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第1章 悲しみの果て
第8話 謁見
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家族に別れを告げたネリネが乗った馬車は王宮へと到着した。
案内された部屋には同様に貴族の子息達が集められている。
しばらく待っていると王家の関係者と思われる男性が入ってきた。
「留学生候補の皆さん、王宮へようこそ。私はこれから皆さんを案内するルイス・オルコットです」
そう挨拶をするルイスの名前にネリネは聞き覚えがあった。
あっ、この方が史上最年少で宰相になられたオルコット伯爵なのね。
異例の出世の速さはジュード王の右腕なだけあるわ。
そもそも17歳で即位したジュード王も異例であったが、今年19歳となるルイスが宰相の地位に就いたことも大きな話題となっていた。
そんな噂の宰相の姿を見ているとネリネはルイスと目が合った気がする。
あれっ、今、私を見て笑ったような気が……。
目が合った瞬間にルイスに微笑みかけられたような気がしたネリネは、気のせいかもしれないが失礼の無いように微笑み返した。
その後、満足そうな顔をしてから視線を前方へと戻したルイスは、何とも無かったかのように話を続ける。
「これから皆さんにはジュード王へ挨拶して貰います。この留学生事業は国王自らが発案した有難い事業です。その候補生に選ばれたことを感謝し、誇りを持ってこれから勉学に励んで下さい。では、こちらへどうぞ」
王に謁見することを知らされた子息達は途端に背筋が伸びた。
暴虐王の噂は皆、知っており、自分が粗相をすることで家が取り潰しにならないように一層気を引き締める。
勿論ネリネもその内の1人であった。
失礼が無いように完璧に振る舞わなければ……。
子息達は緊張した面持ちで部屋を移動した。
代表者が王へ感謝の気持ちを述べるのを皆は姿勢正しく見つめるだけで終わり、王への謁見はつつがなく終わった。
再び待機部屋に戻ってきた子息達は息を吐き出し、気を緩める。
はあ、何事も無く終わってよかったわ。
それにしても王のあの瞳に見つめられるだけで息が詰まる気がしたわ。
ジュード王の黄金の瞳から放たれる鋭い視線を思い出すだけで、ネリネは体が縮こまる感じがした。
ほっとしたのも束の間、子息達には次の予定が告げられる。
「これで皆さんの王宮での儀式は終了です。次は皆さんが生活する学園を案内します。私はここで失礼します。何れ留学して学んだ皆さんがこれから国を支える一員となることを願っています」
そう言ってルイスは話を締めると頭を下げて退室した。
皆も倣って頭を下げる。
その後は複数人に別れて馬車に乗り、学園へと移動すると様々な説明を受けた。
その日は初めてのことばかりで疲れ果てたネリネは、その夜に寮の自室に戻るとすぐにベッドに寝転ぶ。
これからここで生活するのね。
1人で不安だけど、家族のために頑張らないと。
ベッドに横になると瞼が重くなったネリネはいつの間にか眠りに就いていた。
その後、毎日の学園生活をこなすのに精一杯で、王や宰相のことはすぐにネリネの頭から抜けていった。
案内された部屋には同様に貴族の子息達が集められている。
しばらく待っていると王家の関係者と思われる男性が入ってきた。
「留学生候補の皆さん、王宮へようこそ。私はこれから皆さんを案内するルイス・オルコットです」
そう挨拶をするルイスの名前にネリネは聞き覚えがあった。
あっ、この方が史上最年少で宰相になられたオルコット伯爵なのね。
異例の出世の速さはジュード王の右腕なだけあるわ。
そもそも17歳で即位したジュード王も異例であったが、今年19歳となるルイスが宰相の地位に就いたことも大きな話題となっていた。
そんな噂の宰相の姿を見ているとネリネはルイスと目が合った気がする。
あれっ、今、私を見て笑ったような気が……。
目が合った瞬間にルイスに微笑みかけられたような気がしたネリネは、気のせいかもしれないが失礼の無いように微笑み返した。
その後、満足そうな顔をしてから視線を前方へと戻したルイスは、何とも無かったかのように話を続ける。
「これから皆さんにはジュード王へ挨拶して貰います。この留学生事業は国王自らが発案した有難い事業です。その候補生に選ばれたことを感謝し、誇りを持ってこれから勉学に励んで下さい。では、こちらへどうぞ」
王に謁見することを知らされた子息達は途端に背筋が伸びた。
暴虐王の噂は皆、知っており、自分が粗相をすることで家が取り潰しにならないように一層気を引き締める。
勿論ネリネもその内の1人であった。
失礼が無いように完璧に振る舞わなければ……。
子息達は緊張した面持ちで部屋を移動した。
代表者が王へ感謝の気持ちを述べるのを皆は姿勢正しく見つめるだけで終わり、王への謁見はつつがなく終わった。
再び待機部屋に戻ってきた子息達は息を吐き出し、気を緩める。
はあ、何事も無く終わってよかったわ。
それにしても王のあの瞳に見つめられるだけで息が詰まる気がしたわ。
ジュード王の黄金の瞳から放たれる鋭い視線を思い出すだけで、ネリネは体が縮こまる感じがした。
ほっとしたのも束の間、子息達には次の予定が告げられる。
「これで皆さんの王宮での儀式は終了です。次は皆さんが生活する学園を案内します。私はここで失礼します。何れ留学して学んだ皆さんがこれから国を支える一員となることを願っています」
そう言ってルイスは話を締めると頭を下げて退室した。
皆も倣って頭を下げる。
その後は複数人に別れて馬車に乗り、学園へと移動すると様々な説明を受けた。
その日は初めてのことばかりで疲れ果てたネリネは、その夜に寮の自室に戻るとすぐにベッドに寝転ぶ。
これからここで生活するのね。
1人で不安だけど、家族のために頑張らないと。
ベッドに横になると瞼が重くなったネリネはいつの間にか眠りに就いていた。
その後、毎日の学園生活をこなすのに精一杯で、王や宰相のことはすぐにネリネの頭から抜けていった。
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