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第2章 夜明けの光
第22話 親近感
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しばらくするとルイスを見送ったエステルが部屋に戻ってくる。
「ネリネ様、もしよろしければ屋敷の中を案内しますが、いかがしますか?」
「……では、お願いします。あと……、様なんてつけなくて大丈夫です……」
話し掛けられたネリネは小さな声で返事をする。
今の状況を作った原因にこの方は関係していないから、それを無視することは出来ないわね。
それに私はもう貴族じゃないから、そんな風に丁寧に接して貰う資格は無いわ。
ルイスに対しては無愛想な態度を取っていたが、エステルに対しては申し訳なさが勝った。
ネリネからの返答を聞いてエステルはすぐに対応する。
「分かりました。では、ネリネさん、案内しますのでこちらにどうぞ」
ネリネはエステルの後に従って、屋敷の中を案内して貰った。
「そして最後にこちらがネリネさんの自室になります。何か必要な物があったらいつでもお申し付けください」
「分かりました」
そう会話を交わしながらネリネが案内された部屋に入ると、一通りの家具が揃えられているのが目に入る。
寮の私室よりも広いし、私にとったら十分だわ。
ネリネが実家にいた頃に与えられていた部屋よりかは狭かったが、今のネリネにとってはこの部屋でも十分満足であった。
「では、夕食になりましたらお呼びします」
「分かりました。ありがとうございました」
エステルと別れ、ネリネは自室で1人で過ごす。
自由にしていいって言われたけど、何をしたらいいのか分からないわ。
エステルとしばらく過ごす間に普通に会話が出来る関係にはなったが、ずっと一緒に過ごしたいかと言われたらそうでは無い。
他にしたい事が思い付かなかったネリネは、結局ベッドに寝転んで天井を見上げるだけであった。
夕食と入浴を終えてネリネは再び自室に戻る。
「エステルさんと一緒にいると何だかラナさんを思い出すなあ。ラナさん、元気にしているかなあ」
そう独り言を呟きながら、ネリネは再びベッドに寝転ぶ。
手際よくネリネの世話をするエステルを見て、身元の分からぬ相手でも優しくしてくれたラナを思い出す。
その親近感とルイスが不在の解放感からか比較的エステルの前では気を張らずに過ごせていた。
夕食には帰って来るかと思っていたけど、ルイス様が来なくてよかったわ。
ここは別邸だから、このままルイス様が戻って来なかったらいいのに。
そうネリネは希望しながら眠りに就いたが、ネリネの目論見通りには事は進まない。
「ネリネさん、朝食の用意が出来ました」
「ありがとうございます。すぐに向かいます」
翌朝、エステルに呼ばれたネリネは、着替えを済ますと食堂に向かう。
「やあ、おはよう。昨日はよく眠れたかい?一緒に朝食を食べよう」
食堂に入るとそこにはルイスが座っていた。
どうやらネリネと共に朝食を取るために待っていたらしい。
しかも、昨日と比べて馴れ馴れしい態度である。
そんなルイスの姿を見たネリネは途端に顔を強張らせ、無言で席に着いた。
「エステルから聞いたよ。昨日は何もせずに過ごしたらしいね」
どうやらネリネが物音を立てずに自室に籠っていたのを心配したエステルが、ルイスに報告したようである。
その結果、ネリネと話をしようとルイスは屋敷を訪れたのであった。
「ネリネ様、もしよろしければ屋敷の中を案内しますが、いかがしますか?」
「……では、お願いします。あと……、様なんてつけなくて大丈夫です……」
話し掛けられたネリネは小さな声で返事をする。
今の状況を作った原因にこの方は関係していないから、それを無視することは出来ないわね。
それに私はもう貴族じゃないから、そんな風に丁寧に接して貰う資格は無いわ。
ルイスに対しては無愛想な態度を取っていたが、エステルに対しては申し訳なさが勝った。
ネリネからの返答を聞いてエステルはすぐに対応する。
「分かりました。では、ネリネさん、案内しますのでこちらにどうぞ」
ネリネはエステルの後に従って、屋敷の中を案内して貰った。
「そして最後にこちらがネリネさんの自室になります。何か必要な物があったらいつでもお申し付けください」
「分かりました」
そう会話を交わしながらネリネが案内された部屋に入ると、一通りの家具が揃えられているのが目に入る。
寮の私室よりも広いし、私にとったら十分だわ。
ネリネが実家にいた頃に与えられていた部屋よりかは狭かったが、今のネリネにとってはこの部屋でも十分満足であった。
「では、夕食になりましたらお呼びします」
「分かりました。ありがとうございました」
エステルと別れ、ネリネは自室で1人で過ごす。
自由にしていいって言われたけど、何をしたらいいのか分からないわ。
エステルとしばらく過ごす間に普通に会話が出来る関係にはなったが、ずっと一緒に過ごしたいかと言われたらそうでは無い。
他にしたい事が思い付かなかったネリネは、結局ベッドに寝転んで天井を見上げるだけであった。
夕食と入浴を終えてネリネは再び自室に戻る。
「エステルさんと一緒にいると何だかラナさんを思い出すなあ。ラナさん、元気にしているかなあ」
そう独り言を呟きながら、ネリネは再びベッドに寝転ぶ。
手際よくネリネの世話をするエステルを見て、身元の分からぬ相手でも優しくしてくれたラナを思い出す。
その親近感とルイスが不在の解放感からか比較的エステルの前では気を張らずに過ごせていた。
夕食には帰って来るかと思っていたけど、ルイス様が来なくてよかったわ。
ここは別邸だから、このままルイス様が戻って来なかったらいいのに。
そうネリネは希望しながら眠りに就いたが、ネリネの目論見通りには事は進まない。
「ネリネさん、朝食の用意が出来ました」
「ありがとうございます。すぐに向かいます」
翌朝、エステルに呼ばれたネリネは、着替えを済ますと食堂に向かう。
「やあ、おはよう。昨日はよく眠れたかい?一緒に朝食を食べよう」
食堂に入るとそこにはルイスが座っていた。
どうやらネリネと共に朝食を取るために待っていたらしい。
しかも、昨日と比べて馴れ馴れしい態度である。
そんなルイスの姿を見たネリネは途端に顔を強張らせ、無言で席に着いた。
「エステルから聞いたよ。昨日は何もせずに過ごしたらしいね」
どうやらネリネが物音を立てずに自室に籠っていたのを心配したエステルが、ルイスに報告したようである。
その結果、ネリネと話をしようとルイスは屋敷を訪れたのであった。
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