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第5章 暴かれる人の心
第15話 理解出来ない状況
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ある日、千代は城内の廊下を歩いていると、突然後ろから口を塞がれた。
そして、廊下の壁の隠し扉から、壁の中の小部屋へと連れ込まれる。
「……騒げば殺す」
そう言われ、突然の暗闇で周りが見えず、相手は恐らく男性であるため、千代は大人しくした。
口に布を入れられ、後ろ手に縛られた後、座った体勢で柱にくくりつけられた。
「……夜に来る」
そう言い残して謎の人物は立ち去り、千代は壁板の隙間からの光しか見えない暗所に監禁された。
人の足音が聞こえた時、声を出してみたが、くぐもった声では外に届かず、誰も気付かない。
誰かのルートでこんなイベントがあるのかしら。
ヒロインだから狙われても不思議ではないわね。
今はもう夕方だから、また謎の人物が来るまで待とうと考えていると、いつの間にか千代はうとうとと眠っていた。
ドタバタと響く足音に目を覚ますと、壁板の隙間からの光がほとんど無くなっていたため、夜になったようだった。
外の声から察すると、夕食時に千代が部屋に戻らなかったため、手の空いている者たちで城内を探しているようであった。
「どうだ、見つかったか?」
「いえ、経盛様。城内のどこにも居ません」
「まさか逃げたのか。たかが農民の娘の癖に調子に乗りやがって。我が軍で働いて貰うために煽てたら、すぐ本気にして顔を赤らめ、どの男にもいい顔をする尻軽女のことだ。何処ぞの男に寝返ったかもしれん。必ず探して見つけ出せ!」
「はっ!かしこまりました!」
ドタバタと足音が遠ざかる中、千代は呆然としていた。
ヒロイン補正で誰にでも好かれていると思っていた。
それが利用されていただけだったなんて、信じられない。
ゲームでは恋愛イベントが発生する度に好感度が上がっていくが、今はパラメータが見えないため、本心が分からない。
千代の頭の中がぐちゃぐちゃになっていると、今度は侍女たちの会話が聞こえてきた。
「今日はもう仕事は終わりと思っていたのに、何で私たちまで農民の娘を探さないといけないのよ」
「仕方ないじゃない。馬に乗れる人は外を探しに行ったからね」
「ねえ、梅、あなたは何か知らないの?」
「昼間はいつも通りだったわ。出世出来ると思って仕えていたのに、これじゃ貧乏くじだわ」
「瑠璃姫なんて呼ばれて、きっと調子に乗っていたのよ。経盛様はお怒りだし、見つかったらただでは済まないでしょうね」
千代に仕える侍女の梅は年齢が近く、何でも話せる仲だと思っていた。
それが上辺だけだったなんて、ショックだわ。
千代は次々と聞こえる皆の本心に、心が折れていた。
周りが静まりかえった頃、隠し扉から謎の人物が戻ってきた。
千代を柱から外し、手足を縛った後、千代を抱えて廊下に出る。
放心状態の千代はもうどうなってもいいと自暴自棄になっており、無抵抗であった。
月明かりの下に出ると、千代を抱えているのは黒い服の忍と分かった。
どこの国か分からないが、千代を連れ去ろうとしているのだろう。
軽い身のこなしで城の屋根に上がり、城壁へ移動していると後ろから声を掛けられた。
そして、廊下の壁の隠し扉から、壁の中の小部屋へと連れ込まれる。
「……騒げば殺す」
そう言われ、突然の暗闇で周りが見えず、相手は恐らく男性であるため、千代は大人しくした。
口に布を入れられ、後ろ手に縛られた後、座った体勢で柱にくくりつけられた。
「……夜に来る」
そう言い残して謎の人物は立ち去り、千代は壁板の隙間からの光しか見えない暗所に監禁された。
人の足音が聞こえた時、声を出してみたが、くぐもった声では外に届かず、誰も気付かない。
誰かのルートでこんなイベントがあるのかしら。
ヒロインだから狙われても不思議ではないわね。
今はもう夕方だから、また謎の人物が来るまで待とうと考えていると、いつの間にか千代はうとうとと眠っていた。
ドタバタと響く足音に目を覚ますと、壁板の隙間からの光がほとんど無くなっていたため、夜になったようだった。
外の声から察すると、夕食時に千代が部屋に戻らなかったため、手の空いている者たちで城内を探しているようであった。
「どうだ、見つかったか?」
「いえ、経盛様。城内のどこにも居ません」
「まさか逃げたのか。たかが農民の娘の癖に調子に乗りやがって。我が軍で働いて貰うために煽てたら、すぐ本気にして顔を赤らめ、どの男にもいい顔をする尻軽女のことだ。何処ぞの男に寝返ったかもしれん。必ず探して見つけ出せ!」
「はっ!かしこまりました!」
ドタバタと足音が遠ざかる中、千代は呆然としていた。
ヒロイン補正で誰にでも好かれていると思っていた。
それが利用されていただけだったなんて、信じられない。
ゲームでは恋愛イベントが発生する度に好感度が上がっていくが、今はパラメータが見えないため、本心が分からない。
千代の頭の中がぐちゃぐちゃになっていると、今度は侍女たちの会話が聞こえてきた。
「今日はもう仕事は終わりと思っていたのに、何で私たちまで農民の娘を探さないといけないのよ」
「仕方ないじゃない。馬に乗れる人は外を探しに行ったからね」
「ねえ、梅、あなたは何か知らないの?」
「昼間はいつも通りだったわ。出世出来ると思って仕えていたのに、これじゃ貧乏くじだわ」
「瑠璃姫なんて呼ばれて、きっと調子に乗っていたのよ。経盛様はお怒りだし、見つかったらただでは済まないでしょうね」
千代に仕える侍女の梅は年齢が近く、何でも話せる仲だと思っていた。
それが上辺だけだったなんて、ショックだわ。
千代は次々と聞こえる皆の本心に、心が折れていた。
周りが静まりかえった頃、隠し扉から謎の人物が戻ってきた。
千代を柱から外し、手足を縛った後、千代を抱えて廊下に出る。
放心状態の千代はもうどうなってもいいと自暴自棄になっており、無抵抗であった。
月明かりの下に出ると、千代を抱えているのは黒い服の忍と分かった。
どこの国か分からないが、千代を連れ去ろうとしているのだろう。
軽い身のこなしで城の屋根に上がり、城壁へ移動していると後ろから声を掛けられた。
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