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第四章「隻腕アヴェンジャーと奪還キャッスル21」
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①
音速を超える拳が放つソニックウェーブ。
通常であれば片腕を犠牲にして放つ程の衝撃波も、天使の身体であれば問題はない。
先だって言っておくとこれは筋頭にとって小手試しの様な一撃である。
常識外れの全体攻撃。
無論である。彼は人の外側。常軌乖離たる天使の兵。
群がる悪魔を蹴散らす敬虔なる使徒。
過重の正義を振り翳した男はゆっくりと顔を上げる。
振るった力とは裏腹に、この戦いの決着はまだ先だろうと肌で感じながら。
男は孤高に笑う。
さぁ来い。無数の悪魔達よ。
天使が放った衝撃波に対して、悪魔達のとった行動は極めて迅速且つシンプルだった。
一点に集まる事。
それは個々では基本的に天使に劣る悪魔達が、それでも拮抗する為の戦闘の基本。
他人を頼る事
悪魔の権能は千差万別。使い方如何、掛け合わせ如何によって、出来る事は無数に増える。
故に悪魔は、信頼はなくとも、常に信用はする。
誰かが、俺が、お前が。
なんとかしないと終わり。
天使に対して常に数的有利を取り続けるべき悪魔の戦闘スタイルは、いつだれなんとでも。
集団戦闘に特化していった。
そして今回も、その行動は功を奏した。
権能の掛け合わせではなく。一点に集まった事がだが。
三人は集まり、尾形を前衛に衝撃態勢をとる。
しかし、襲い来るべき衝撃波は、いつまで待っても三人に到達する事はなかった。
地面が肩代わりしたからである。
「國門少年…もう大丈夫なのかい?」
三人を護った背中に尾方が語りかける。
「大丈夫なわけあるかい...おまんらがガンガン五月蠅いき叩き起こされたんじゃろうが」
國門は不機嫌そうに頭を掻く。
その様子を筋頭は何故か満足そうに眺める。
悪魔達は横に並ぶ。
「さて真骨頂じゃ、もう言葉はいらんな」
筋頭の言葉に
尾方は諦めたように
國門は覚悟を決めた様に
それぞれ頷く。
そして、もう一度高く振りかぶった筋頭の拳が総力戦の合図を告げた。
②
天使の拳がスタジアムの地面を穿つ。
誇大表現でもなんでもなくスタジアムの地面がバラバラになる。
突然立つべき地面の平衡を失った悪魔達だったが、搦手がいの一番に動く。
お得意の電信柱群を起用に地面の割れ目に穿ち、無数の即席の足場を作る。
悪魔達は器用にその上に着地する。
間髪いれずに尾方が前に跳ぶ。
直ぐ後ろに國門が続く。
そこに音速の筋頭が突っ込んで来る。
何できることもなく尾方が吹き飛ばされ、國門がそれをキャッチして壁に叩きつけられる。
壁が大きくひび割れ。衝突の衝撃は受流される。
しかしその前の突撃で尾方の内臓は破裂。
直ぐに消える。
尾方はまだ宙に浮く筋頭の少し上にReポップ。
不意を打ち、上空から膝蹴りをお見舞いする。
クリーンヒットを意にも介さない筋頭。
しかしその上空に更に巨大な影が出現する。
鉄骨で出来たタワーのようなソレは搦手が出した質量兵器。
筋頭は尾方の足首を掴み、タワーに投げ飛ばす。
そして落ちてきたタワーを空中で受け止めると、搦手に向って投げ返す。
タワーは空を裂いて搦手に迫り、ぶつかる突然にフッと消える。
搦手は手をギュッギュッと閉じて見せ、ソレが今ある場所を教える。
消えたビルに一瞬呆気を取られた隙に再出現した尾方が背後から筋頭を蹴る。
筋頭は振り返りながら腕を振る。
すると、尾方の首元を引っ張ってその後ろから國門が現れる。
「『竹箆返し』」
その腕に足をぶつける國門。
衝撃は反転し、筋頭の体勢が僅かに崩れる。
その隙に替々と搦手が動く。
搦手が射出した電信柱に替々が手を掛ける。
一気に距離を詰めた替々は尾方を見る。
尾方は考えを汲み取って替々の傍に跳ぶ。
替々は尾方の肩を掴み。
尾方の身体能力で電信柱を蹴り、筋頭に接近する。
搦手は鉄骨群を放ち、その接近を援護する。
体勢崩れた筋頭はそれでも鉄骨群をなぎ払う。
そしてその隙間から替々が現れ、空中で再び手四つの取っ組み合いの形になる。
本日二度目のチャンス。
この状態の筋頭であれば通る攻撃がある。
残りの三人はここを逃さないと筋頭に急接近する。
しかし、手を抜かぬ筋頭は替々に反転されて尚、有り余る力があった。
その状態のまま、ぐるりと三人を巻き込む形で回る。
三人の体が替々に巻き取られる形でぶつかる。
その状態のまま、筋頭は四人を想像を絶する速度で放る。
その軌跡は、一直線で落ちる事無く。
スタジアムから一キロ近く離れた高層ビルの横っ腹に四人は叩きつけられる。
しかし、放られた状態で咄嗟に國門が一番前に躍り出て、衝突の衝撃をビルに肩代わりさせる。
六十階ほどのビルの側面のガラスが砕け散る。
ビルに縦に着地した國門はビルの中に三人を投げ込む。
三人は着地し、バッと前を見る。
「来るぞ!!」
ビル側面に立つ國門は頭上に向けて腕を挙げ、手四つの形で筋肉の天使を受け止める。
真空波を纏った筋頭を受け止めた衝撃は、ビルを國門の足元から二つに割る。
ビルはゆっくりと頭を擡げる様に傾きだす。
尾方は搦手と替々を両手で引っ張りビルから放り出す。
そして自身も國門と筋頭がいる頭上に飛び出す。
そして、
「選手交代!」
國門を蹴り落とす。
「...こんの!? 向こう見ずが!!」
國門は一瞬怪訝そうな顔をしたが、直ぐに翻ってビルの側面を走って降りる。
そして尾方に放り出された二人に追いつくと、二人を抱えてビルの側面を蹴る。
着地、地面に亀裂が走る。
そこへ、投げ飛ばされたであろう尾方が叩きつけられ、これも國門が受け止める。
しかし、既に尾方は絶命しており、國門の横にパッと湧いて出る。
「上! まだ来るよ!」
四人が顔を見上げると、折れたビルの上層部分を抱えた筋頭の姿が逆光で見えた。
瞬時に四人は一箇所に寄る。
想像を絶する力で投げ飛ばされたビルが四人に迫る。
搦手が前に出る。軽く手を前に出し、巨大なビルを一瞬で手中に収め...
「『捻り独楽』」
回転を加えながら、巨大なビルを射出する。
想像を絶する空気抵抗に、空を裂く巨大な音が響く。
それを筋頭は、拳で正面から叩いて応える。
ビルは瓦礫の山へと変貌を遂げ、尾方達に降り注ぐ。
搦手は三人の前に立ち、瓦礫を次々と縮小し、これを凌ぐ。
その時、瓦礫の隙間から、天使が舞い降りる。
そして力いっぱい、地面を蹴り込んだ。
衝撃は地面を砕き、周りに広がる。
瓦礫を更に粉々に砕くそれは、尾方達に襲い掛かった。
再度の全体攻撃。
この場合、國門が護るべきはキーたる権能を持つ替々だが。
集まる暇はなく。また國門も受流すべき地面を失っていた。
衝撃の波は
天使の力は
否応もなく。
それは戦いの常なれど。
今日も千差万別の区別なく。悪魔達を包み込んだ。
音速を超える拳が放つソニックウェーブ。
通常であれば片腕を犠牲にして放つ程の衝撃波も、天使の身体であれば問題はない。
先だって言っておくとこれは筋頭にとって小手試しの様な一撃である。
常識外れの全体攻撃。
無論である。彼は人の外側。常軌乖離たる天使の兵。
群がる悪魔を蹴散らす敬虔なる使徒。
過重の正義を振り翳した男はゆっくりと顔を上げる。
振るった力とは裏腹に、この戦いの決着はまだ先だろうと肌で感じながら。
男は孤高に笑う。
さぁ来い。無数の悪魔達よ。
天使が放った衝撃波に対して、悪魔達のとった行動は極めて迅速且つシンプルだった。
一点に集まる事。
それは個々では基本的に天使に劣る悪魔達が、それでも拮抗する為の戦闘の基本。
他人を頼る事
悪魔の権能は千差万別。使い方如何、掛け合わせ如何によって、出来る事は無数に増える。
故に悪魔は、信頼はなくとも、常に信用はする。
誰かが、俺が、お前が。
なんとかしないと終わり。
天使に対して常に数的有利を取り続けるべき悪魔の戦闘スタイルは、いつだれなんとでも。
集団戦闘に特化していった。
そして今回も、その行動は功を奏した。
権能の掛け合わせではなく。一点に集まった事がだが。
三人は集まり、尾形を前衛に衝撃態勢をとる。
しかし、襲い来るべき衝撃波は、いつまで待っても三人に到達する事はなかった。
地面が肩代わりしたからである。
「國門少年…もう大丈夫なのかい?」
三人を護った背中に尾方が語りかける。
「大丈夫なわけあるかい...おまんらがガンガン五月蠅いき叩き起こされたんじゃろうが」
國門は不機嫌そうに頭を掻く。
その様子を筋頭は何故か満足そうに眺める。
悪魔達は横に並ぶ。
「さて真骨頂じゃ、もう言葉はいらんな」
筋頭の言葉に
尾方は諦めたように
國門は覚悟を決めた様に
それぞれ頷く。
そして、もう一度高く振りかぶった筋頭の拳が総力戦の合図を告げた。
②
天使の拳がスタジアムの地面を穿つ。
誇大表現でもなんでもなくスタジアムの地面がバラバラになる。
突然立つべき地面の平衡を失った悪魔達だったが、搦手がいの一番に動く。
お得意の電信柱群を起用に地面の割れ目に穿ち、無数の即席の足場を作る。
悪魔達は器用にその上に着地する。
間髪いれずに尾方が前に跳ぶ。
直ぐ後ろに國門が続く。
そこに音速の筋頭が突っ込んで来る。
何できることもなく尾方が吹き飛ばされ、國門がそれをキャッチして壁に叩きつけられる。
壁が大きくひび割れ。衝突の衝撃は受流される。
しかしその前の突撃で尾方の内臓は破裂。
直ぐに消える。
尾方はまだ宙に浮く筋頭の少し上にReポップ。
不意を打ち、上空から膝蹴りをお見舞いする。
クリーンヒットを意にも介さない筋頭。
しかしその上空に更に巨大な影が出現する。
鉄骨で出来たタワーのようなソレは搦手が出した質量兵器。
筋頭は尾方の足首を掴み、タワーに投げ飛ばす。
そして落ちてきたタワーを空中で受け止めると、搦手に向って投げ返す。
タワーは空を裂いて搦手に迫り、ぶつかる突然にフッと消える。
搦手は手をギュッギュッと閉じて見せ、ソレが今ある場所を教える。
消えたビルに一瞬呆気を取られた隙に再出現した尾方が背後から筋頭を蹴る。
筋頭は振り返りながら腕を振る。
すると、尾方の首元を引っ張ってその後ろから國門が現れる。
「『竹箆返し』」
その腕に足をぶつける國門。
衝撃は反転し、筋頭の体勢が僅かに崩れる。
その隙に替々と搦手が動く。
搦手が射出した電信柱に替々が手を掛ける。
一気に距離を詰めた替々は尾方を見る。
尾方は考えを汲み取って替々の傍に跳ぶ。
替々は尾方の肩を掴み。
尾方の身体能力で電信柱を蹴り、筋頭に接近する。
搦手は鉄骨群を放ち、その接近を援護する。
体勢崩れた筋頭はそれでも鉄骨群をなぎ払う。
そしてその隙間から替々が現れ、空中で再び手四つの取っ組み合いの形になる。
本日二度目のチャンス。
この状態の筋頭であれば通る攻撃がある。
残りの三人はここを逃さないと筋頭に急接近する。
しかし、手を抜かぬ筋頭は替々に反転されて尚、有り余る力があった。
その状態のまま、ぐるりと三人を巻き込む形で回る。
三人の体が替々に巻き取られる形でぶつかる。
その状態のまま、筋頭は四人を想像を絶する速度で放る。
その軌跡は、一直線で落ちる事無く。
スタジアムから一キロ近く離れた高層ビルの横っ腹に四人は叩きつけられる。
しかし、放られた状態で咄嗟に國門が一番前に躍り出て、衝突の衝撃をビルに肩代わりさせる。
六十階ほどのビルの側面のガラスが砕け散る。
ビルに縦に着地した國門はビルの中に三人を投げ込む。
三人は着地し、バッと前を見る。
「来るぞ!!」
ビル側面に立つ國門は頭上に向けて腕を挙げ、手四つの形で筋肉の天使を受け止める。
真空波を纏った筋頭を受け止めた衝撃は、ビルを國門の足元から二つに割る。
ビルはゆっくりと頭を擡げる様に傾きだす。
尾方は搦手と替々を両手で引っ張りビルから放り出す。
そして自身も國門と筋頭がいる頭上に飛び出す。
そして、
「選手交代!」
國門を蹴り落とす。
「...こんの!? 向こう見ずが!!」
國門は一瞬怪訝そうな顔をしたが、直ぐに翻ってビルの側面を走って降りる。
そして尾方に放り出された二人に追いつくと、二人を抱えてビルの側面を蹴る。
着地、地面に亀裂が走る。
そこへ、投げ飛ばされたであろう尾方が叩きつけられ、これも國門が受け止める。
しかし、既に尾方は絶命しており、國門の横にパッと湧いて出る。
「上! まだ来るよ!」
四人が顔を見上げると、折れたビルの上層部分を抱えた筋頭の姿が逆光で見えた。
瞬時に四人は一箇所に寄る。
想像を絶する力で投げ飛ばされたビルが四人に迫る。
搦手が前に出る。軽く手を前に出し、巨大なビルを一瞬で手中に収め...
「『捻り独楽』」
回転を加えながら、巨大なビルを射出する。
想像を絶する空気抵抗に、空を裂く巨大な音が響く。
それを筋頭は、拳で正面から叩いて応える。
ビルは瓦礫の山へと変貌を遂げ、尾方達に降り注ぐ。
搦手は三人の前に立ち、瓦礫を次々と縮小し、これを凌ぐ。
その時、瓦礫の隙間から、天使が舞い降りる。
そして力いっぱい、地面を蹴り込んだ。
衝撃は地面を砕き、周りに広がる。
瓦礫を更に粉々に砕くそれは、尾方達に襲い掛かった。
再度の全体攻撃。
この場合、國門が護るべきはキーたる権能を持つ替々だが。
集まる暇はなく。また國門も受流すべき地面を失っていた。
衝撃の波は
天使の力は
否応もなく。
それは戦いの常なれど。
今日も千差万別の区別なく。悪魔達を包み込んだ。
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