夕闇のネリネ

三条 よもぎ

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第1章 悲しみの果て

第4話 贈り物 - Side L -

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一方、ルイスにとっての悪夢の始まりはネリネに手紙が届く約9年前、世界暦503年の1月のことである。
それは国王にとっての悪夢の始まりと同じであった。


その頃は国王のジュードはまだ第4王子であり、父であるアルジャノンが国王の地位に就いていた。

「新年のお祝い、申し上げます」

毎年、新年の始まりには貴族達が王族へ挨拶に参上し、お祝いの品が王宮に数多く送られてくる。
新年の儀式を終えて自室に戻ると、第4王子であるジュードの部屋にも数多くの品が運び込まれていた。

「さて、どれどれ……。今年は何が貰えたかな」

9歳の少年であるジュードは目を輝かせながら1つ1つ包みを開けていく。
美しい宝剣を見つけると軽く振り回してみたり、ジュードにとっては宝探しの感覚であった。

「おお、これは……」

ジュードが手に取ったのは黄金に輝く腕輪であった。
宝石が散りばめられており、角度を変えると煌めきを放っている。
心躍らせながらその腕輪をジュードが右手に嵌めた瞬間、腕輪が目映い光を放ち始めた。

「うわー!……くっ、熱い!」
「はっ、ジュード様!」

右手首を押さえながら崩れていくジュードの元へ部屋に控えていた侍従達が駆け寄る。
しかし、その時には既に腕輪は右手首に吸い付いて消え、謎の紋様が右手首に残るのみとなっていた。

「早く医者を!」

焼けつくような熱さで右手首の痛みに苦しむジュードを見て、直ぐ様医者が呼ばれる。
医者の手当てによって痛みは引いたが、謎の紋様が消えることは無かった。


それからすぐに調査が行われたが、紋様の意味も送り主もすぐには判明せず、調査は難航していた。
そして1週間後、ジュードの元へ高官達と共にある占星術師が訪れる。

「失礼します。この者が異国でこの紋様を見たことがあるそうです。話をしてもよろしいですか?」
「それは本当か!?早く聞かせてくれ!」

全く手掛かりが無かったため、些細な情報でもジュードは興味を示した。

「私は神殿で占星術師をしておりますが、以前海を隔てた隣国で修行をしていた頃にその紋様を本で見たことがあります」

そう言って1人の男性が語り始めた内容にジュードは耳を傾ける。
どうやら腕輪は異国の呪術が使われた呪いの品らしく、それをつけた者の寿命が半分になることが判明した。

「寿命が半分!?それはどうやったら解けるのだ!?」
「申し訳ありません。私には解く術が分からぬため、異国の呪術師に聞くしかありません。我が国の占星術で出来ることは寿命を読み解くことのみです」

その事実を知ったジュードの心の中は怒りと悲しみが渦巻いたが、目の前の占星術師に非がある訳では無いため、責めることは出来なかった。

「そうか……。とりあえず寿命だけでも知りたい。読み解いてくれるか?」
「分かりました。お力になれず、申し訳ありません」

寿命を読み解くには2週間、星の動きを見る必要があるため、判明次第再び報告に来ることに決まった。
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