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第2章 夜明けの光
第30話 初恋 - Side L -
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ルイスが庭園に来た目的はただのサボりであった。
この日の王立学園の授業は午前中で終わり、午後から自宅で家庭教師から授業を受ける予定であったのだ。
しかし、家に帰りたくなかったルイスは王宮の庭園をぶらぶらとしながら時間を潰している。
両親からは「勉強しろ、ジュード王子と仲良くしろ」と言われるが、どれも意味を見出だせない。
サボっても家に帰った時に、ジュード王子に誘われて図書館に行っていたとでも言えば叱られないだろう。
なんせ両親はジュード王子のためなら何でもしろと言うからな。
勉学も交友関係も決められたレールを走るように両親から強要される生活に、ルイスは飽き飽きとしていた。
そんな中、小さな女の子と女性が花を見ながら会話しているのが視界に入る。
「ねえ、このあかいおはなはなあに?」
「えっとですね……。うーん……」
ネリネに花の名前を尋ねられた乳母であったが、名前が分からずに返答に悩んでいた。
その様子を見てルイスは横から声を掛ける。
「この花はね、ラナンキュラスって言うんだよ」
声を掛けられた2人は揃ってルイスの方を向いた。
そして、ネリネは花の名前が分かった嬉しさから満面の笑みを浮かべてお礼を述べる。
「わー、ありがとう!おにいちゃん、ものしりですごいね!」
その顔を見てルイスの心に温かな気持ちが流れ込む。
問題に答えてお礼を言われたのは初めてかもしれない。
今まで正解するのが当たり前の殺伐とした世界で生きてきたルイスには、ネリネの笑顔が衝撃的であった。
ルイスが固まっていると遠くから男性が近付いてくる。
「おーい、ネリネ。お待たせ。一緒に帰ろう」
それはネリネを迎えに来たネリネの父であった。
その姿を見てネリネはルイスにお礼を述べてから立ち去る。
「おにいちゃん、ありがとう!バイバイ!……ちちうえー!おかえりなさい」
乳母もルイスに会釈をしてからネリネの後を追う。
父の元に向かうネリネに手を振ってからルイスもその場を離れた。
庭園の奥に向かって歩きながら、ルイスは考え事をする。
今まで勉強は両親の道具となるためだけにさせられていると思っていたが、こんな風に役立つ日が来るとは。
初めて勉強していてよかったと思った。
あの子の名前は「ネリネ」と言うのか。
もう忘れないぞ。
勉強の意味が分からずにやさぐれていたルイスは、その日からネリネに執着するようになる。
そして、ネリネのことを調べたルイスは、いつの日かネリネと婚約することを夢見るようになった。
まだ彼女は幼いから今は求婚出来ない。
でも、いつの日か成長した彼女を迎えに行けるように、これからは勉学も王子との関係も頑張ろう。
今までは出世にそれ程興味は無く、あくまでも両親から言われるためにルイスは勉学などを頑張っていた。
しかし、いつかネリネに求婚する時にそれなりの地位にいる方が有利だと考えるようになったルイスは、そこから日々努力するようになる。
この日の王立学園の授業は午前中で終わり、午後から自宅で家庭教師から授業を受ける予定であったのだ。
しかし、家に帰りたくなかったルイスは王宮の庭園をぶらぶらとしながら時間を潰している。
両親からは「勉強しろ、ジュード王子と仲良くしろ」と言われるが、どれも意味を見出だせない。
サボっても家に帰った時に、ジュード王子に誘われて図書館に行っていたとでも言えば叱られないだろう。
なんせ両親はジュード王子のためなら何でもしろと言うからな。
勉学も交友関係も決められたレールを走るように両親から強要される生活に、ルイスは飽き飽きとしていた。
そんな中、小さな女の子と女性が花を見ながら会話しているのが視界に入る。
「ねえ、このあかいおはなはなあに?」
「えっとですね……。うーん……」
ネリネに花の名前を尋ねられた乳母であったが、名前が分からずに返答に悩んでいた。
その様子を見てルイスは横から声を掛ける。
「この花はね、ラナンキュラスって言うんだよ」
声を掛けられた2人は揃ってルイスの方を向いた。
そして、ネリネは花の名前が分かった嬉しさから満面の笑みを浮かべてお礼を述べる。
「わー、ありがとう!おにいちゃん、ものしりですごいね!」
その顔を見てルイスの心に温かな気持ちが流れ込む。
問題に答えてお礼を言われたのは初めてかもしれない。
今まで正解するのが当たり前の殺伐とした世界で生きてきたルイスには、ネリネの笑顔が衝撃的であった。
ルイスが固まっていると遠くから男性が近付いてくる。
「おーい、ネリネ。お待たせ。一緒に帰ろう」
それはネリネを迎えに来たネリネの父であった。
その姿を見てネリネはルイスにお礼を述べてから立ち去る。
「おにいちゃん、ありがとう!バイバイ!……ちちうえー!おかえりなさい」
乳母もルイスに会釈をしてからネリネの後を追う。
父の元に向かうネリネに手を振ってからルイスもその場を離れた。
庭園の奥に向かって歩きながら、ルイスは考え事をする。
今まで勉強は両親の道具となるためだけにさせられていると思っていたが、こんな風に役立つ日が来るとは。
初めて勉強していてよかったと思った。
あの子の名前は「ネリネ」と言うのか。
もう忘れないぞ。
勉強の意味が分からずにやさぐれていたルイスは、その日からネリネに執着するようになる。
そして、ネリネのことを調べたルイスは、いつの日かネリネと婚約することを夢見るようになった。
まだ彼女は幼いから今は求婚出来ない。
でも、いつの日か成長した彼女を迎えに行けるように、これからは勉学も王子との関係も頑張ろう。
今までは出世にそれ程興味は無く、あくまでも両親から言われるためにルイスは勉学などを頑張っていた。
しかし、いつかネリネに求婚する時にそれなりの地位にいる方が有利だと考えるようになったルイスは、そこから日々努力するようになる。
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