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第1章 悲しみの果て
第18話 捜索 - Side L -
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ネリネが捕縛された日の翌日、ルイスの元へ連絡があった。
「噂の赤い目の女を橋の向こうで捕縛しました」
それを聞いたルイスはすぐさま王都へ向かう。
どうか彼女であってくれ。
その思いはネリネの行方が分からなくなった1年前から変わっていなかった。
1年前、ジュード王の崩御を受けてルイスは宰相の座を降りることを決意した。
もともと私が宰相など恐れ多かったのだ。
それに暗殺集団の解散を命じたからこれで彼女は自由の身になる。
それならば私も今の仕事は辞めて領地に戻り、今後は迎え入れた彼女と一緒にのんびりと過ごそう。
しかし、次期王の基盤が安定するまでは宰相の座を退くことが出来ない。
新王の戴冠式など、ルイスの仕事は山積みであった。
やがて半年後、ようやく後任の宰相も決まり、領地への隠居が許される。
「陛下、私の役目は終わりました。今後は領地に戻ります」
「そうか、ここまで引き継いでくれて感謝している」
ジュード王の弟である新たな王に礼を述べられ、ルイスは深々と頭を下げる。
新たな王と後任の宰相へ挨拶を済ませたルイスはその足でグレンの元へ向かった。
「お久しぶりです、グレン殿」
「おお、これはオルコット宰相」
「いえいえ、今はただの伯爵です」
ルイスが挨拶するとグレンも頭を下げた。
今は近衛兵として王宮の警備に当たっているグレンとお互いに近況を報告する。
世間話を済ましたところで、ルイスは本題を切り出した。
「ところでかつて特別学園の生徒だったネリネ・エイジャー嬢は現在、どこで何をしていますか?」
その質問を受けてグレンは申し訳なさそうな顔をする。
「それが……、彼女は定職に就いていないので何処で何をしているか把握していないのです」
グレンは経緯と現状を説明した。
「……だから、彼女には2年分の給金を渡しました。どうやら寮の私室には定期的に戻ってきているようですが、行き先までは……」
ネリネの私室に張り込んで尾行すれば行き先が分かるだろう。
グレンならバレずに行えるが、今は警備の仕事があるため、毎日張り込むことは不可能であった。
ルイスの部下にはそのようなことが出来る者はいない。
「そうですか、それは仕方ありませんね……」
事情を聞いたルイスは落胆した顔をしていたが、内心では悪態をついていた。
くそっ、こんなことになるなら周りの目を気にせずに仕事なんかさっさと辞めておけばよかった。
てっきり彼女は生家へと帰ると思っていたが、見通しが甘かったか。
そんな様子を見て、グレンは少しでも協力しようとある噂を伝えた。
「彼女と繋がるかは分かりませんが、最近ある噂を耳にしました。どうやら赤い目の女と目が合うと死ぬという噂話が橋向こうで流れているようです」
それを聞いてルイスは少し希望を持つ。
確かにあの貧困区域なら身分を問われずに住める。
赤い目というのも彼女の外見と一致するな。
「情報をありがとうございます。一先ずそこを重点的に探してみます」
グレンに一礼して立ち去ると、早速ルイスは部下に橋向こうを捜索するように命令した。
「噂の赤い目の女を橋の向こうで捕縛しました」
それを聞いたルイスはすぐさま王都へ向かう。
どうか彼女であってくれ。
その思いはネリネの行方が分からなくなった1年前から変わっていなかった。
1年前、ジュード王の崩御を受けてルイスは宰相の座を降りることを決意した。
もともと私が宰相など恐れ多かったのだ。
それに暗殺集団の解散を命じたからこれで彼女は自由の身になる。
それならば私も今の仕事は辞めて領地に戻り、今後は迎え入れた彼女と一緒にのんびりと過ごそう。
しかし、次期王の基盤が安定するまでは宰相の座を退くことが出来ない。
新王の戴冠式など、ルイスの仕事は山積みであった。
やがて半年後、ようやく後任の宰相も決まり、領地への隠居が許される。
「陛下、私の役目は終わりました。今後は領地に戻ります」
「そうか、ここまで引き継いでくれて感謝している」
ジュード王の弟である新たな王に礼を述べられ、ルイスは深々と頭を下げる。
新たな王と後任の宰相へ挨拶を済ませたルイスはその足でグレンの元へ向かった。
「お久しぶりです、グレン殿」
「おお、これはオルコット宰相」
「いえいえ、今はただの伯爵です」
ルイスが挨拶するとグレンも頭を下げた。
今は近衛兵として王宮の警備に当たっているグレンとお互いに近況を報告する。
世間話を済ましたところで、ルイスは本題を切り出した。
「ところでかつて特別学園の生徒だったネリネ・エイジャー嬢は現在、どこで何をしていますか?」
その質問を受けてグレンは申し訳なさそうな顔をする。
「それが……、彼女は定職に就いていないので何処で何をしているか把握していないのです」
グレンは経緯と現状を説明した。
「……だから、彼女には2年分の給金を渡しました。どうやら寮の私室には定期的に戻ってきているようですが、行き先までは……」
ネリネの私室に張り込んで尾行すれば行き先が分かるだろう。
グレンならバレずに行えるが、今は警備の仕事があるため、毎日張り込むことは不可能であった。
ルイスの部下にはそのようなことが出来る者はいない。
「そうですか、それは仕方ありませんね……」
事情を聞いたルイスは落胆した顔をしていたが、内心では悪態をついていた。
くそっ、こんなことになるなら周りの目を気にせずに仕事なんかさっさと辞めておけばよかった。
てっきり彼女は生家へと帰ると思っていたが、見通しが甘かったか。
そんな様子を見て、グレンは少しでも協力しようとある噂を伝えた。
「彼女と繋がるかは分かりませんが、最近ある噂を耳にしました。どうやら赤い目の女と目が合うと死ぬという噂話が橋向こうで流れているようです」
それを聞いてルイスは少し希望を持つ。
確かにあの貧困区域なら身分を問われずに住める。
赤い目というのも彼女の外見と一致するな。
「情報をありがとうございます。一先ずそこを重点的に探してみます」
グレンに一礼して立ち去ると、早速ルイスは部下に橋向こうを捜索するように命令した。
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