと!?結構ギリギリに家を出てるから、待ってたら遅刻するよね?しかも、近い時間に出てるはずなのに、侑人くんに全然会わないよ!?」

混乱しながら話す千景に対して、またもや侑人は素知らぬ顔で質問に答える。

「遅刻なんてしませんよ。何ならたぶん僕の方が先輩より1本早い電車に乗っているんじゃないかな。何たって僕は陸上部ですから」

どうやら千景が毎朝最寄り駅まで20分掛けて歩いている道のりを、侑人は軽く走って10分か15分程で到着していたようであった。
千景は人通りの多い大通りを歩いているが、侑人は裏道を通って近道をしている。
加えて持久走が得意な侑人だからこそなせるわざであった。

「でも、毎朝走るなんて大変でしょう?どうしてそんなことを……」

方法は分かったが、目的が分からない千景はなおも侑人を質問攻めにしていた。
それでも侑人は千景のように動揺することなく、すらすらと答えていく。

「そりゃあ、先輩の体調が悪くないか知るためですよ。ほら、だから、この前役に立ったでしょう?本当は学校に着くまで見守っていたいのですが、さすがにそれはストーカー過ぎるので控えていますよ」
「あっ、ありがとう……」

毎朝、家を出るのを確認する時点で既にストーカーなのではと千景は思ったが、それは口に出せず、お礼だけを伝えて口をつぐんだ。
そして、会話の流れが途絶えた時、侑人が突然立ち上がって学習机の引き出しを漁り始める。

「えっと確かこの辺に……。あっ、あったあった。はい、これを見て下さい」

そう言いながら千景が侑人から手渡されたのは何枚かの写真であった。
千景が困惑しながらもその写真を見ていくとあることに気付く。
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