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二十話 復讐の炎は強まるばかり
しおりを挟む中盤、グロ・性描写あり。
ご注意ください。
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野村は勝ち組枠に残ることが出来た。
それに安心してまた俯いたままニヤける。俺の最大の情報源はあいつだ。それに復讐を完遂するためにもあいつはまだ勝ち組にいてもらわなければ困る。
「おい!家畜共!!」
俺はその言葉を聞くと、直ぐに顔を戻し上を向く。富川だ。
「はい、なんでしょうか。」
まだ全員の前では豚として振る舞わなければ、怪しまれたら水の泡だ。
「確かに松川の言う通りだったのかもな。──野村、松川に回復魔法かけてやってくれ。やはり俺が間違ってたようだ。松川は悪くない。」
「分かった。」
富川はあっさりと松川を許し、野村は富川の命令を忠実に実行する。
ん?でも待てよ?松川が富川のパートナーになるってことは、勉強組のトップは松川になるってことなのか?
『……い、か…………………のか』
それは困るぞ。ココ最近の勉強組からの仕打ちがなかったのは野村が大人しかったからであって、松川がトップになるってことは………"ガッ……!!!???"
しかし俺の思考は突然の鳩尾への強い痛みによって遮られる。
「家畜の分際で俺の命令に背くなァッッ!!!!!!」
富川の膝蹴りが俺の鳩尾にクリーンヒットしたのだ。俺は少しぶりの強烈な痛みを忘れていたおかげで、その場に崩れ去った。
「やはり、俺はどうにかしてた。家畜の管理さえも怠っていたとは……仕方ない特別補習だ。楜澤!|家畜に仕置できる玩具作ってやれ。」
「うん。」
その時微かに見えた富川の顔は非常に残虐性に溢れていた。ニタニタと笑い、吐気がするほどのジトジトした目だった。
「お前ら、三十分後訓練所集合だ。」
富川はクラス全員にそう言うと、こちらを振り向き俺と碓氷に向かって「ズタズタにしてやるよ」と言った。
三十分後、俺と碓氷はそれぞれに目隠しと猿轡、手錠と紐で足を縛られた。目隠しや猿轡と言ったものは全て作り出されたものである。
楜澤 工のスキルの手によって。
ーーーーー
楜澤 工は元は負け組、しかしこの世界に来て、先程の椅子取りゲームにて勝ち組の座を手にした。
坊主頭で「これぞ日本男児」という顔をしており、負け組でもモテる方だ。
彼は『日本の名工 百選』に選ばれた祖父を持ち、その祖父の将来の跡継ぎ最有力候補と謳われた人物である。
その腕は本物で小学生の頃から始めた陶芸はその後、18歳以下の世界大会でも最優秀賞を獲得してきた。
ーーーーー
楜澤が持つスキルは、万物創造。この世界には創造魔法というのが存在するが、創造魔法は作るための素材とイメージが必要で難しい。
が、彼のスキルを使えば素材がなくてもイメージだけで作れてしまう。そしてレベルに応じて作れるサイズが決まる。
俺はこのスキルは奪いたいと思っていた。使い勝手が良すぎる上に、このスキルを持ってさえすればチートだ。恐らくだが、コピー人間なんかも作れてしまう。
と、そんなことを今は考えている暇はない。なるべく早くこの地獄の時間が終わることを願わなければ。
あとは今日残っているスキル発動四回分を何に使うかは考えねばならない。この際松川を次の標的にして、富川の心をズタズタにしてやろうと思ったが、それでは『富川の横にいると死ぬ』という噂が流れてもいけない。
だからまぁいい。次の標的はちょうどスキルも使ってもらったし、楜澤にするか。
俺はやつにはあまり因縁がない。いじめにも消極的だったし、勝ち組に従ってるだけだったから。
まぁでもいま因縁が出来た。奪ってやるよ全部!!
俺と碓氷はその後、男子から慰めものに女子からは暴力や暴言のはけ口として使われた。
少しぶりのいじめは俺に再び復讐心を燃やさせ、痛みを与えた。その中で手錠をされ可動域の狭い中、途中から参加してきた楜澤のスキル、体力を奪うことに成功し、残り二回は手が触れ、ランダムに奪った。
男子は俺の後ろと口に汚物を入れ、二周ほどすると、次は死んだ方がましとも思われる本気のグーパンを顔、腹、股間に打ってきた。
女子は途中でいなくなったが、その暴力は朝方になるまで続き、精神も身体もボロボロになった。
誰もいなくなった訓練場で俺と碓氷は全裸で横になっていた。
「……う、すい……だいじょ、か?」
碓氷の方を見るとリンチの痣が凄まじく残り、俺もそう見えているのだと思うと、さらに復讐の火が強くなる。
「……だいじょうぶに見える?」
「また、こっぴどくやられたな。」
碓氷はもう泣いていない。俺と同じ思いなのだろう。
「あいつら、絶対全員殺す。」
憎悪だ。
「あぁ、一人一人殺していこう。」
二人の意見は纏まった。
その後、俺たちは再び戻ってきた野村に謝られながら介抱され、富川からの伝言を預かってきたといった。
「富川からは『お前ら、今日のことは誰にも話すんじゃねぇぞ。話したらさっきみたいにまたリンチしてあげるよ』と言われた。ほんとにごめん。今日はあいつに逆らえなかった。『本気でやらないやつは家畜にする』って言われたから、ほんとにすまない!」
野村は土下座する。
俺は『大丈夫です』と言い、その場をあとにした。
『誰にも言うな』と言われましても、ルエルさんには意味ないんですよね。だって彼、心読めちゃうんですもん。
そんな皮肉を言ってしまえば、確実にルエルとの交流は出来なくなる。
さてさて、俺は野村に連れられて部屋へと向かう。城内では俺の扱いは酷く、乱暴に手を引き、部屋に入れる時も投げ飛ばされる。誰かに見られてるかもしれないからしょうがないこと、だそうだ。
野村には既に本日のスキル発動二回分を使ってしまい、それも瞬時に奪うものが定まらず、体力二回という結果になったが。
ーーーー
齋藤 誠 (男)
十七歳 人間族
体力 12280
魔力 840
剣術 lv8
武術 lv1
魔術 lv1
称号 家畜以下の存在 スキル復讐者を獲得
復讐者の逆襲 スキル復讐者のスキルレベルの上昇ペースアップ
スキル 復讐者 lv5
一日に一回。最初に触ったものの持ち物・能力・命などをレベルに応じて一つ奪うことが出来る。このスキルを人に言った場合、その人からは何も奪えなくなる。
・最初に触れた人の何が欲しいかを念じる。日付が変わる十分前には奪ったものを手に入れられる。
・レベルに応じないものは奪えない。
・モノを奪った場合はその持ち物をどのように手に入れたかなどの記憶も同時に転送される。
・奪われた本人・このスキルを知らない者には本人の風貌がどれだけ変わろうとも気づかれない。
lv5……一日に5個。モノは武器以外ならなんでも奪える。能力を多めに奪うことが可能。体力や魔力は使用者の上限値が上昇し、奪われた方は上限値が減少する。体力・魔力は0になるまでは奪えず、最低10は残るものとする。スキルレベルが3以下なら奪える。
無音の殺戮者 lv3
レベルに応じて一定範囲を無音空間にできる。自身、自身の味方には音が聞こえる。
lv3……自身から六メートル四方を無音空間とする。
体力に比例する強大な力lv2
体力の数値に比例して武術レベルが高くなる。
lv2……体力の値の2%が武術レベルとなる。
死者の声を聞く耳
死者の死亡日時、死亡理由が分かる。
|万物創造(クリエイション) lv2
普通の創造魔法と違い、材料はいらずにイメージだけで物を創造できる。レベルに応じて創造できる大きさ、モノが変化する。
lv2……小道具を作れる。ただし、自動に動くものは作れない。
ーーーーー
暴力と暴言が壮絶すぎて聞こえなかったが、しっかりとステータスに反映されていた。二つのスキルに、楜澤から奪った体力800と、あと剣術レベルが上がっているが、これは稽古の分だけでは無さそうだ。
そういうのも奪えるのね。
あともうひとつはステータスではない何かで、俺もなにかは分からなかった。それが気がかりだが、復讐に使えるものだといいなぁ。
そしてあと変わったことといえば、武術の欄が追加されたこと。これは体力に比例する強大な力で補えるからなくてもいいんだけどな。
まぁとはいえだ。スキル二つを奪えたことは大きい。ただ暴力を受けただけにならなくて良かった。
俺はそう思いながら、床で疲れきった体を休ませた。
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