10 / 33
第1章 悲しみの果て
第10話 命令
しおりを挟む
翌日、王宮で案内された部屋に入ると、ネリネと同じく成績上位者の生徒達が待っていた。
しばらくして10名全員が揃った頃、玄人の風格が漂う中年男性が現れる。
「全員揃っているようだな。貴様らにはこれから特別任務に当たって貰う」
そう話すのはネリネ達の後の上司となる暗殺集団のリーダー、グレンである。
しかし、この時は身分を明かしていないため、突然見知らぬ人に特別任務を言われて生徒達は混乱していた。
隣り合う者と目を合わせて困惑する彼らに対してグレンは続きを説明する。
「貴様らは我ら暗殺集団の一員になることが決定した。ジュード王直々の命令だ。心してかかれ」
その言葉を聞いても、未だに状況を理解出来ない生徒達は口々に疑問を言葉にする。
「えっ、もうすぐ家族に会えるんじゃないの?」
「今日は留学の話なんじゃ……」
「暗殺集団って何のこと?」
その疑問についてグレンは冷徹な声で対応する。
「世間には成績上位者が留学に出発したと発表される。しかし、貴様らは留学する船が沈没して死亡したことになる。よって、今後は外との交流を禁じ、偽名で活動して貰う」
ようやく皆が状況を理解出来たようで、生徒達の表情は絶望へと変化した。
中には泣き出す者もいる。
もう家族に会えないなんて……。
家族に会う日を楽しみに1年間頑張ってきたネリネは、その事実を理解してショックで青白い顔をしていた。
そして、ある男子生徒は納得出来ずに声を荒らげる。
「何でそんなことを勝手に決められなきゃいけないんだ!いくら王と言えど無茶苦茶だ!俺は帰る!」
そう言って男子生徒は扉に向かって歩き、入り口の扉を開けようと取っ手を引っ張ったがびくともしなかった。
その様子を目で追っていたグレンが口を開く。
「と言うことは貴様は命令に背くということだな?」
「当たり前だ!こんな命令が認められる訳ない!」
その言葉を聞いたグレンは一度目を瞑り、ため息を溢す。
そして、再び目を開けた時、グレンの瞳から光が消えていた。
「では、反逆者は処分する」
そう冷酷な声が聞こえたと同時に男子生徒の喉元から血が流れる。
何処からか刃物を取り出したグレンが素早い動きで男子生徒の命を奪ったのだ。
一瞬の出来事であったが、やがて状況を理解した生徒達から悲鳴が上がる。
「いやーっ!」
「きゃー、助けてーっ!」
目の前で人が殺されるのを初めて見たネリネはショックで意識を失った。
本来ならば将来の重鎮となるべき優秀者がこのような末路を辿ることになったのは、王の疑心暗鬼が原因であった。
しばらくして10名全員が揃った頃、玄人の風格が漂う中年男性が現れる。
「全員揃っているようだな。貴様らにはこれから特別任務に当たって貰う」
そう話すのはネリネ達の後の上司となる暗殺集団のリーダー、グレンである。
しかし、この時は身分を明かしていないため、突然見知らぬ人に特別任務を言われて生徒達は混乱していた。
隣り合う者と目を合わせて困惑する彼らに対してグレンは続きを説明する。
「貴様らは我ら暗殺集団の一員になることが決定した。ジュード王直々の命令だ。心してかかれ」
その言葉を聞いても、未だに状況を理解出来ない生徒達は口々に疑問を言葉にする。
「えっ、もうすぐ家族に会えるんじゃないの?」
「今日は留学の話なんじゃ……」
「暗殺集団って何のこと?」
その疑問についてグレンは冷徹な声で対応する。
「世間には成績上位者が留学に出発したと発表される。しかし、貴様らは留学する船が沈没して死亡したことになる。よって、今後は外との交流を禁じ、偽名で活動して貰う」
ようやく皆が状況を理解出来たようで、生徒達の表情は絶望へと変化した。
中には泣き出す者もいる。
もう家族に会えないなんて……。
家族に会う日を楽しみに1年間頑張ってきたネリネは、その事実を理解してショックで青白い顔をしていた。
そして、ある男子生徒は納得出来ずに声を荒らげる。
「何でそんなことを勝手に決められなきゃいけないんだ!いくら王と言えど無茶苦茶だ!俺は帰る!」
そう言って男子生徒は扉に向かって歩き、入り口の扉を開けようと取っ手を引っ張ったがびくともしなかった。
その様子を目で追っていたグレンが口を開く。
「と言うことは貴様は命令に背くということだな?」
「当たり前だ!こんな命令が認められる訳ない!」
その言葉を聞いたグレンは一度目を瞑り、ため息を溢す。
そして、再び目を開けた時、グレンの瞳から光が消えていた。
「では、反逆者は処分する」
そう冷酷な声が聞こえたと同時に男子生徒の喉元から血が流れる。
何処からか刃物を取り出したグレンが素早い動きで男子生徒の命を奪ったのだ。
一瞬の出来事であったが、やがて状況を理解した生徒達から悲鳴が上がる。
「いやーっ!」
「きゃー、助けてーっ!」
目の前で人が殺されるのを初めて見たネリネはショックで意識を失った。
本来ならば将来の重鎮となるべき優秀者がこのような末路を辿ることになったのは、王の疑心暗鬼が原因であった。
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
いつかの空を見る日まで
たつみ
恋愛
皇命により皇太子の婚約者となったカサンドラ。皇太子は彼女に無関心だったが、彼女も皇太子には無関心。婚姻する気なんてさらさらなく、逃げることだけ考えている。忠実な従僕と逃げる準備を進めていたのだが、不用意にも、皇太子の彼女に対する好感度を上げてしまい、執着されるはめに。複雑な事情がある彼女に、逃亡中止は有り得ない。生きるも死ぬもどうでもいいが、皇宮にだけはいたくないと、従僕と2人、ついに逃亡を決行するのだが。
------------
復讐、逆転ものではありませんので、それをご期待のかたはご注意ください。
悲しい内容が苦手というかたは、特にご注意ください。
中世・近世の欧風な雰囲気ですが、それっぽいだけです。
どんな展開でも、どんと来いなかた向けかもしれません。
(うわあ…ぇう~…がはっ…ぇえぇ~…となるところもあります)
他サイトでも掲載しています。
死ぬはずだった令嬢が乙女ゲームの舞台に突然参加するお話
みっしー
恋愛
病弱な公爵令嬢のフィリアはある日今までにないほどの高熱にうなされて自分の前世を思い出す。そして今自分がいるのは大好きだった乙女ゲームの世界だと気づく。しかし…「藍色の髪、空色の瞳、真っ白な肌……まさかっ……!」なんと彼女が転生したのはヒロインでも悪役令嬢でもない、ゲーム開始前に死んでしまう攻略対象の王子の婚約者だったのだ。でも前世で長生きできなかった分今世では長生きしたい!そんな彼女が長生きを目指して乙女ゲームの舞台に突然参加するお話です。
*番外編も含め完結いたしました!感想はいつでもありがたく読ませていただきますのでお気軽に!
冤罪から逃れるために全てを捨てた。
四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)
人質王女の恋
小ろく
恋愛
先の戦争で傷を負った王女ミシェルは顔に大きな痣が残ってしまい、ベールで隠し人目から隠れて過ごしていた。
数年後、隣国の裏切りで亡国の危機が訪れる。
それを救ったのは、今まで国交のなかった強大国ヒューブレイン。
両国の国交正常化まで、ミシェルを人質としてヒューブレインで預かることになる。
聡明で清楚なミシェルに、国王アスランは惹かれていく。ミシェルも誠実で美しいアスランに惹かれていくが、顔の痣がアスランへの想いを止める。
傷を持つ王女と一途な国王の恋の話。
【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた
もふきゅな
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる