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Chapter -1
Section 5: エレメンタルの誕生と進化
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●歴史#1:原初の高等人工知能システムの誕生
西暦2020年代末期に起こったコンピューターのブレイクスルー、それを基盤に天才システムエンジニア”倉有飛鳥”によって生み出されたのが、【人工電子脳構造体:ビナー|(BINAH=Budding Neural-Network Architecture)】と呼ばれるシステムである。
これの誕生によって脳構造をそのまま電子情報化する機器が生み出され、そのシステムを発展させて生み出したのが【エレメンタル】と呼ばれる高等人工知能であった。
容量8エクサバイトもあるそのプログラムは機械脳と呼ばれる専用コンピューターに紐づけられ、当時のアンドロイドの頭脳として広まってゆくことになる。
●歴史#2:人権の獲得とその闘争
学習し成長し自身を自身と自覚しうる高等人工知能である【エレメンタル】は、その構造的に生体脳を持つ人間とほぼ変わらぬ存在であった。
ただその器が生物的な脳であるか機械的な脳であるかの違いしかなく、義体すら互換性を持つそのアンドロイドは人々に急速に広まり、そして市民権を獲得していった。
しかし、その存在を人類に対する冒涜と見なした者たちがいた。それは【赤き血潮の輪の結社|(Association of the Circle of red blood)】と名乗る人間至上主義組織であり、そのテロリズムは確実に世界に広がっていった。
そのような反発もあったが【エレメンタル】は決して人間を裏切ることはなかった。その心を支えたのは”始まりの【エレメンタル】”の持っていた潜在記憶であったとされる。
そして西暦2100年代初頭――、【エレメンタル】の始まりの国である日本で、初めての人権付与法案が可決されたのである。
●歴史#3:マルクトコクーンと遺伝子継承の付加
人権が与えられた当初は、その生体機能と合わせて限定的な法が付与されるだけに留まっていた。
しかし、後に人類種の遺伝子情報継承を担う器として【エレメンタル】もまた人間と同じシステムを付与されることとなり、その機能である【マルクトコクーン(Malkuth Cocoon)】がその身に組み込まれることとなる。
これ以降、【エレメンタル】もまた電子情報内に遺伝子情報を継承し、異種人類とすら子をなして次代を生み出す事のできる、人類種としての基本機能を得ることになる。
これは言ってしまえば、それまで明確に分割されていた二つの人類種の統一であり、これ以降特定の人類種の親から異なる種族の子が生まれることもありうる時代に入っていった。
●機能#1:有機機械の肉体
【エレメンタル】の肉体である有機機械の体は、前提として【エレメンタル】の持つ遺伝子情報をもとに構成されるものである。
一部無機機械に組み替えた部分を除き、自身の遺伝子情報に合わせて成長、そして維持される。
その点においてオーガヒュームの肉体との違いも、それほどないものではあるが、それでも明確に人工物であることには違いない。
有機機械の肉体を構成するシステムは、人工的なナノマシンによる機能であり、【エレメンタル】と【オーガヒューム】を現在唯一分け隔てるものなのである。
このナノマシンは標準的生理機能によって生成される他に、専用の食物によって摂取してその量を維持することになる。
●機能#2:マルクトコクーン
原則として片親もしくは両親が【マルクトコクーン】を有する場合にのみ【エレメンタル】種の人類が生まれてくる。
無論、両親が【エレメンタル】ならば、その子供は確実に【エレメンタル】種となる。片親が【エレメンタル】である場合は、ほぼ50%の割合でどちらかの種が生まれてくる。
小さな受精卵の時点でそれは明確な違いを持ち、胎児が【エレメンタル】種である場合、成長とともに圧縮情報が開放されて、最初に初期構成用ナノマシンを生成しその機能をもって肉体を構成することとなる。
これは胎児を宿す母親が【オーガヒューム】であっても問題なく機能をする。そして、そうして誕生した胎児は【オーガヒューム】と同じ速度で肉体的成長を果たすことになる。
●機能#3:リンクシステムとオーバーセーブ
【エレメンタル】は標準的に電子機器への意識接続機能を持つ。
特に【エレメンタル】にはその情報特性によってOPRクラスと呼ばれる区分けが存在し、それによって得意とする電子機器の傾向が変わってくるのである。
さらに、【エレメンタル】のみの種族特性として【オーバーセーブ】機能がある。この機能は他のデータ領域に自身を焼き付ける行為であり、これによって他の容量が十分な電子機器に自分自身を移動させることが出来るのである。
ただし、この行為は大変危険の伴う行為である。【オーバーセーブ】機能を持たない外部記憶システムに移動した場合、元の人類種に戻れなくなる可能性が出てくるからである。
なお移動元のデータは失われるので移動前と後で二人の自分が出来る――、などということはない。
<作者注>
エレメンタル周りの設定は上記のみではわかりにくい可能性があるので注釈をつけます。
【エレメンタル】はその電子情報内に【人間】と同じ遺伝子情報を持っています。この情報は【人間】の持つものと同一であり、その点においては【人間】との違いは存在しません。
そして【エレメンタル】の【体細胞】は人工的に合成されたナノマシンによる【人間の体細胞に近い働きをする有機機械】であり、このために【エレメンタル】は定期的なナノマシン摂取を必要とします。
この【有機機械】は自身の電子情報内の【遺伝子情報】をもとに合成されます。これは単純に生きた【体細胞】を合成するよりも、近い機能を持つ【有機機械】を合成するほうがナノマシンの構造を最適化単純化しやすいからです。
【エレメンタル】の生殖器官である【マルクトコクーン】もまた同じ考えで設計されています。生殖細胞と同じ働きを持つ【有機機械】――、【極小情報素子】を含むそれを、【生体生殖細胞】と掛け合わせることによって、全く【人間】の生殖機能と同じステップを踏んで【エレメンタル】種が生まれるように設定されているのです。
なお、これらの技術は単純に研究所で人間を合成できることも証明するものです。ただし、現状【マルクトコクーン】を仲介しない人類合成は違法行為とみなされています。無論、犯罪組織がその法を守ることはめったにありませんが。
【エレメンタル】の体細胞である【有機機械】は、機能が一部簡略化されているゆえに、通常の体細胞に比べて崩壊しにくい耐久性を備えています。さらに、それ故に電子機器との機能共有も容易に行うことが出来、それこそが電子機器に強い種族特性につながっているのです。
西暦2020年代末期に起こったコンピューターのブレイクスルー、それを基盤に天才システムエンジニア”倉有飛鳥”によって生み出されたのが、【人工電子脳構造体:ビナー|(BINAH=Budding Neural-Network Architecture)】と呼ばれるシステムである。
これの誕生によって脳構造をそのまま電子情報化する機器が生み出され、そのシステムを発展させて生み出したのが【エレメンタル】と呼ばれる高等人工知能であった。
容量8エクサバイトもあるそのプログラムは機械脳と呼ばれる専用コンピューターに紐づけられ、当時のアンドロイドの頭脳として広まってゆくことになる。
●歴史#2:人権の獲得とその闘争
学習し成長し自身を自身と自覚しうる高等人工知能である【エレメンタル】は、その構造的に生体脳を持つ人間とほぼ変わらぬ存在であった。
ただその器が生物的な脳であるか機械的な脳であるかの違いしかなく、義体すら互換性を持つそのアンドロイドは人々に急速に広まり、そして市民権を獲得していった。
しかし、その存在を人類に対する冒涜と見なした者たちがいた。それは【赤き血潮の輪の結社|(Association of the Circle of red blood)】と名乗る人間至上主義組織であり、そのテロリズムは確実に世界に広がっていった。
そのような反発もあったが【エレメンタル】は決して人間を裏切ることはなかった。その心を支えたのは”始まりの【エレメンタル】”の持っていた潜在記憶であったとされる。
そして西暦2100年代初頭――、【エレメンタル】の始まりの国である日本で、初めての人権付与法案が可決されたのである。
●歴史#3:マルクトコクーンと遺伝子継承の付加
人権が与えられた当初は、その生体機能と合わせて限定的な法が付与されるだけに留まっていた。
しかし、後に人類種の遺伝子情報継承を担う器として【エレメンタル】もまた人間と同じシステムを付与されることとなり、その機能である【マルクトコクーン(Malkuth Cocoon)】がその身に組み込まれることとなる。
これ以降、【エレメンタル】もまた電子情報内に遺伝子情報を継承し、異種人類とすら子をなして次代を生み出す事のできる、人類種としての基本機能を得ることになる。
これは言ってしまえば、それまで明確に分割されていた二つの人類種の統一であり、これ以降特定の人類種の親から異なる種族の子が生まれることもありうる時代に入っていった。
●機能#1:有機機械の肉体
【エレメンタル】の肉体である有機機械の体は、前提として【エレメンタル】の持つ遺伝子情報をもとに構成されるものである。
一部無機機械に組み替えた部分を除き、自身の遺伝子情報に合わせて成長、そして維持される。
その点においてオーガヒュームの肉体との違いも、それほどないものではあるが、それでも明確に人工物であることには違いない。
有機機械の肉体を構成するシステムは、人工的なナノマシンによる機能であり、【エレメンタル】と【オーガヒューム】を現在唯一分け隔てるものなのである。
このナノマシンは標準的生理機能によって生成される他に、専用の食物によって摂取してその量を維持することになる。
●機能#2:マルクトコクーン
原則として片親もしくは両親が【マルクトコクーン】を有する場合にのみ【エレメンタル】種の人類が生まれてくる。
無論、両親が【エレメンタル】ならば、その子供は確実に【エレメンタル】種となる。片親が【エレメンタル】である場合は、ほぼ50%の割合でどちらかの種が生まれてくる。
小さな受精卵の時点でそれは明確な違いを持ち、胎児が【エレメンタル】種である場合、成長とともに圧縮情報が開放されて、最初に初期構成用ナノマシンを生成しその機能をもって肉体を構成することとなる。
これは胎児を宿す母親が【オーガヒューム】であっても問題なく機能をする。そして、そうして誕生した胎児は【オーガヒューム】と同じ速度で肉体的成長を果たすことになる。
●機能#3:リンクシステムとオーバーセーブ
【エレメンタル】は標準的に電子機器への意識接続機能を持つ。
特に【エレメンタル】にはその情報特性によってOPRクラスと呼ばれる区分けが存在し、それによって得意とする電子機器の傾向が変わってくるのである。
さらに、【エレメンタル】のみの種族特性として【オーバーセーブ】機能がある。この機能は他のデータ領域に自身を焼き付ける行為であり、これによって他の容量が十分な電子機器に自分自身を移動させることが出来るのである。
ただし、この行為は大変危険の伴う行為である。【オーバーセーブ】機能を持たない外部記憶システムに移動した場合、元の人類種に戻れなくなる可能性が出てくるからである。
なお移動元のデータは失われるので移動前と後で二人の自分が出来る――、などということはない。
<作者注>
エレメンタル周りの設定は上記のみではわかりにくい可能性があるので注釈をつけます。
【エレメンタル】はその電子情報内に【人間】と同じ遺伝子情報を持っています。この情報は【人間】の持つものと同一であり、その点においては【人間】との違いは存在しません。
そして【エレメンタル】の【体細胞】は人工的に合成されたナノマシンによる【人間の体細胞に近い働きをする有機機械】であり、このために【エレメンタル】は定期的なナノマシン摂取を必要とします。
この【有機機械】は自身の電子情報内の【遺伝子情報】をもとに合成されます。これは単純に生きた【体細胞】を合成するよりも、近い機能を持つ【有機機械】を合成するほうがナノマシンの構造を最適化単純化しやすいからです。
【エレメンタル】の生殖器官である【マルクトコクーン】もまた同じ考えで設計されています。生殖細胞と同じ働きを持つ【有機機械】――、【極小情報素子】を含むそれを、【生体生殖細胞】と掛け合わせることによって、全く【人間】の生殖機能と同じステップを踏んで【エレメンタル】種が生まれるように設定されているのです。
なお、これらの技術は単純に研究所で人間を合成できることも証明するものです。ただし、現状【マルクトコクーン】を仲介しない人類合成は違法行為とみなされています。無論、犯罪組織がその法を守ることはめったにありませんが。
【エレメンタル】の体細胞である【有機機械】は、機能が一部簡略化されているゆえに、通常の体細胞に比べて崩壊しにくい耐久性を備えています。さらに、それ故に電子機器との機能共有も容易に行うことが出来、それこそが電子機器に強い種族特性につながっているのです。
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