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前略、特典とあと一回と

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「それで?何しに来たのさエセ天使は」

「セツナンって、なんで私にそんな厳しいの?」

「当たり前でしょ!」

 怒る、キレる、憤る。
 このエセ天使はこれまで自分がしてきた事を、分かっていないのだろうか?

「大体さ、エセ天使があたしに衝撃を与えまくったせいで、記憶が薄れるわ、抜け落ちるわで大変だったんだからね」

 もちろん、今も大変なんだけどさ、いろんな意味で。

「記憶?セツナンがバカなだけじゃないの?」

「んなわけないでしょ!成績良かったし!」

 良かったというか、悪くはなかった……はず……
 苦手だったのは……暗記か……、うん、黙ってよう。

「ほれ、さっさとバイトでも行きなよ、お呼びじゃないよエセ天使」

 しっしっ、手で払う。
 配達でもケバブ屋でもいいから、とっとと行ってほしい。

「エセ天使エセ天使エセ天使、しつこいおバカさん、こっちだって好きでバイトしてるんじゃないですー!、他の天使の仕事奪って、セツナンのことを案内したのバレて減給されただけですーー!」

 やっぱりバイトか、天使がバイトとか聞いたことがない。
 いや待て、仕事を奪って?

「ねぇ、エセ天使ってさ、転生担当の天使じゃないの?」

「違いますよ?労働環境の担当です」

「ふざけんなぁ!」

 振り下ろす、両腕を、空を切る。
 なんだ!?労働環境担当の天使って!意味が分からない!
 あれかな!?だからバイトしてるのかな!?
 
「ちょっと待って!じゃあ本来のあたしの担当は!?」

 どっちだ、コレより上か、下か。
 下だったらどうしよう……このエセ天使で良かった、とでも言わなくてはならないのか?

「めっちゃいい娘です、あの娘が担当した転生者は、絶対に成功すると評判です。あまりに非がなくてムカついたんで、つい」

「ふざけんなぁ!!!」
 
 本日二度目のふざけんなぁ、それはさっきよりも高らかに響いた。

「あなたは……」

「「なに(なんですか)?」」

 まだ言い争いを続けるあたしとエセ天使に、リリアンが遠慮がちに声をかけてくる。
 なぜそっちまで反応するんだ、エセ天使に声をかけるわけないだろう。

「どうしたのリリアン?」「なんですかリリアンさん?」

「……ネーミングセンスのない方です」

 なるほどね、いい表現だ。
 それなら、バカみたいな名前の武器を持ってる方だろうからね。

「だってさ、呼んでるよ、2分の1でぶっ殺ハンマー」

「お呼びですよ、セツナドライブさん」

「「なんだとやるか!」」

 よし決めた、しばき倒してスキルボードを剥ぎ取ろう、まともなスキルをいただこう。

「静かにしてください、天使と知り合いなんですか?」

 天使と知り合い→天使ではない方。
 どうやらリリアンの中では、あたしの方がネーミングセンスがない、ということらしい。
 
 おかしいな、前に『セツナドライブ』をいい名前だと言ってくれたのに。

「知り合いと言いますか……マブですかね?」

「違うからね、静かにしててね」

 まぁ、エセ天使がいるなら説明も早い、失われた命をなんとかする話をしよう。

「まぁ、ネオスティアに来る時にいろいろあったんだよ、その時にいろいろ特典をもらっててさ」

「懐かしいですねぇ、あの頃のセツナンは、それはそれは初々しくて……」

「そろそろ怒るよ?」

 シリアスな話をするんだ、邪魔しないでほしい。

「もうほとんどなくしたんだけど、1つだけ残ってるんだよ」

 ポーチから取り出す、最後の特典、くしゃくしゃの紙を1枚。

「あたしの願いは、あと1回だけ、大体叶う」
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