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第1章 悲しみの果て
第3話 旅立ち
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ネリネの父が手紙の返事を出してから2ヵ月後、再び王家から手紙が届く。
その内容を知らせるために父はネリネを書斎に招いた。
「父上、お呼びでしょうか?」
「ああ、実は王家から手紙が届いてな」
父から手紙を渡されたネリネは近くの椅子に腰掛けて読み進める。
そこには学園寮の準備が整ったため、1週間後に迎えを寄越すことが書かれていた。
どうやら集められた子息達は特別な学園で生活し、留学に向けての勉強を行うらしい。
「いよいよ動き出すのですね」
「ああ、こんな役目を背負わせることになってすまない」
ネリネに対して負い目を感じている父は申し訳なさそうに話す。
権力に逆らえない自分の無力さを心の中で嘆いていた。
そんな父の心中を察しているネリネは首を横に振り、父に気を落とさないように伝える。
「私のことなら心配無用ですわ。勉学に励んで留学生に選ばれるように頑張るだけです。今の学園生活とこなすことは変わりませんので大丈夫ですわ。それにこれしか選択肢はないのですから、父上はお気になさらないでください」
不安な気持ちが無いと言えば嘘になるが、それでも自分の与えられた役割を果たそうとネリネは気丈に振る舞っていた。
「本当にネリネはよく出来た子だね。ただ無理はしないでおくれよ」
「はい、ありがとうございます。父上にそう言っていただけるだけで嬉しいです」
家族から愛されている気持ちが伝わり、それだけでネリネは頑張れる気がしていた。
友人達に別れの挨拶をしたり、荷物の準備をしているとあっという間に1週間が過ぎる。
「ネリネ・エイジャー嬢はいるか?王宮からの命だ。一緒に来て貰おう」
「はい、私でございます。本日はよろしくお願い致します」
1台の馬車と数人の従者が屋敷を訪れ、いよいよ家族との別れの時を迎える。
「ネリネ、任せたぞ」
「はい、兄上。勉学に励んで参ります」
王家にとって今回の件は人質同然であることをネリネの兄も分かっているが、王宮からの使者の手前、それはお互いに口には出さない。
「お姉ちゃん、頑張ってね」
「お姉ちゃん、すごいね。僕も勉強、頑張るよ」
まだ幼い妹と弟は姉が優秀だから選ばれたと勘違いしている。
「ふふっ、2人に褒められてお姉ちゃん、とっても嬉しいわ。お姉ちゃんも頑張るから2人とも父上と母上の言うことを聞いて良い子で過ごしてね」
そんなかわいい妹と弟の夢を壊さないようにネリネは笑顔で応えた。
「本当に1人で大丈夫?何かあったらすぐに手紙を頂戴ね」
「うん、大丈夫よ。もう私は今年で15歳になるんだから1人でも頑張れるわ」
一方、心配性の母はネリネを1人送り出すことに不安な気持ちでいっぱいであった。
そんな母を心配させないようにネリネは気丈に振る舞う。
父とは今まで十分に言葉を交わしたため、今日はお互いに目を合わせて頷くのみである。
それだけで父からの我が子を愛する気持ちがネリネに伝わってきた。
家族との別れを済ませ、ネリネが馬車に乗り込むと出発した。
1年に1度、帰省する期間が設けられているため、1年後にまた会えるとお互いに思っている。
しかし、ネリネが家族と顔を合わせるのはこれが最後となった。
その内容を知らせるために父はネリネを書斎に招いた。
「父上、お呼びでしょうか?」
「ああ、実は王家から手紙が届いてな」
父から手紙を渡されたネリネは近くの椅子に腰掛けて読み進める。
そこには学園寮の準備が整ったため、1週間後に迎えを寄越すことが書かれていた。
どうやら集められた子息達は特別な学園で生活し、留学に向けての勉強を行うらしい。
「いよいよ動き出すのですね」
「ああ、こんな役目を背負わせることになってすまない」
ネリネに対して負い目を感じている父は申し訳なさそうに話す。
権力に逆らえない自分の無力さを心の中で嘆いていた。
そんな父の心中を察しているネリネは首を横に振り、父に気を落とさないように伝える。
「私のことなら心配無用ですわ。勉学に励んで留学生に選ばれるように頑張るだけです。今の学園生活とこなすことは変わりませんので大丈夫ですわ。それにこれしか選択肢はないのですから、父上はお気になさらないでください」
不安な気持ちが無いと言えば嘘になるが、それでも自分の与えられた役割を果たそうとネリネは気丈に振る舞っていた。
「本当にネリネはよく出来た子だね。ただ無理はしないでおくれよ」
「はい、ありがとうございます。父上にそう言っていただけるだけで嬉しいです」
家族から愛されている気持ちが伝わり、それだけでネリネは頑張れる気がしていた。
友人達に別れの挨拶をしたり、荷物の準備をしているとあっという間に1週間が過ぎる。
「ネリネ・エイジャー嬢はいるか?王宮からの命だ。一緒に来て貰おう」
「はい、私でございます。本日はよろしくお願い致します」
1台の馬車と数人の従者が屋敷を訪れ、いよいよ家族との別れの時を迎える。
「ネリネ、任せたぞ」
「はい、兄上。勉学に励んで参ります」
王家にとって今回の件は人質同然であることをネリネの兄も分かっているが、王宮からの使者の手前、それはお互いに口には出さない。
「お姉ちゃん、頑張ってね」
「お姉ちゃん、すごいね。僕も勉強、頑張るよ」
まだ幼い妹と弟は姉が優秀だから選ばれたと勘違いしている。
「ふふっ、2人に褒められてお姉ちゃん、とっても嬉しいわ。お姉ちゃんも頑張るから2人とも父上と母上の言うことを聞いて良い子で過ごしてね」
そんなかわいい妹と弟の夢を壊さないようにネリネは笑顔で応えた。
「本当に1人で大丈夫?何かあったらすぐに手紙を頂戴ね」
「うん、大丈夫よ。もう私は今年で15歳になるんだから1人でも頑張れるわ」
一方、心配性の母はネリネを1人送り出すことに不安な気持ちでいっぱいであった。
そんな母を心配させないようにネリネは気丈に振る舞う。
父とは今まで十分に言葉を交わしたため、今日はお互いに目を合わせて頷くのみである。
それだけで父からの我が子を愛する気持ちがネリネに伝わってきた。
家族との別れを済ませ、ネリネが馬車に乗り込むと出発した。
1年に1度、帰省する期間が設けられているため、1年後にまた会えるとお互いに思っている。
しかし、ネリネが家族と顔を合わせるのはこれが最後となった。
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