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第9話 掴んだチャンス
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首都に到着したジョエルは戦略会議に参加した。
しかし、弱小貴族で発言権は無いため、黙って聞くのみである。
「王国の後宮には大勢の美女がいる。これを巡って身内で争いが起きるのを避けるために、先に担当を決めておきたい。順に聞いていく故、希望者の名を述べてくれ」
どうやら今回の戦いに貴族が参加したのは戦力不足では無く、敗戦国の人間を褒美として分け与えるためであったようだ。
政治権力と関わりの無い辺境国のジョエルには初耳のことであった。
「では、そなたから聞こう」
今回の戦いでは捕虜は捕まえた者が権利者となるため、兵力の大きい順に貴族達が希望を答えていく。
弱小貴族のジョエルに選択肢は無く、最後に残り物の令嬢を割り当てられた。
翌日、各担当の名が記された王宮内の地図が手渡される。
ソフィアの部屋は2階の端か。
片隅に部屋があるくらいだから王の寵愛は受けていないはず。
上手くいけば妻に出来るかもしれないと、ジョエルは少し期待していた。
ジョエルは地図を持って、領地の若者達が待つ寮へと向かった。
「皆、お待たせ。今回の戦いの作戦について説明するから聞いてくれ」
会議で聞いたことを皆に伝える。
そして、最後にジョエルの考えた作戦を述べた。
「僕はこの人を出来れば妻に迎えたいと思っている。これは貧乏伯爵の息子と言われ、結婚出来なかった僕に巡ってきたチャンスだ。だから、彼女を無傷で捕まえることに協力して欲しい」
その言葉に皆、頷いた。
25歳になるジョエルは子爵でありながら婚約者すら居ない。
なぜなら、辺境で貧乏な暮らしになることを嫌い、貴族の子女から避けられているからだ。
そのことを皆、知っており、また戦いに参加するが殺傷を避けたいことは皆、同じ思いであった。
父上が結婚出来たのも運が良かったからだ。
貴族の娘でありながら、正妻に家を追い出された妾の娘のため平民育ちの母が、貧乏暮らしを気にせず、嫁いでくれたのだ。
僕にも今やっと、運命の女神が微笑んでくれたようだ。
ジョエルはソフィアを妻にする気満々で戦場へと向かった。
ジョエル一行は帝国軍のほぼ最後尾だったため、ストルメント王国の王宮に入る頃にはほぼ戦闘が終わっていた。
先頭の貴族が略奪を行っているようで、宝石などを運ぶ兵とすれ違いながら王宮の奥を目指す。
戦闘が無いため、あっという間にソフィアの部屋の前に着いた。
周囲に人気が無いため、既に逃げているのではないかと懸念しながら、ジョエルは扉を開ける。
すると、まだ中に居た女性と目が合う。
恐らくこの人がソフィア嬢か。
まだ居てくれてよかった。
話し掛けようと部屋の中に入れば、ソフィアはどんどん後退る。
その様子を見て、これ以上怯えさせないようにするために、小声で他の人は部屋の外で待機するように指示し、ジョエルだけ部屋に入る。
鞄の中を必死に探しているソフィアはジョエルが目に入っていないようなので、これはチャンスとゆっくり近付いていった。
もう少しでソフィアを捕まえられると思ったその時、ソフィアの手に果物ナイフが握られており、それを自身の首元を目掛けて振り下ろし始めた。
「駄目だ!」
咄嗟に叫んだジョエルはソフィアに駆け寄り、その手からナイフをはたき落とす。
そして、再び拾わないようにソフィアの手を掴みながら話し掛けた。
しかし、弱小貴族で発言権は無いため、黙って聞くのみである。
「王国の後宮には大勢の美女がいる。これを巡って身内で争いが起きるのを避けるために、先に担当を決めておきたい。順に聞いていく故、希望者の名を述べてくれ」
どうやら今回の戦いに貴族が参加したのは戦力不足では無く、敗戦国の人間を褒美として分け与えるためであったようだ。
政治権力と関わりの無い辺境国のジョエルには初耳のことであった。
「では、そなたから聞こう」
今回の戦いでは捕虜は捕まえた者が権利者となるため、兵力の大きい順に貴族達が希望を答えていく。
弱小貴族のジョエルに選択肢は無く、最後に残り物の令嬢を割り当てられた。
翌日、各担当の名が記された王宮内の地図が手渡される。
ソフィアの部屋は2階の端か。
片隅に部屋があるくらいだから王の寵愛は受けていないはず。
上手くいけば妻に出来るかもしれないと、ジョエルは少し期待していた。
ジョエルは地図を持って、領地の若者達が待つ寮へと向かった。
「皆、お待たせ。今回の戦いの作戦について説明するから聞いてくれ」
会議で聞いたことを皆に伝える。
そして、最後にジョエルの考えた作戦を述べた。
「僕はこの人を出来れば妻に迎えたいと思っている。これは貧乏伯爵の息子と言われ、結婚出来なかった僕に巡ってきたチャンスだ。だから、彼女を無傷で捕まえることに協力して欲しい」
その言葉に皆、頷いた。
25歳になるジョエルは子爵でありながら婚約者すら居ない。
なぜなら、辺境で貧乏な暮らしになることを嫌い、貴族の子女から避けられているからだ。
そのことを皆、知っており、また戦いに参加するが殺傷を避けたいことは皆、同じ思いであった。
父上が結婚出来たのも運が良かったからだ。
貴族の娘でありながら、正妻に家を追い出された妾の娘のため平民育ちの母が、貧乏暮らしを気にせず、嫁いでくれたのだ。
僕にも今やっと、運命の女神が微笑んでくれたようだ。
ジョエルはソフィアを妻にする気満々で戦場へと向かった。
ジョエル一行は帝国軍のほぼ最後尾だったため、ストルメント王国の王宮に入る頃にはほぼ戦闘が終わっていた。
先頭の貴族が略奪を行っているようで、宝石などを運ぶ兵とすれ違いながら王宮の奥を目指す。
戦闘が無いため、あっという間にソフィアの部屋の前に着いた。
周囲に人気が無いため、既に逃げているのではないかと懸念しながら、ジョエルは扉を開ける。
すると、まだ中に居た女性と目が合う。
恐らくこの人がソフィア嬢か。
まだ居てくれてよかった。
話し掛けようと部屋の中に入れば、ソフィアはどんどん後退る。
その様子を見て、これ以上怯えさせないようにするために、小声で他の人は部屋の外で待機するように指示し、ジョエルだけ部屋に入る。
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もう少しでソフィアを捕まえられると思ったその時、ソフィアの手に果物ナイフが握られており、それを自身の首元を目掛けて振り下ろし始めた。
「駄目だ!」
咄嗟に叫んだジョエルはソフィアに駆け寄り、その手からナイフをはたき落とす。
そして、再び拾わないようにソフィアの手を掴みながら話し掛けた。
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