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第6章 未知のルート
第20話 作戦会議
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「逃げるだけではいつまでも経盛様に追われるままだ。つまり、この状況から抜け出すには経盛様を倒す必要があると思う」
「そうは言ってもそんな簡単に勝てる相手では無いわ」
「だから、卑怯かもしれないが、不意を突くんだ。他の城を攻めている間に手薄になった紫雲城へ攻め込む。これでどうだ?」
「上手くいくかは分からないけど、何もしないで捕まるよりはましだわ。そうしましょう!」
経盛の戦の予定は、景臣の父に聞けば分かるため、景臣が情報収集することとなった。
だが、人形師の景臣が土壌兵を作れても、千代が精霊師の力を失ったため、土壌兵を動かすことが出来ない。
「その問題なんだが、俺は千代にはまだ精霊師の力はあると思うんだ。恐らく動揺して集中出来なくなり、魂を込められなくなっただけだと思う。だから、気持ちが落ち着いたら再挑戦してみてほしい」
「そうなのかな……。でも、私の力が無いと何も始められない……」
「焦らなくていいさ。その時は作戦変更すればいいだけだからさ」
まだ自分に自信が持てない千代は、景臣が土壌兵を作っている間、畑仕事をしたり、水汲みをしたり、とにかく体を動かした。
じっとしていると余計なことを考えてしまうし、精霊師には体力も必要なため、体を動かすのは訓練に最適であった。
本来のルートを外れた今、未来は分からず、自分の手で切り開いていくしかなかった。
景臣と2人で生活するようになって、千代は景臣の前向きな考えに救われていた。
あれこれと悪い方に考えてしまう千代に、いつも景臣は明るい言葉を掛けてくれる。
そのおかげか1週間が経過すると、千代はとりあえず何でもやってみようと思い、土壌兵と向き合う気持ちになれた。
千代は目を瞑り、土壌兵に手を翳すが、何も起こらない。
「やっぱり駄目か……」
「そんなことないさ。今日が駄目なら、また明日、やってみたら変わるかもしれない。1週間前は下手だった料理も毎日しているうちに、千代は上達しただろ?」
「いつも励ましてくれてありがとう。明日も頑張ってみる!」
落ち込む気持ちも景臣の言葉で軽くなる。
千代は景臣がいるから頑張ることが出来ていた。
1人だったらとっくに諦めて、大人しく経盛に捕まっていただろうと千代は感じていた。
1週間後、今日も目を瞑り、土壌兵に手を翳していると、手の先が温かくなる感覚があった。
今日は出来るかもしれない。
より一層、集中すると、パチンと音が鳴り、千代が目を開けると、土壌兵が青い光を放ちながら動いていた。
「景臣くん、見て!出来たよ!力は失ってなかったんだ」
「すごいじゃないか!頑張ったな!やっぱり千代は優秀だよ」
千代は嬉しさの余り、涙を溢しながら景臣に抱き付いた。
景臣は突然のことに驚きながらも、しっかりと抱き止め、千代の背中に手を回した。
しばらくして冷静になった千代は、勢いで抱き付いたことが恥ずかしくなり、顔を赤くしながら離れた。
「あっ、急にごめんねっ」
「いや、気にするな。それだけ千代が喜ぶのは当たり前のことだ。これで作戦が1歩進んだな」
その後は景臣が作った土壌兵に千代が魂を込め、着実に数を増やしていった。
その間に1度、経盛の戦があったが、まだ数が揃っていないため、見送った。
そして、3ヵ月後、完成した土壌兵が100体近くになったため、機会を伺っていると、次の戦の話が入ってきた。
「千代、ただいま。親父から聞いたが、経盛様は来月、西の国を攻めるそうだ。少し距離が離れているから、すぐには戻って来れまい」
「じゃあ、紫雲城に攻め入る良い機会だわ。いよいよ戦いの時が来たのね」
千代たちの反逆の時が近付いてきていた。
「そうは言ってもそんな簡単に勝てる相手では無いわ」
「だから、卑怯かもしれないが、不意を突くんだ。他の城を攻めている間に手薄になった紫雲城へ攻め込む。これでどうだ?」
「上手くいくかは分からないけど、何もしないで捕まるよりはましだわ。そうしましょう!」
経盛の戦の予定は、景臣の父に聞けば分かるため、景臣が情報収集することとなった。
だが、人形師の景臣が土壌兵を作れても、千代が精霊師の力を失ったため、土壌兵を動かすことが出来ない。
「その問題なんだが、俺は千代にはまだ精霊師の力はあると思うんだ。恐らく動揺して集中出来なくなり、魂を込められなくなっただけだと思う。だから、気持ちが落ち着いたら再挑戦してみてほしい」
「そうなのかな……。でも、私の力が無いと何も始められない……」
「焦らなくていいさ。その時は作戦変更すればいいだけだからさ」
まだ自分に自信が持てない千代は、景臣が土壌兵を作っている間、畑仕事をしたり、水汲みをしたり、とにかく体を動かした。
じっとしていると余計なことを考えてしまうし、精霊師には体力も必要なため、体を動かすのは訓練に最適であった。
本来のルートを外れた今、未来は分からず、自分の手で切り開いていくしかなかった。
景臣と2人で生活するようになって、千代は景臣の前向きな考えに救われていた。
あれこれと悪い方に考えてしまう千代に、いつも景臣は明るい言葉を掛けてくれる。
そのおかげか1週間が経過すると、千代はとりあえず何でもやってみようと思い、土壌兵と向き合う気持ちになれた。
千代は目を瞑り、土壌兵に手を翳すが、何も起こらない。
「やっぱり駄目か……」
「そんなことないさ。今日が駄目なら、また明日、やってみたら変わるかもしれない。1週間前は下手だった料理も毎日しているうちに、千代は上達しただろ?」
「いつも励ましてくれてありがとう。明日も頑張ってみる!」
落ち込む気持ちも景臣の言葉で軽くなる。
千代は景臣がいるから頑張ることが出来ていた。
1人だったらとっくに諦めて、大人しく経盛に捕まっていただろうと千代は感じていた。
1週間後、今日も目を瞑り、土壌兵に手を翳していると、手の先が温かくなる感覚があった。
今日は出来るかもしれない。
より一層、集中すると、パチンと音が鳴り、千代が目を開けると、土壌兵が青い光を放ちながら動いていた。
「景臣くん、見て!出来たよ!力は失ってなかったんだ」
「すごいじゃないか!頑張ったな!やっぱり千代は優秀だよ」
千代は嬉しさの余り、涙を溢しながら景臣に抱き付いた。
景臣は突然のことに驚きながらも、しっかりと抱き止め、千代の背中に手を回した。
しばらくして冷静になった千代は、勢いで抱き付いたことが恥ずかしくなり、顔を赤くしながら離れた。
「あっ、急にごめんねっ」
「いや、気にするな。それだけ千代が喜ぶのは当たり前のことだ。これで作戦が1歩進んだな」
その後は景臣が作った土壌兵に千代が魂を込め、着実に数を増やしていった。
その間に1度、経盛の戦があったが、まだ数が揃っていないため、見送った。
そして、3ヵ月後、完成した土壌兵が100体近くになったため、機会を伺っていると、次の戦の話が入ってきた。
「千代、ただいま。親父から聞いたが、経盛様は来月、西の国を攻めるそうだ。少し距離が離れているから、すぐには戻って来れまい」
「じゃあ、紫雲城に攻め入る良い機会だわ。いよいよ戦いの時が来たのね」
千代たちの反逆の時が近付いてきていた。
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