夕闇のネリネ

三条 よもぎ

文字の大きさ
上 下
27 / 33
第2章 夜明けの光

第27話 吐露

しおりを挟む
入浴を終えたネリネはルイスの部屋の扉の前に立っていた。
目を瞑って深く息を吐いてから、ネリネは扉を叩く。

「どうぞ、入って」

中からルイスの声が聞こえたため、ネリネは扉を開く。
中に入るとソファでルイスが本を読んでいた。
ルイスはネリネの姿を見て本を閉じると、ネリネに座るように勧める。

「よかったらここに座って」

そう言われたネリネはルイスの向かい側に座った。
そして、ネリネは俯きながら小さな声でルイスに用件を伝える。

「……やりたいことが見つかりました」

その言葉を聞いてルイスの表情が明るくなる。

「それはよかった。私に出来ることがあれば何でも協力しよう。それでやりたいことは一体、どんなことなんだい?」

今まで無気力だったネリネに活力が湧いたと思っているルイスは興味津々な顔で問い掛ける。
一方のネリネは暗い表情のままである。
覚悟を決めたネリネはゆっくりと顔を上げると、ルイスに希望を伝えた。

「それは……。あの……、私を死刑にして下さい」

そう言い終わるとネリネは再び下を向く。
思ってもいなかった言葉に驚いたルイスは動揺を隠せない。

「えっ……。一体……、なぜなんだ?」

その戸惑いの声を聞いたネリネは、心の中でずっと消えなかった思いを俯きながら口にする。

「やはり私の手は汚れているのです……。橋向こうで他の犠牲を出す前に殺したとは言え、殺人に変わりはありません……」

その説明を聞いても一体何のことか分からないルイスはまだ疑問に思う顔をしている。
一方、ネリネはルイスのためではなく、心の苦しさを吐き出したくて話しているため、ルイスの反応は気にせずに話を続ける。

「それに暗殺集団に属していた頃は無実の者達も手に掛けました……。どれも望んで行ったことではありませんが、重罪人であることは事実です……。だから、私を死刑にして下さい」

屋敷で暮らすようになって少しずつネリネは人の心を取り戻してきていた。
その結果、孤児院で純粋な子ども達を見ていると、良心の呵責に耐えられなくなったのだ。
後半の話はルイスにも理解出来た。
そして、ネリネがそう思うようになった原因は自分にあると思っているルイスは、ネリネにそれを伝える。

「それなら君の心を殺した私も同罪だ」

その言葉を聞いたネリネはその言葉の真意が理解出来ずに驚いた顔をしながら、顔を上げる。

どうしてこの人が私の過去と関係あるのかしら。

そう疑問に思いながら顔を上げたネリネは、ルイスと目が合った。
そして、ルイスはネリネを見つめながら事情を説明し始めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生した女性騎士は隣国の王太子に愛される!?

恋愛
仕事帰りの夜道で交通事故で死亡。転生先で家族に愛されながらも武術を極めながら育って行った。ある日突然の出会いから隣国の王太子に見染められ、溺愛されることに……

【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?

雨宮羽那
恋愛
 元社畜聖女×笑顔の腹黒宰相のラブストーリー。 ◇◇◇◇  名も無きお飾り聖女だった私は、過労で倒れたその日、思い出した。  自分が前世、疲れきった新卒社会人・花菱桔梗(はなびし ききょう)という日本人女性だったことに。    運良く婚約者の王子から婚約破棄を告げられたので、前世の教訓を活かし私は逃げることに決めました!  なのに、宰相閣下から求婚されて!? 何故か甘やかされているんですけど、何か裏があったりしますか!? ◇◇◇◇ お気に入り登録、エールありがとうございます♡ ※ざまぁはゆっくりじわじわと進行します。 ※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております(アルファポリス先行)。 ※この作品はフィクションです。特定の政治思想を肯定または否定するものではありません(_ _*))

『捨てられダイヤは輝かない』貧相を理由に婚約破棄されたので、綺麗な靴もドレスも捨てて神都で自由に暮らします

三崎こはく
恋愛
 婚約者クロシュラに突如として婚約破棄を告げられたダイナ。悲しみに暮れるダイナは手持ちの靴とドレスを全て焼き払い、単身国家の中心地である神都を目指す。どうにか手にしたカフェ店員としての職、小さな住まい。慎ましやかな生活を送るダイナの元に、ある日一風変わった客人が現れる。  紫紺の髪の、無表情で偉そうな客。それがその客人の第一印象。  さくっと読める異世界ラブストーリー☆★ ※ネタバレありの感想を一部そのまま公開してしまったため、本文未読の方は閲覧ご注意ください ※2022.5.7完結♪同日HOT女性向け1位、恋愛2位ありがとうございます♪ ※表紙画像は岡保佐優様に描いていただきました♪

あたし、今日からご主人さまの人質メイドです!

むらさ樹
恋愛
お父さんの借金のせいで、あたしは人質として連れて行かれちゃった!? だけど住み込みでメイドとして働く事になった先は、クラスメイトの気になる男の子の大豪邸 「お前はオレのペットなんだ。 オレの事はご主人様と呼べよな」 ペット!? そんなの聞いてないよぉ!! 「いいか? 学校じゃご主人様なんて呼ぶなよ。 お前がオレのペットなのは、ふたりだけの秘密なんだからな」 誰も知らない、あたしと理央クンだけのヒミツの関係……! 「こっち、来いよ。 ご主人様の命令は、絶対だろ?」 学校では、クールで一匹狼な理央クン でもここでは、全然雰囲気が違うの 「抱かせろよ。 お前はオレのペットなんだから、拒む権利ないんだからな」 初めて見る理央クンに、どんどん惹かれていく ペットでも、構わない 理央クン、すき_____

公爵子息に気に入られて貴族令嬢になったけど姑の嫌がらせで婚約破棄されました。傷心の私を癒してくれるのは幼馴染だけです

エルトリア
恋愛
「アルフレッド・リヒテンブルグと、リーリエ・バンクシーとの婚約は、只今をもって破棄致します」 塗装看板屋バンクシー・ペイントサービスを営むリーリエは、人命救助をきっかけに出会った公爵子息アルフレッドから求婚される。 平民と貴族という身分差に戸惑いながらも、アルフレッドに惹かれていくリーリエ。 だが、それを快く思わない公爵夫人は、リーリエに対して冷酷な態度を取る。さらには、許嫁を名乗る娘が現れて――。 お披露目を兼ねた舞踏会で、婚約破棄を言い渡されたリーリエが、失意から再び立ち上がる物語。 著者:藤本透 原案:エルトリア

「侯爵家の落ちこぼれ」の私に選択肢などないと思うのですが ー旦那様、私は人質のはずですー

月橋りら
恋愛
侯爵令嬢として生を受けたにも関わらず、由緒ある家柄にそぐわず「無属性」で生まれてきた「私」、アナスタシア。一方、妹は美しく、属性も「風lを持って生まれた。 「落ちこぼれ」と虐げられてきたアナスタシアは、唯一出してもらえた社交パーティーで婚約破棄を告げられる。 そしてさらに、隣国に「人質」に出されることに決まってしまいーー。 *この小説は、カクヨム様でも連載する予定です。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

クラヴィスの華〜BADエンドが確定している乙女ゲー世界のモブに転生した私が攻略対象から溺愛されているワケ〜

アルト
恋愛
たった一つのトゥルーエンドを除き、どの攻略ルートであってもBADエンドが確定している乙女ゲーム「クラヴィスの華」。 そのゲームの本編にて、攻略対象である王子殿下の婚約者であった公爵令嬢に主人公は転生をしてしまう。 とは言っても、王子殿下の婚約者とはいえ、「クラヴィスの華」では冒頭付近に婚約を破棄され、グラフィックは勿論、声すら割り当てられておらず、名前だけ登場するというモブの中のモブとも言えるご令嬢。 主人公は、己の不幸フラグを叩き折りつつ、BADエンドしかない未来を変えるべく頑張っていたのだが、何故か次第に雲行きが怪しくなって行き────? 「────婚約破棄? 何故俺がお前との婚約を破棄しなきゃいけないんだ? ああ、そうだ。この肩書きも煩わしいな。いっそもう式をあげてしまおうか。ああ、心配はいらない。必要な事は俺が全て────」 「…………(わ、私はどこで間違っちゃったんだろうか)」 これは、どうにかして己の悲惨な末路を変えたい主人公による生存戦略転生記である。

処理中です...