7 / 58
第7話 家族
しおりを挟む
「僕は父の補佐として働いているんだ。父も母も役所の執務室で働いていて、力仕事とか外回りの仕事は僕がしているんだ。あっ、ソフィアは家族と連絡が取れない状況なのに、家族の話をしてごめんね」
「いえ、大丈夫です。ジョエル様のお話に興味がありますので、ぜひお聞かせ下さい」
本当は不仲な家族のことなど頭にも無かった。
しかし、そんなことを言う訳にもいかず、ソフィアはジョエルに話の続きをするように促した。
ソフィアにおだてられて上機嫌なジョエルは、子どもの頃の話などたくさん語る。
内心はどうでもいいと思いながら、ソフィアは笑顔で相槌を打ち続けた。
こんなに笑顔で家族の話が出来るなんて、やっぱりジョエル様は幸せな家庭で育ったのね。
私とは無縁の世界過ぎて理解出来ないわ。
ある程度話をするとジョエルはソフィアの話も聞きたくなって話題を振る。
「ソフィアには兄弟はいるのかい?」
「はい、弟と妹がいます。ジョエル様はご兄弟がいらっしゃるのですか?」
家族の話をしたくないソフィアは最低限だけ答えて、話をジョエルに戻す。
ソフィアからの質問に自分に興味を持って貰えたと思ったジョエルは、嬉しくてまた語り始めた。
「養子なんだけど弟がいるんだ。元は学校の後輩だから弟と言うより友人に近いんだけどね。優秀な弟は首都で働いているからまた帰って来たら紹介するよ」
「そうなんですね。お会い出来る日を楽しみにしております」
普通の人であれば、どんな仕事をしているのか、どんな経緯で養子になったのかなどを質問して話を広げるだろう。
しかし、あまり他人に興味の無いソフィアはそれ以上突っ込んで聞くことは無かった。
やがて、昼食の時間となったため、街に入ると馬車を止めて宿屋の食堂に入る。
庶民が多く集まる場所のようでガヤガヤとした店内にソフィアは少し驚いた。
「後宮暮らしの君には合わない場所でごめんね。手持ちが少ないから貴族が利用するレストランには行けそうに無いんだ」
眉を下げながら謝るジョエルに、ソフィアは慌ててフォローする。
「いえ、ジョエル様と同じ食事を頂けるだけで身に余る程です。ありがとうございます」
地下牢の粗末な食事に比べれば、温かいご飯が食べられるだけで十分幸せであった。
しかも、ここでは食事を奪われることは無い。
美味しそうに食べるソフィアを見て、ジョエルは口に合わない食事でも何一つ文句を言わない姿に感動しながら食事を終えた。
馬車は再び、ブランシール領に向けて進んでいく。
景色の良い湖畔の道に差し掛かり、2人は窓の外の景色を眺めていた。
ふとジョエルが視線をソフィアに向けると、満腹になり睡魔に襲われて船を漕ぐ姿が目に入る。
「眠たいのなら遠慮せずに寝て構わないよ」
「見苦しい姿をお見せして申し訳ありません。ジョエル様の前で居眠りなど恐れ多いことです」
ソフィアは慌てて姿勢を正すが、ジョエルはソフィアに遠慮させてしまい、申し訳なく思う。
そんなつもりで言った訳じゃないんだ。
我慢しなくてもいいのに。
そう思ったジョエルはある提案を持ち掛ける。
「実は僕は女性に膝枕することに憧れていたんだ。ぜひやらせてくれないか?」
ジョエルの頼みであれば、ソフィアは断ることは出来ない。
ソフィアはジョエルの隣に座って、ジョエルの膝に頭を乗せた。
男性にこんなことしたこと無いから恥ずかしいわ。
でも、大きな手が気持ちよくて小さい頃にママにして貰ったのを思い出すわ。
ソフィアの頭を撫でるジョエルの手と馬車の揺れが気持ち良くて、ソフィアはいつの間にか眠っていた。
ソフィアの寝顔を見て、ジョエルは微笑む。
こんなかわいい姫がそばにいてくれるなんて幸せだな。
戦いに徴兵された時にはまさか姫を連れて帰るなんて想像もしてなかったよ。
ソフィアの栗色の髪を撫でながら、ジョエルは戦いの始まりを思い返していた。
「いえ、大丈夫です。ジョエル様のお話に興味がありますので、ぜひお聞かせ下さい」
本当は不仲な家族のことなど頭にも無かった。
しかし、そんなことを言う訳にもいかず、ソフィアはジョエルに話の続きをするように促した。
ソフィアにおだてられて上機嫌なジョエルは、子どもの頃の話などたくさん語る。
内心はどうでもいいと思いながら、ソフィアは笑顔で相槌を打ち続けた。
こんなに笑顔で家族の話が出来るなんて、やっぱりジョエル様は幸せな家庭で育ったのね。
私とは無縁の世界過ぎて理解出来ないわ。
ある程度話をするとジョエルはソフィアの話も聞きたくなって話題を振る。
「ソフィアには兄弟はいるのかい?」
「はい、弟と妹がいます。ジョエル様はご兄弟がいらっしゃるのですか?」
家族の話をしたくないソフィアは最低限だけ答えて、話をジョエルに戻す。
ソフィアからの質問に自分に興味を持って貰えたと思ったジョエルは、嬉しくてまた語り始めた。
「養子なんだけど弟がいるんだ。元は学校の後輩だから弟と言うより友人に近いんだけどね。優秀な弟は首都で働いているからまた帰って来たら紹介するよ」
「そうなんですね。お会い出来る日を楽しみにしております」
普通の人であれば、どんな仕事をしているのか、どんな経緯で養子になったのかなどを質問して話を広げるだろう。
しかし、あまり他人に興味の無いソフィアはそれ以上突っ込んで聞くことは無かった。
やがて、昼食の時間となったため、街に入ると馬車を止めて宿屋の食堂に入る。
庶民が多く集まる場所のようでガヤガヤとした店内にソフィアは少し驚いた。
「後宮暮らしの君には合わない場所でごめんね。手持ちが少ないから貴族が利用するレストランには行けそうに無いんだ」
眉を下げながら謝るジョエルに、ソフィアは慌ててフォローする。
「いえ、ジョエル様と同じ食事を頂けるだけで身に余る程です。ありがとうございます」
地下牢の粗末な食事に比べれば、温かいご飯が食べられるだけで十分幸せであった。
しかも、ここでは食事を奪われることは無い。
美味しそうに食べるソフィアを見て、ジョエルは口に合わない食事でも何一つ文句を言わない姿に感動しながら食事を終えた。
馬車は再び、ブランシール領に向けて進んでいく。
景色の良い湖畔の道に差し掛かり、2人は窓の外の景色を眺めていた。
ふとジョエルが視線をソフィアに向けると、満腹になり睡魔に襲われて船を漕ぐ姿が目に入る。
「眠たいのなら遠慮せずに寝て構わないよ」
「見苦しい姿をお見せして申し訳ありません。ジョエル様の前で居眠りなど恐れ多いことです」
ソフィアは慌てて姿勢を正すが、ジョエルはソフィアに遠慮させてしまい、申し訳なく思う。
そんなつもりで言った訳じゃないんだ。
我慢しなくてもいいのに。
そう思ったジョエルはある提案を持ち掛ける。
「実は僕は女性に膝枕することに憧れていたんだ。ぜひやらせてくれないか?」
ジョエルの頼みであれば、ソフィアは断ることは出来ない。
ソフィアはジョエルの隣に座って、ジョエルの膝に頭を乗せた。
男性にこんなことしたこと無いから恥ずかしいわ。
でも、大きな手が気持ちよくて小さい頃にママにして貰ったのを思い出すわ。
ソフィアの頭を撫でるジョエルの手と馬車の揺れが気持ち良くて、ソフィアはいつの間にか眠っていた。
ソフィアの寝顔を見て、ジョエルは微笑む。
こんなかわいい姫がそばにいてくれるなんて幸せだな。
戦いに徴兵された時にはまさか姫を連れて帰るなんて想像もしてなかったよ。
ソフィアの栗色の髪を撫でながら、ジョエルは戦いの始まりを思い返していた。
0
お気に入りに追加
46
あなたにおすすめの小説
すべてが嫌になったので死んだふりをしたら、いつの間にか全部解決していました
小倉みち
恋愛
公爵令嬢へテーゼは、苦労人だった。
周囲の人々は、なぜか彼女にひたすら迷惑をかけまくる。
婚約者の第二王子は数々の問題を引き起こし、挙句の果てに彼女の妹のフィリアと浮気をする。
家族は家族で、せっかく祖父の遺してくれた遺産を湯水のように使い、豪遊する。
どう考えても彼らが悪いのに、へテーゼの味方はゼロ。
代わりに、彼らの味方をする者は大勢。
へテーゼは、彼らの尻拭いをするために毎日奔走していた。
そんなある日、ふと思った。
もう嫌だ。
すべてが嫌になった。
何もかも投げ出したくなった彼女は、仲の良い妖精たちの力を使って、身体から魂を抜き取ってもらう。
表向き、へテーゼが「死んだ」ことにしようと考えたのだ。
当然そんなことは露知らず、完全にへテーゼが死んでしまったと慌てる人々。
誰が悪い、これからどうするのか揉めるうちに、自爆していく連中もいれば、人知れず彼女を想っていた者の復讐によって失脚していく連中も現れる。
こうして彼女が手を出すまでもなく、すべての問題は綺麗さっぱり解決していき――。
愛する婚約者に殺された公爵令嬢、死に戻りして光の公爵様(お父様)の溺愛に気づく 〜今度こそ、生きて幸せになります〜
あーもんど
恋愛
「愛だの恋だのくだらない」
そう吐き捨てる婚約者に、命を奪われた公爵令嬢ベアトリス。
何もかもに絶望し、死を受け入れるものの……目を覚ますと、過去に戻っていて!?
しかも、謎の青年が現れ、逆行の理由は公爵にあると宣う。
よくよく話を聞いてみると、ベアトリスの父────『光の公爵様』は娘の死を受けて、狂ってしまったらしい。
その結果、世界は滅亡の危機へと追いやられ……青年は仲間と共に、慌てて逆行してきたとのこと。
────ベアトリスを死なせないために。
「いいか?よく聞け!光の公爵様を闇堕ちさせない、たった一つの方法……それは────愛娘であるお前が生きて、幸せになることだ!」
ずっと父親に恨まれていると思っていたベアトリスは、青年の言葉をなかなか信じられなかった。
でも、長年自分を虐げてきた家庭教師が父の手によって居なくなり……少しずつ日常は変化していく。
「私……お父様にちゃんと愛されていたんだ」
不器用で……でも、とてつもなく大きな愛情を向けられていると気づき、ベアトリスはようやく生きる決意を固めた。
────今度こそ、本当の幸せを手に入れてみせる。
もう偽りの愛情には、縋らない。
◆小説家になろう様にて、先行公開中◆
*溺愛パパをメインとして書くのは初めてなので、暖かく見守っていただけますと幸いですm(_ _)m*
あなたと別れて、この子を生みました
キムラましゅろう
恋愛
約二年前、ジュリアは恋人だったクリスと別れた後、たった一人で息子のリューイを生んで育てていた。
クリスとは二度と会わないように生まれ育った王都を捨て地方でドリア屋を営んでいたジュリアだが、偶然にも最愛の息子リューイの父親であるクリスと再会してしまう。
自分にそっくりのリューイを見て、自分の息子ではないかというクリスにジュリアは言い放つ。
この子は私一人で生んだ私一人の子だと。
ジュリアとクリスの過去に何があったのか。
子は鎹となり得るのか。
完全ご都合主義、ノーリアリティなお話です。
⚠️ご注意⚠️
作者は元サヤハピエン主義です。
え?コイツと元サヤ……?と思われた方は回れ右をよろしくお願い申し上げます。
誤字脱字、最初に謝っておきます。
申し訳ございませぬ< (_"_) >ペコリ
小説家になろうさんにも時差投稿します。
至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます
下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。
破滅フラグを回避したいのに婚約者の座は譲れません⁈─王太子殿下の婚約者に転生したみたいだけど転生先の物語がわかりません─
江崎美彩
恋愛
【作品名を変更しました】
侯爵家の令嬢エレナ・トワインは王太子殿下の婚約者……のはずなのに、正式に発表されないまま月日が過ぎている。
王太子殿下も通う王立学園に入学して数日たったある日、階段から転げ落ちたエレナは、オタク女子高生だった恵玲奈の記憶を思い出す。
『えっ? もしかしてわたし転生してる?』
でも肝心の転生先の作品もヒロインなのか悪役なのかモブなのかもわからない。エレナの記憶も恵玲奈の記憶も曖昧で、エレナの王太子殿下に対する一方的な恋心だけしか手がかりがない。
王太子殿下の発表されていない婚約者って、やっぱり悪役令嬢だから殿下の婚約者として正式に発表されてないの? このまま婚約者の座に固執して、断罪されたりしたらどうしよう!
『婚約者から妹としか思われてないと思い込んで悪役令嬢になる前に身をひこうとしている侯爵令嬢(転生者)』と『婚約者から兄としか思われていないと思い込んで自制している王太子様』の勘違いからすれ違いしたり、謀略に巻き込まれてすれ違いしたりするラブコメです。
長編の予定ですが、一話一話はさっくり読めるように短めです。
以前公開していた小説を手直しして載せています。
『小説家になろう』『カクヨム』にも投稿しています。
偽物令嬢〜前世で大好きな兄に殺されました。そんな悪役令嬢は静かで平和な未来をお望みです〜
浅大藍未
恋愛
国で唯一の公女、シオン・グレンジャーは国で最も有名な悪女。悪の化身とまで呼ばれるシオンは詳細のない闇魔法の使い手。
わかっているのは相手を意のままに操り、心を黒く染めるということだけ。
そんなシオンは家族から疎外され使用人からは陰湿な嫌がらせを受ける。
何を言ったところで「闇魔法で操られた」「公爵様の気を引こうとしている」などと信じてもらえず、それならば誰にも心を開かないと決めた。
誰も信用はしない。自分だけの世界で生きる。
ワガママで自己中。家のお金を使い宝石やドレスを買い漁る。
それがーーーー。
転生して二度目の人生を歩む私の存在。
優秀で自慢の兄に殺された私は乙女ゲーム『公女はあきらめない』の嫌われ者の悪役令嬢、シオン・グレンジャーになっていた。
「え、待って。ここでも死ぬしかないの……?」
攻略対象者はシオンを嫌う兄二人と婚約者。
ほぼ無理ゲーなんですけど。
シオンの断罪は一年後の卒業式。
それまでに生き残る方法を考えなければいけないのに、よりによって関わりを持ちたくない兄と暮らすなんて最悪!!
前世の記憶もあり兄には不快感しかない。
しかもヒロインが長男であるクローラーを攻略したら私は殺される。
次男のラエルなら国外追放。
婚約者のヘリオンなら幽閉。
どれも一巻の終わりじゃん!!
私はヒロインの邪魔はしない。
一年後には自分から出ていくから、それまでは旅立つ準備をさせて。
貴方達の幸せは致しません!!
悪役令嬢に転生した私が目指すのは平凡で静かな人生。
【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。
三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。
それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。
頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。
短編恋愛になってます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる