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番外編
もどかしい親心(Side ベイ・アンバー男爵)
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プラムを屋敷に呼び戻してから5年が経過した。
慣れない令嬢教育にもプラムは真面目に取り組み、15歳になったプラムは王立学園へ入学した。
さすが勤勉なローレルの娘だ。
父親であるベイ・アンバー男爵はプラムを可愛がっていた。
そんな父の悩みはプラムに婚約者が居ないことである。
「プラムの結婚はどうするのがよいのだろうか?あまり貴族のしきたりに縛りたくないが、学園で笑われていないか心配だ」
男爵はプラムの母であるローレルに相談していた。
「あの子、周りには言っていませんが、どうやら心に秘めた相手がいるようなのです。だから、少しだけ待ってあげてくださいませんか?」
「それは誰だ?私の知っている人か?」
「ええ、相手は6年前にあの子を助けた騎士のようです。騎士の名前を書いた紙をずっと引き出しに入れているんです」
プラムの部屋を掃除している母には何でもお見通しであった。
その話を聞いた父は1度、プラムと話をしておこうと思い、実家に帰ってきた夏休みのある日、プラムを呼び出した。
学園のことなど他愛のない会話をした後に、本題を切り出した。
「ところで、今日、呼んだのは縁談のことなんだが、お前ももう16歳。そろそろ結婚相手を決めねばならぬ」
「お父様、出来るのであれば、生涯の伴侶は自分で納得のいく相手を探したいのです」
「それならば期限を設けよう。学園卒業時に交際相手がいなければ、縁談話を受けてもらう」
「分かりましたわ」
やはりローレルの言った通り、プラムに何か考えがあるようだと父は感じた。
しかし、行き遅れとプラムが笑われるのも辛いため、期限を設けることにした。
本当は婚約者を用意して何でもしてあげたい。
そう親心として思うが、プラムの人生に口出しは出来ないと分かっているため、もどかしく思いながら見守ることにしたのだ。
とは言え、やはり手助けしたくなった男爵は第3騎士団の団長のグレインの元を訪れていた。
プラム誘拐未遂事件で顔見知りとなり、度々屋敷の警護についてなど相談していたため、交友があった。
年上で経験豊富なグレインのことを頼りにしている。
「今日は何の相談ですかな?」
「実は娘のプラムが、第3騎士団に所属の騎士に恋をしているのです。先日、結婚について話をしたので、近々行動を起こすかもしれません。その折には協力していただけないでしょうか?」
「恋愛は本人同士のことだから、特に出来ることはない気がするがのう。まあ、何かあったら手は差し伸べるようにしよう」
「ありがとうございます。よろしくお願い致します」
翌年、プラム2年生の冬休み、実家に帰ってきたプラムは酷く落ち込んでいた。
本人が何も言わないため、心配した父は団長のグレインの元へ、再度相談に訪れていた。
「プラムの恋愛が上手くいってないように見えるのですが、何かご存知ないでしょうか?」
「ああ、どうもアンバー嬢が思いを伝えたようなのだが、アランが断ったみたいじゃのう」
「では、振られた娘の恋はもう終わりなのでしょうか?」
「いや、まだ望みはある。傍目に見るとアランもアンバー嬢に惹かれておるように見えるのじゃ。恐らくアランの生い立ちが一歩踏み出すのを阻害しておるから、この辺の話をアンバー嬢にしてみようかのう」
グレインも男爵と同じように、2人の関係がもどかしく思えていた。
こうして、男爵は屋敷に団長を招く約束を取り付けたのである。
その後、紆余曲折あって2人は付き合うようになり、プラムから両親宛に手紙が届いた。
その手紙を2人揃って読んだ男爵とローレルの顔には笑みが浮かんでいた。
「いや、心配しておったが、上手くいったようでよかった」
「旦那様がいろいろと動いてくださったのも大きかったでしょう。プラムのためにありがとうございました」
「プラムに知られたら恥ずかしいから、このことは内緒にしておいてくれ」
幸せそうなプラムを見て、父も母も幼い頃の幸せのクローバーを思い出していた。
慣れない令嬢教育にもプラムは真面目に取り組み、15歳になったプラムは王立学園へ入学した。
さすが勤勉なローレルの娘だ。
父親であるベイ・アンバー男爵はプラムを可愛がっていた。
そんな父の悩みはプラムに婚約者が居ないことである。
「プラムの結婚はどうするのがよいのだろうか?あまり貴族のしきたりに縛りたくないが、学園で笑われていないか心配だ」
男爵はプラムの母であるローレルに相談していた。
「あの子、周りには言っていませんが、どうやら心に秘めた相手がいるようなのです。だから、少しだけ待ってあげてくださいませんか?」
「それは誰だ?私の知っている人か?」
「ええ、相手は6年前にあの子を助けた騎士のようです。騎士の名前を書いた紙をずっと引き出しに入れているんです」
プラムの部屋を掃除している母には何でもお見通しであった。
その話を聞いた父は1度、プラムと話をしておこうと思い、実家に帰ってきた夏休みのある日、プラムを呼び出した。
学園のことなど他愛のない会話をした後に、本題を切り出した。
「ところで、今日、呼んだのは縁談のことなんだが、お前ももう16歳。そろそろ結婚相手を決めねばならぬ」
「お父様、出来るのであれば、生涯の伴侶は自分で納得のいく相手を探したいのです」
「それならば期限を設けよう。学園卒業時に交際相手がいなければ、縁談話を受けてもらう」
「分かりましたわ」
やはりローレルの言った通り、プラムに何か考えがあるようだと父は感じた。
しかし、行き遅れとプラムが笑われるのも辛いため、期限を設けることにした。
本当は婚約者を用意して何でもしてあげたい。
そう親心として思うが、プラムの人生に口出しは出来ないと分かっているため、もどかしく思いながら見守ることにしたのだ。
とは言え、やはり手助けしたくなった男爵は第3騎士団の団長のグレインの元を訪れていた。
プラム誘拐未遂事件で顔見知りとなり、度々屋敷の警護についてなど相談していたため、交友があった。
年上で経験豊富なグレインのことを頼りにしている。
「今日は何の相談ですかな?」
「実は娘のプラムが、第3騎士団に所属の騎士に恋をしているのです。先日、結婚について話をしたので、近々行動を起こすかもしれません。その折には協力していただけないでしょうか?」
「恋愛は本人同士のことだから、特に出来ることはない気がするがのう。まあ、何かあったら手は差し伸べるようにしよう」
「ありがとうございます。よろしくお願い致します」
翌年、プラム2年生の冬休み、実家に帰ってきたプラムは酷く落ち込んでいた。
本人が何も言わないため、心配した父は団長のグレインの元へ、再度相談に訪れていた。
「プラムの恋愛が上手くいってないように見えるのですが、何かご存知ないでしょうか?」
「ああ、どうもアンバー嬢が思いを伝えたようなのだが、アランが断ったみたいじゃのう」
「では、振られた娘の恋はもう終わりなのでしょうか?」
「いや、まだ望みはある。傍目に見るとアランもアンバー嬢に惹かれておるように見えるのじゃ。恐らくアランの生い立ちが一歩踏み出すのを阻害しておるから、この辺の話をアンバー嬢にしてみようかのう」
グレインも男爵と同じように、2人の関係がもどかしく思えていた。
こうして、男爵は屋敷に団長を招く約束を取り付けたのである。
その後、紆余曲折あって2人は付き合うようになり、プラムから両親宛に手紙が届いた。
その手紙を2人揃って読んだ男爵とローレルの顔には笑みが浮かんでいた。
「いや、心配しておったが、上手くいったようでよかった」
「旦那様がいろいろと動いてくださったのも大きかったでしょう。プラムのためにありがとうございました」
「プラムに知られたら恥ずかしいから、このことは内緒にしておいてくれ」
幸せそうなプラムを見て、父も母も幼い頃の幸せのクローバーを思い出していた。
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