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ジュリエットの密かな欲望 2*
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「あなたが欲しくて準備しました」
向かい合ったジュリエットが後れ毛一本も零れていないまとめ髪から櫛を引き抜き、つややかな黒髪が弾むように落ちた。
今日のジュリエットのドレスは前面にボタンのある前開き型だ。このドレスを着て行くことは決めていた。マリリンがいなくても自分で脱ぎ着出来るから。
無表情のままジュリエットを見つめるオデルを見つめ返しながら、ジュリエットは胸元のボタンを外し始めた。
こんなことは下品だろうか。どうかそんな風に思わないでほしい。
躊躇しそうな手が僅かにふるえたが、それでも止めることはなかった。
話はモナーレがラファエルに逢いに来た日に遡る。
ラファエルにと祝いの品を渡しオデルにも祝いを伝えた後、モナーレとジュリエットはサロンで向かい合った。
久々の友との時間を邪魔しないよう、オデルは同席しなかった。
モナーレはすでにふたりの娘を持っていて、子育ての話をジュリエットに聞かせてくれた。
ジュリエットはモナーレのアドバイスをありがたく聞き、無表情でそうは見えないが、モナーレのお喋りを楽しんでいた。
モナーレもジュリエットの無表情はわかっているし、頷く仕草から楽しんでいるかもしれないと思っていた。
最初の子供の話が終わると今度は二人目の話になり、モナーレは二人目を妊娠する前段階の話をし出した。
女同士なのだからこの手の話に気使いはいらない。出産の痛みが鮮明なうちは妊娠したくないモナーレと、それを思いやってくれない夫とケンカをした話をしたところで、ジュリエットが口を開いた。
「すぐ、というのは。どのくらいすぐに再開したのか聞くのは、あなたに失礼になってしまうかしら……」
モナーレは驚いた。顔は無表情で声に抑揚もなかったが、ジュリエットが戸惑っているように感じたのだ。
「失礼なんて思わないわ。こんな話ができるのも女友達だからよ。わたしの話があなたに役立ったら嬉しいわ」
モナーレはジュリエットがオデルとの夜をいつ再開できるのか悩んでいるのだと思った。
同じ悩みは産後の女性なら誰でも一度は持つものだろう。
そこでまずは包み隠さず自分の話をした。次にジュリエットの現状を聞くと、ジュリエットはつわりで寝室を別にして以来、同衾に戻った現在も出来ないでいると言った。
少し声が小さかったのは、こんな話に慣れていないせいだろう。
「ジュリエットは、したいと思っているのよね? それを伝えた?」
「オデルがわたしを欲しくないかもしれないわ……」
ジュリエットの言葉にモナーレは、ジュリエットがオデルに求められないことに怯えているのではないかと思った。
オデルに求めたいが、オデルが欲していなかったらと思うと求める勇気すら出せずにいるのだ。
更にジュリエットには問題もあった。子供がすぐそばで寝ていることだ。
いつ起きるかわからない子供がそばにいては思う存分愛し合うのは難しい。
モナーレはジュリエットの手を握ってにっこりと笑った。今ジュリエットが思い悩んでいることをモナーレは解決できるのだ。
というのも。モナーレはオデルがジュリエットを愛していることを疑っていなかった。
ふたりが並ぶ姿がパズルのピースのようにしっくりして見えるからだ。愛し合わないふたりでは絶対にそんな風に見えるはずがない。
オデルがジュリエットを愛しているのなら話しは簡単だ。愛する妻を抱きたくない男はいない。
それに思う存分愛し合える場所も、モナーレは提供できる。
ルイリード伯爵の大叔父が以前住んでいて、今はモナーレが茶会をしたり子供たちの遊び場として使ったりしている屋敷がある。
モナーレは夕食に招待するからそこを使うといいとジュリエットに言った。部屋の支度も食事の用意もしておくから、誰にも邪魔されずにそこですごしたらいいと。
「侯爵はあなたが求めたら、それ以上で返してくれるはずよ」
モナーレはジュリエットの背中を押したのだ。
ジュリエットは腹のあたりまでボタンを外し、コルセットが露わになった状態でもう後戻りは出来ないが、動かないオデルが目の前にいて呼吸が苦しくなっていた。
オデルの視線を痛いほど感じる。堪らず俯いてしまって気付くのが遅れた。オデルが大股でジュリエットのすぐ目の前まで来ていて、それに気が付いた時には、開いたドレスに手を入れられ両手で腰を撫でられた。
息を呑んで見上げるとオデルがジュリエットを見下ろし、腰を挟んで掴んでいる手の親指が腹の上に円を描いた。
その指のせいで、ジュリエットのへその下がギュウっと収縮されるような感覚を起こし、中心が熱くなるのを感じた。
オデルの胸が上下に揺れている。ジュリエットの額に額をつけ、鼻が鼻をこする時にかかる息が荒くなっていることに煽られ、ジュリエットは首を伸ばしてオデルのやわらかなくちびるに自身のくちびるを重ねた。
オデルからもくちづけを返されたことに勇気づけられたジュリエットがオデルの唇を舌でなめてなぞると、オデルがそれを追いかけて口に含み、吸って絡める。
深いくちづけで開いたジュリエットの唇から零れた唾液が胸まで流れて垂れるそのわずかな刺激でも背中がゾクゾクと震えた。
もう欲しくてたまらなかったジュリエットだが、オデルの胸に手を当て押して、身体を離した。
ジュリエットは今日、オデルに伝えたくてここに来た。
自分がどれほどオデルを求めているのか。オデルを喜ばせたいと思っているのかを。
あんな官能的なくちづけを返してくれるなら、オデルもジュリエットを欲してくれているのは思い違いではないはずだ。
ジュリエットが抜け出たオデルの腕が宙に浮いたまま戻るのを待っているようだったが、ジュリエットはそのまま二歩三歩と後ずさる。
ボタンをもう数個外すと、ドレスが足元に滑り落ちた。
ドレスの抜け殻から出て更に後ずさり、これも脱ぎ着しやすいように選んだ前開きのコルセットの紐をほどいて緩め脱ぎ捨てた。
靴を脱いで再び後ずさると、残りはシュミーズとドロワーズだけになった。
オデルの喉が動き、ゴクリと聞こえて来そうだった。
グリーンの瞳が熱を帯びて視線を外さない。ジュリエットはあまりの熱さにのぼせそうになりながら肩に手をかけ、腕を撫でるようにしてシュミーズを脱ぐと、目の前ではオデルがジャケットを脱ぎシャツのボタンを外し始めた。
ジュリエットは恥ずかしさで止まりそうな手に力を込めて、身に着けている最後の残りのドロワーズに手を掛けて降ろし脱いだ。
裸になった姿で向き合うと、オデルは足先から頭まで視線をなぞらせた。
普段なにも映し出さないオデルの瞳に獲物を見る猛禽のような獰猛さが現れ、ジュリエットは身震いした。
オデルがシャツのボタンを全て開け逞しい胸を覗かせながらジュリエットの前まで進むと、ジュリエットはオデルの首に手を回してから滑らせ胸から腹を手のひらで肌の感触を確かめるように撫で下げ、ズボンのウエストに指を掛けた。
オデルの胸が息を吸い込んで大きく膨れた。ジュリエットは手を止めなかった。
ゆっくりとボタンを外しながら指に当たる感触で熱の塊が膨れ上がっているのがわかる。
オデルの顔を見上げるとわずかに頬と鼻に赤みが差し、獰猛だった瞳が溶け始めている。
ジュリエットは嬉しかった。自分でこうなっているのだということが堪らなく嬉しかった。
全てのボタンを外して寛がせると、ジュリエットはそれを手で包んで、身体を落とし跪いた。
この手の中に脈打つ硬直した熱の塊を愛おしいと思うことが出来るとは、ガロポロ家に来たばかりの頃は思いもしなかったことだ。
軽くしごいて、雫がにじみ出た先端に唇をつけると、オデルの手がジュリエットの顎を持ち上げた。見下ろすオデルと視線が絡む。
「そんなことは、しなくていい」
声は擦れて瞳は更に溶けている。顎を持ち上げる手に力は入っていない。
ジュリエットはオデルを見つめたまま口を開いた。オデルが本当は望んでいることをするために。
そのまま握りしめたそれを口に含むと、オデルの口から甘いため息が零れた。目を閉じて眉間に皺を寄せて、堪えるような表情を浮かべている。
オデルが感じてくれている。ジュリエットのすることで快感を得てくれている。
それがわかればジュリエットは更に勇気を出せる。
飲み込むように含みを進めると、ジュリエットの顎に触れていたオデルの手がビクリと震え、ジュリエットは出来る限りの精一杯で口を開いた。
熱の塊は大きく硬く、必死に飲み込んでも半分までも口に含み切らなかった。
歯を当てないよう慎重に舌と唇で扱くと、オデルの空いていた片方の手がジュリエットの髪を掴んで軽く引いた。
「ああ、ジュリエット。オレを許してくれ……」
熱を帯び甘溶けしている瞳が苦し気にジュリエットを見下ろす。
オデルはジュリエットがここまで自分を求めていることに、ここに来るまで気が付かなかったことを後悔した、のかもしれない。
ジュリエットを気遣い、ジュリエットを思って我慢したことは間違いだったと許しを乞うてくれているのだとしたら、それは必要のないことだ。
許すも許さないもない。だってジュリエットは今心から喜びを感じている。
ジュリエットによってこれほど昂ってくれているという喜びを。
言葉にして言いたかったが、ジュリエットが出来たのは首を振ることだけだった。
それの返事をするようにオデルが頷いて身体を屈め、立膝のジュリエットの太ももに腕を回し、腰に手を添えてそのまま身体を持ち上げた。
抱き上げられたジュリエットはオデルの首に手を回して襟足を撫で、もう片手を髪を梳くように頭にはわせると頬に鼻を擦り付けた。
オデルも頬を摺り寄せ、ジュリエットの肩まで滑らせるとか細い肩口を食んだ。
「今日はあなたに尽くしたいのです……」
あなたの為にならどれほどの事でも出来ると、あなたが欲しくてこれほどの事もしてしまうのだと伝えたかった。
オデルはジュリエットを抱えたまま無言でダイニングを出てその先にあるリビングのソファーまで運んだ。
ジュリエットを横たわらせ自分のズボンを脱ぐと、そのままジュリエットの上に乗った。
久しぶりに全身の素肌がぴったりと重なり、オデルの重みと熱、鼓動がジュリエットの身体にしみ込んでくるのを感じた。
すると突然、前触れもなくオデルの熱の塊がジュリエットの中心に宛がわれたと思うと、一気に奥まで穿たれた。
呼吸を止められ、ジュリエットの身体が仰け反って戦慄いた。
すでに掻き立てられた欲情によって充分に潤っていたジュリエットの入り口は、久しぶりの侵入にもかかわらず突き上げを抵抗なく受け入れられた。
オデルは仰け反ったジュリエットの身体を両腕で強く抱きしめ、そのまま最奥に再び突き上げた。
「ああっ!」
頭の芯が痺れ、躊躇することも出来ず叫ぶような喘ぎが上がる。
ジュリエットの耳の裏にオデルの鼻が擦り付けられ、ジュリエットは首筋に埋まるオデルの頭を無意識で抱きしめ髪を握った。
ジュリエットはこのまま快感に達してしまいそうだったが、オデルのそれがジュリエットから引き抜かれた。
潤んだ瞳で起き上がったオデルを見つめると、オデルが額を寄せて来る。
首の後ろに回された腕と顎を擽る指、もどかしいほどゆっくりとくちづけをされ痺れた思考に霞がかかっていく。
オデルはくちびるを軽く擦り合わせ、食むようにしてついばみ、舌を絡めてジュリエットを味わい始めた。
ゆっくりと煮詰めるように溶かされ甘いため息が零れると、鼻に鼻を摺り寄せながらオデルが切実な声で囁いた。
「ジュリエット、君に何度でも跪くことが出来る男から尽くす喜びを奪わないでくれ」
尽くしたいと言ったジュリエットへの返事だろうか。
オデルは再びジュリエットにくちづけを繰り返し、素肌の感触を確かめるように首から肩を撫で、胸のふくらみまで滑らせて包み込むように乳房を掬い上げた。
先端を親指が転がし、滑り降りた唇が含み舌が刺激すると、すでに反応していたものが硬く尖って立ち上がる。
「はっ……」
オデルの唇は更に下へ。ゆっくりとゆっくりと、ジュリエットという甘味を素肌に舌を這わせながら丁寧に味わっていく。
もどかしすぎる進みはジュリエットの身体を捩らせ、強く欲しい、早く欲しいと懇願する瞳は濡れている。
足先まで滑らせたオデルのくちびるがジュリエットの中心まで戻り、太ももの内側を擽っていた指がオデルの硬直を受け入れた滑りの中に入れられ柔壁を擦りながら期待を高め、舌先は入り口の上にある官能のスイッチを吸った。
「んんっ!」
焦らされていた身体にまたしても急な刺激で、ジュリエットの足がつっぱり、痙攣した。
到達は簡単だった。あっけないほどの短い刺激だけでジュリエットはあられもない叫びをあげて達した。
その余韻をまどろむ間もなくオデルはその硬さをほんの少しも変えていない熱の塊をジュリエットの中に突き立てた。
達した数秒後に再びの強烈な到達がジュリエットに襲い掛かり、もう思考は遥か彼方に飛んでいく。
オデルは繋がったそのままでくちつけを繰り返し、ジュリエットの覚醒を待つように動かなかった。
ジュリエットの覚束ない瞳がオデルの瞳に焦点が合うと、オデルの腰がゆっくりと揺れて動き注挿が始まるり、せっかく覚醒した思考に再び霞がかかってくる。
オデルが緩急をつけて官能の波を作るので、ジュリエットは心も身体も翻弄されていた。
ゆっくりと舐られるともどかしく、刺激は急速で強烈で深い。
オデルはどれほどジュリエットに官能を教え込むのだろうか。
このまま翻弄され続けては、自分がおかしくなってしまうのではないかとジュリエットは思った。
そうなってもかまわなかった。
もうすでにオデルの愛のなかで溺れているというのに、それよりも深いところまで連れて行く気なのだとしたら、そんな幸せはあるだろうか。
ジュリエットの喜びも幸せも、全てはオデルがもたらしてくれている。
官能も、ラファエルも、ガロポロ邸のすべても。
だからオデルに連れて行かれるのなら、そこがどこだろうとひとつもかまうことなどないのだ。
オデルとジュリエットは絡み合いながら身体を繋ぐ喜びを貪った。
ソファーの上で、下で。ダイニングのテーブルの上で。ロビーの階段で。
モナーレが用意しておいてくれたワインとタルトを暖炉の前に広げると、グラスを持ち上げたオデルがジュリエットの口元に差し出すので、ジュリエットは唇を寄せて受け止め飲み干した。
足の間で身体を包まれオデルの胸に背中を預け口元に運ばれるタルトを齧ると、オデルがジュリエットの顎を擽る。
後ろから抱かれたまま頬に鼻が押し付けられる仕草が愛おしく、オデルの頬に手を添えると手首を掴まれ手のひらにくちづけをされた。
これが全て無表情で行われていることを信じられるだろうか。
ひとつの微笑みもないのだから、零れる笑い声などあるはずもない。
だか、ジュリエットには見えている。オデルの瞳に映る表情を。愛しいと伝えてくれているのを感じている。
「どうしてこんなにひとを愛することができるのかとずっと考えていた」
「どうしてかわかりましたか?」
「君だからだジュリエット。君はオレにはもったいないほどのひとだ」
ジュリエットは知っている。オデルがどれほどロマンチストかという事を。
息子に天使の名前をつけた時に、使用人たちはオデルがロマンチストだと驚いたが、ジュリエットに驚きはなかった。
オデルは喋らない。普段必要でないことは、必要なことすらほとんど喋らない。
しかしジュリエットは知っている、オデルが必要以上のことを喋るということを。
愛を言葉にするとき、普段の無口からは想像出来ない饒舌でジュリエットを溶かす。
自分にその言葉が相応しいのかと思うほど、オデルはジュリエットが特別な女性だと伝えてくれる。
「君がオレを完全にする、ジュリエット」
「あなたの愛がわたしの人生を輝かせます、オデル」
ジュリエットも、存外ロマンチストだ。
これはマリリンでも知らないことなので、他の使用人たちも気付くことは難しいだろう。
それも仕方がない。
ふたりは本当に無表情で無口で不愛想で、そっくりな夫婦だから。
ジュリエットはオデルの腕の中でカーテンの隙間から入る光をぼんやりと見つめた。
夜が明けている。いつの間にか疲れて眠ってしまったのだ。
カウチの上で絡まるふたりはまだ服を着ていない。昼にはルイリード家の馬車が迎えに来てしまう。その前に支度をしなくてはならないことはわかっているが、まだ暫く身体は動きそうにない。
ラファエルのことも気にかかっているし使用人には面倒をかけてしまったが、オデルとの愛しい時間をまた暫く持てない事を考えると、ジュリエットに絡まるオデルから抜け出せないでいた。
しかしそんなことを残念に思うことはない。
神のみぞ知ることだが、もうすでにオデルは屋敷近くに別邸を購入しようと決めていた。
屋敷でもジュリエットを抱いていいのだとわかったが、誰の気配もない場所で思う存分にジュリエットを堪能し喜ばせるという楽しみを知ってしまったからには、即決も仕方がないことだ。
一方。主人夫婦が激甘の夜を過ごしていることなど知る由もないガロポロ家の使用人たちだが。
実は大騒動の朝を迎え、この一大事に主人夫婦の帰りを今か今かと右往左往して待っていた。
「なんでこんな時に旦那様と奥様は!」
「どうする? ルイリード邸にお知らせに行くべきかしら?」
「いや……それはどうかな……」
「お留守のときにこんなこと……」
「とにかく。今は待つしかないだろう」
普段は冷静な執事であるリーブスも待つしかないと言いながら、玄関を開けたり締めたりしているのだからただ事ではなさそうだ。
「こんなことが起こるなんて」
「夢が叶うって、あるんだよな」
「「「「「ラファエル様が笑うなんて!!!!!」」」」」
はいはい。それはただ事ではない……。
きっとオデルもジュリエットも喜ぶだろう。
幸せそうに。そうは見えない無表情で。
向かい合ったジュリエットが後れ毛一本も零れていないまとめ髪から櫛を引き抜き、つややかな黒髪が弾むように落ちた。
今日のジュリエットのドレスは前面にボタンのある前開き型だ。このドレスを着て行くことは決めていた。マリリンがいなくても自分で脱ぎ着出来るから。
無表情のままジュリエットを見つめるオデルを見つめ返しながら、ジュリエットは胸元のボタンを外し始めた。
こんなことは下品だろうか。どうかそんな風に思わないでほしい。
躊躇しそうな手が僅かにふるえたが、それでも止めることはなかった。
話はモナーレがラファエルに逢いに来た日に遡る。
ラファエルにと祝いの品を渡しオデルにも祝いを伝えた後、モナーレとジュリエットはサロンで向かい合った。
久々の友との時間を邪魔しないよう、オデルは同席しなかった。
モナーレはすでにふたりの娘を持っていて、子育ての話をジュリエットに聞かせてくれた。
ジュリエットはモナーレのアドバイスをありがたく聞き、無表情でそうは見えないが、モナーレのお喋りを楽しんでいた。
モナーレもジュリエットの無表情はわかっているし、頷く仕草から楽しんでいるかもしれないと思っていた。
最初の子供の話が終わると今度は二人目の話になり、モナーレは二人目を妊娠する前段階の話をし出した。
女同士なのだからこの手の話に気使いはいらない。出産の痛みが鮮明なうちは妊娠したくないモナーレと、それを思いやってくれない夫とケンカをした話をしたところで、ジュリエットが口を開いた。
「すぐ、というのは。どのくらいすぐに再開したのか聞くのは、あなたに失礼になってしまうかしら……」
モナーレは驚いた。顔は無表情で声に抑揚もなかったが、ジュリエットが戸惑っているように感じたのだ。
「失礼なんて思わないわ。こんな話ができるのも女友達だからよ。わたしの話があなたに役立ったら嬉しいわ」
モナーレはジュリエットがオデルとの夜をいつ再開できるのか悩んでいるのだと思った。
同じ悩みは産後の女性なら誰でも一度は持つものだろう。
そこでまずは包み隠さず自分の話をした。次にジュリエットの現状を聞くと、ジュリエットはつわりで寝室を別にして以来、同衾に戻った現在も出来ないでいると言った。
少し声が小さかったのは、こんな話に慣れていないせいだろう。
「ジュリエットは、したいと思っているのよね? それを伝えた?」
「オデルがわたしを欲しくないかもしれないわ……」
ジュリエットの言葉にモナーレは、ジュリエットがオデルに求められないことに怯えているのではないかと思った。
オデルに求めたいが、オデルが欲していなかったらと思うと求める勇気すら出せずにいるのだ。
更にジュリエットには問題もあった。子供がすぐそばで寝ていることだ。
いつ起きるかわからない子供がそばにいては思う存分愛し合うのは難しい。
モナーレはジュリエットの手を握ってにっこりと笑った。今ジュリエットが思い悩んでいることをモナーレは解決できるのだ。
というのも。モナーレはオデルがジュリエットを愛していることを疑っていなかった。
ふたりが並ぶ姿がパズルのピースのようにしっくりして見えるからだ。愛し合わないふたりでは絶対にそんな風に見えるはずがない。
オデルがジュリエットを愛しているのなら話しは簡単だ。愛する妻を抱きたくない男はいない。
それに思う存分愛し合える場所も、モナーレは提供できる。
ルイリード伯爵の大叔父が以前住んでいて、今はモナーレが茶会をしたり子供たちの遊び場として使ったりしている屋敷がある。
モナーレは夕食に招待するからそこを使うといいとジュリエットに言った。部屋の支度も食事の用意もしておくから、誰にも邪魔されずにそこですごしたらいいと。
「侯爵はあなたが求めたら、それ以上で返してくれるはずよ」
モナーレはジュリエットの背中を押したのだ。
ジュリエットは腹のあたりまでボタンを外し、コルセットが露わになった状態でもう後戻りは出来ないが、動かないオデルが目の前にいて呼吸が苦しくなっていた。
オデルの視線を痛いほど感じる。堪らず俯いてしまって気付くのが遅れた。オデルが大股でジュリエットのすぐ目の前まで来ていて、それに気が付いた時には、開いたドレスに手を入れられ両手で腰を撫でられた。
息を呑んで見上げるとオデルがジュリエットを見下ろし、腰を挟んで掴んでいる手の親指が腹の上に円を描いた。
その指のせいで、ジュリエットのへその下がギュウっと収縮されるような感覚を起こし、中心が熱くなるのを感じた。
オデルの胸が上下に揺れている。ジュリエットの額に額をつけ、鼻が鼻をこする時にかかる息が荒くなっていることに煽られ、ジュリエットは首を伸ばしてオデルのやわらかなくちびるに自身のくちびるを重ねた。
オデルからもくちづけを返されたことに勇気づけられたジュリエットがオデルの唇を舌でなめてなぞると、オデルがそれを追いかけて口に含み、吸って絡める。
深いくちづけで開いたジュリエットの唇から零れた唾液が胸まで流れて垂れるそのわずかな刺激でも背中がゾクゾクと震えた。
もう欲しくてたまらなかったジュリエットだが、オデルの胸に手を当て押して、身体を離した。
ジュリエットは今日、オデルに伝えたくてここに来た。
自分がどれほどオデルを求めているのか。オデルを喜ばせたいと思っているのかを。
あんな官能的なくちづけを返してくれるなら、オデルもジュリエットを欲してくれているのは思い違いではないはずだ。
ジュリエットが抜け出たオデルの腕が宙に浮いたまま戻るのを待っているようだったが、ジュリエットはそのまま二歩三歩と後ずさる。
ボタンをもう数個外すと、ドレスが足元に滑り落ちた。
ドレスの抜け殻から出て更に後ずさり、これも脱ぎ着しやすいように選んだ前開きのコルセットの紐をほどいて緩め脱ぎ捨てた。
靴を脱いで再び後ずさると、残りはシュミーズとドロワーズだけになった。
オデルの喉が動き、ゴクリと聞こえて来そうだった。
グリーンの瞳が熱を帯びて視線を外さない。ジュリエットはあまりの熱さにのぼせそうになりながら肩に手をかけ、腕を撫でるようにしてシュミーズを脱ぐと、目の前ではオデルがジャケットを脱ぎシャツのボタンを外し始めた。
ジュリエットは恥ずかしさで止まりそうな手に力を込めて、身に着けている最後の残りのドロワーズに手を掛けて降ろし脱いだ。
裸になった姿で向き合うと、オデルは足先から頭まで視線をなぞらせた。
普段なにも映し出さないオデルの瞳に獲物を見る猛禽のような獰猛さが現れ、ジュリエットは身震いした。
オデルがシャツのボタンを全て開け逞しい胸を覗かせながらジュリエットの前まで進むと、ジュリエットはオデルの首に手を回してから滑らせ胸から腹を手のひらで肌の感触を確かめるように撫で下げ、ズボンのウエストに指を掛けた。
オデルの胸が息を吸い込んで大きく膨れた。ジュリエットは手を止めなかった。
ゆっくりとボタンを外しながら指に当たる感触で熱の塊が膨れ上がっているのがわかる。
オデルの顔を見上げるとわずかに頬と鼻に赤みが差し、獰猛だった瞳が溶け始めている。
ジュリエットは嬉しかった。自分でこうなっているのだということが堪らなく嬉しかった。
全てのボタンを外して寛がせると、ジュリエットはそれを手で包んで、身体を落とし跪いた。
この手の中に脈打つ硬直した熱の塊を愛おしいと思うことが出来るとは、ガロポロ家に来たばかりの頃は思いもしなかったことだ。
軽くしごいて、雫がにじみ出た先端に唇をつけると、オデルの手がジュリエットの顎を持ち上げた。見下ろすオデルと視線が絡む。
「そんなことは、しなくていい」
声は擦れて瞳は更に溶けている。顎を持ち上げる手に力は入っていない。
ジュリエットはオデルを見つめたまま口を開いた。オデルが本当は望んでいることをするために。
そのまま握りしめたそれを口に含むと、オデルの口から甘いため息が零れた。目を閉じて眉間に皺を寄せて、堪えるような表情を浮かべている。
オデルが感じてくれている。ジュリエットのすることで快感を得てくれている。
それがわかればジュリエットは更に勇気を出せる。
飲み込むように含みを進めると、ジュリエットの顎に触れていたオデルの手がビクリと震え、ジュリエットは出来る限りの精一杯で口を開いた。
熱の塊は大きく硬く、必死に飲み込んでも半分までも口に含み切らなかった。
歯を当てないよう慎重に舌と唇で扱くと、オデルの空いていた片方の手がジュリエットの髪を掴んで軽く引いた。
「ああ、ジュリエット。オレを許してくれ……」
熱を帯び甘溶けしている瞳が苦し気にジュリエットを見下ろす。
オデルはジュリエットがここまで自分を求めていることに、ここに来るまで気が付かなかったことを後悔した、のかもしれない。
ジュリエットを気遣い、ジュリエットを思って我慢したことは間違いだったと許しを乞うてくれているのだとしたら、それは必要のないことだ。
許すも許さないもない。だってジュリエットは今心から喜びを感じている。
ジュリエットによってこれほど昂ってくれているという喜びを。
言葉にして言いたかったが、ジュリエットが出来たのは首を振ることだけだった。
それの返事をするようにオデルが頷いて身体を屈め、立膝のジュリエットの太ももに腕を回し、腰に手を添えてそのまま身体を持ち上げた。
抱き上げられたジュリエットはオデルの首に手を回して襟足を撫で、もう片手を髪を梳くように頭にはわせると頬に鼻を擦り付けた。
オデルも頬を摺り寄せ、ジュリエットの肩まで滑らせるとか細い肩口を食んだ。
「今日はあなたに尽くしたいのです……」
あなたの為にならどれほどの事でも出来ると、あなたが欲しくてこれほどの事もしてしまうのだと伝えたかった。
オデルはジュリエットを抱えたまま無言でダイニングを出てその先にあるリビングのソファーまで運んだ。
ジュリエットを横たわらせ自分のズボンを脱ぐと、そのままジュリエットの上に乗った。
久しぶりに全身の素肌がぴったりと重なり、オデルの重みと熱、鼓動がジュリエットの身体にしみ込んでくるのを感じた。
すると突然、前触れもなくオデルの熱の塊がジュリエットの中心に宛がわれたと思うと、一気に奥まで穿たれた。
呼吸を止められ、ジュリエットの身体が仰け反って戦慄いた。
すでに掻き立てられた欲情によって充分に潤っていたジュリエットの入り口は、久しぶりの侵入にもかかわらず突き上げを抵抗なく受け入れられた。
オデルは仰け反ったジュリエットの身体を両腕で強く抱きしめ、そのまま最奥に再び突き上げた。
「ああっ!」
頭の芯が痺れ、躊躇することも出来ず叫ぶような喘ぎが上がる。
ジュリエットの耳の裏にオデルの鼻が擦り付けられ、ジュリエットは首筋に埋まるオデルの頭を無意識で抱きしめ髪を握った。
ジュリエットはこのまま快感に達してしまいそうだったが、オデルのそれがジュリエットから引き抜かれた。
潤んだ瞳で起き上がったオデルを見つめると、オデルが額を寄せて来る。
首の後ろに回された腕と顎を擽る指、もどかしいほどゆっくりとくちづけをされ痺れた思考に霞がかかっていく。
オデルはくちびるを軽く擦り合わせ、食むようにしてついばみ、舌を絡めてジュリエットを味わい始めた。
ゆっくりと煮詰めるように溶かされ甘いため息が零れると、鼻に鼻を摺り寄せながらオデルが切実な声で囁いた。
「ジュリエット、君に何度でも跪くことが出来る男から尽くす喜びを奪わないでくれ」
尽くしたいと言ったジュリエットへの返事だろうか。
オデルは再びジュリエットにくちづけを繰り返し、素肌の感触を確かめるように首から肩を撫で、胸のふくらみまで滑らせて包み込むように乳房を掬い上げた。
先端を親指が転がし、滑り降りた唇が含み舌が刺激すると、すでに反応していたものが硬く尖って立ち上がる。
「はっ……」
オデルの唇は更に下へ。ゆっくりとゆっくりと、ジュリエットという甘味を素肌に舌を這わせながら丁寧に味わっていく。
もどかしすぎる進みはジュリエットの身体を捩らせ、強く欲しい、早く欲しいと懇願する瞳は濡れている。
足先まで滑らせたオデルのくちびるがジュリエットの中心まで戻り、太ももの内側を擽っていた指がオデルの硬直を受け入れた滑りの中に入れられ柔壁を擦りながら期待を高め、舌先は入り口の上にある官能のスイッチを吸った。
「んんっ!」
焦らされていた身体にまたしても急な刺激で、ジュリエットの足がつっぱり、痙攣した。
到達は簡単だった。あっけないほどの短い刺激だけでジュリエットはあられもない叫びをあげて達した。
その余韻をまどろむ間もなくオデルはその硬さをほんの少しも変えていない熱の塊をジュリエットの中に突き立てた。
達した数秒後に再びの強烈な到達がジュリエットに襲い掛かり、もう思考は遥か彼方に飛んでいく。
オデルは繋がったそのままでくちつけを繰り返し、ジュリエットの覚醒を待つように動かなかった。
ジュリエットの覚束ない瞳がオデルの瞳に焦点が合うと、オデルの腰がゆっくりと揺れて動き注挿が始まるり、せっかく覚醒した思考に再び霞がかかってくる。
オデルが緩急をつけて官能の波を作るので、ジュリエットは心も身体も翻弄されていた。
ゆっくりと舐られるともどかしく、刺激は急速で強烈で深い。
オデルはどれほどジュリエットに官能を教え込むのだろうか。
このまま翻弄され続けては、自分がおかしくなってしまうのではないかとジュリエットは思った。
そうなってもかまわなかった。
もうすでにオデルの愛のなかで溺れているというのに、それよりも深いところまで連れて行く気なのだとしたら、そんな幸せはあるだろうか。
ジュリエットの喜びも幸せも、全てはオデルがもたらしてくれている。
官能も、ラファエルも、ガロポロ邸のすべても。
だからオデルに連れて行かれるのなら、そこがどこだろうとひとつもかまうことなどないのだ。
オデルとジュリエットは絡み合いながら身体を繋ぐ喜びを貪った。
ソファーの上で、下で。ダイニングのテーブルの上で。ロビーの階段で。
モナーレが用意しておいてくれたワインとタルトを暖炉の前に広げると、グラスを持ち上げたオデルがジュリエットの口元に差し出すので、ジュリエットは唇を寄せて受け止め飲み干した。
足の間で身体を包まれオデルの胸に背中を預け口元に運ばれるタルトを齧ると、オデルがジュリエットの顎を擽る。
後ろから抱かれたまま頬に鼻が押し付けられる仕草が愛おしく、オデルの頬に手を添えると手首を掴まれ手のひらにくちづけをされた。
これが全て無表情で行われていることを信じられるだろうか。
ひとつの微笑みもないのだから、零れる笑い声などあるはずもない。
だか、ジュリエットには見えている。オデルの瞳に映る表情を。愛しいと伝えてくれているのを感じている。
「どうしてこんなにひとを愛することができるのかとずっと考えていた」
「どうしてかわかりましたか?」
「君だからだジュリエット。君はオレにはもったいないほどのひとだ」
ジュリエットは知っている。オデルがどれほどロマンチストかという事を。
息子に天使の名前をつけた時に、使用人たちはオデルがロマンチストだと驚いたが、ジュリエットに驚きはなかった。
オデルは喋らない。普段必要でないことは、必要なことすらほとんど喋らない。
しかしジュリエットは知っている、オデルが必要以上のことを喋るということを。
愛を言葉にするとき、普段の無口からは想像出来ない饒舌でジュリエットを溶かす。
自分にその言葉が相応しいのかと思うほど、オデルはジュリエットが特別な女性だと伝えてくれる。
「君がオレを完全にする、ジュリエット」
「あなたの愛がわたしの人生を輝かせます、オデル」
ジュリエットも、存外ロマンチストだ。
これはマリリンでも知らないことなので、他の使用人たちも気付くことは難しいだろう。
それも仕方がない。
ふたりは本当に無表情で無口で不愛想で、そっくりな夫婦だから。
ジュリエットはオデルの腕の中でカーテンの隙間から入る光をぼんやりと見つめた。
夜が明けている。いつの間にか疲れて眠ってしまったのだ。
カウチの上で絡まるふたりはまだ服を着ていない。昼にはルイリード家の馬車が迎えに来てしまう。その前に支度をしなくてはならないことはわかっているが、まだ暫く身体は動きそうにない。
ラファエルのことも気にかかっているし使用人には面倒をかけてしまったが、オデルとの愛しい時間をまた暫く持てない事を考えると、ジュリエットに絡まるオデルから抜け出せないでいた。
しかしそんなことを残念に思うことはない。
神のみぞ知ることだが、もうすでにオデルは屋敷近くに別邸を購入しようと決めていた。
屋敷でもジュリエットを抱いていいのだとわかったが、誰の気配もない場所で思う存分にジュリエットを堪能し喜ばせるという楽しみを知ってしまったからには、即決も仕方がないことだ。
一方。主人夫婦が激甘の夜を過ごしていることなど知る由もないガロポロ家の使用人たちだが。
実は大騒動の朝を迎え、この一大事に主人夫婦の帰りを今か今かと右往左往して待っていた。
「なんでこんな時に旦那様と奥様は!」
「どうする? ルイリード邸にお知らせに行くべきかしら?」
「いや……それはどうかな……」
「お留守のときにこんなこと……」
「とにかく。今は待つしかないだろう」
普段は冷静な執事であるリーブスも待つしかないと言いながら、玄関を開けたり締めたりしているのだからただ事ではなさそうだ。
「こんなことが起こるなんて」
「夢が叶うって、あるんだよな」
「「「「「ラファエル様が笑うなんて!!!!!」」」」」
はいはい。それはただ事ではない……。
きっとオデルもジュリエットも喜ぶだろう。
幸せそうに。そうは見えない無表情で。
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久しぶりに小ろくさんの作品を一気に読ませて頂きました。
ジュリエットもオデルも不愛想・・・でも心は本当に二人とも優しくて。ユニークな主人公に小ろくさんならではの設定に微笑ましくなりました。
それぞれの心の内がわかるside Odellもside Julietもやっぱりそうだったのねぇ~と感じる事が出来て、より二人の事が判ったので良かったです。
小ろくさんの作品に出てくるヒロイン&ヒーローは本当に心根が綺麗な人で読んでいて本当に気持ちが温かくなります。使用人の皆の見守り、つっこみがほんとに微笑ましくて、面白くて、ほんとに家族という感じで素敵だなぁと思います。
使用人食堂は勝手にダウントンアビーの使用人食堂をイメージしてました。(笑)
3年経ってマリリンが更に可愛く素敵なってステファンがどう思うのかも見てみたいし、その頃にはガロポロ家の文字通り天使のラファエルがマリリンにめっちゃなついて、抱き着きながらお嫁さんにするぅ~とか言って、天使のジト目でステファンを牽制してたり・・・わぁ妄想が止まりません!!(笑)
他の方も書いていますが、その頃にはラファエルの妹とか産まれてそうですね。二人のラブラブなシーンもとっても素敵で、より互いを愛おしく思い求める姿も本当にス・テ・キ!幸せになって良かった!!
ガロポロ家!!主一家から使用人迄絆最強!!また時々小話追加してくれたら一読者としては嬉しいです。
いつも素敵なお話をありがとうございます。今回も楽しめました。
栗栖 瀬貴哉さん 読んでくださってありがとうございます!
ヒーローとヒロインの感情描写がないようなこんな話は、あまり読んでもらえないだろうなー…と思っていたんですよー。
少しでも気に入って頂けたのでしたら、本当に嬉しいです!!
自分が読むときの好みで、あまり悪人が出ない話が好きなので、書く時も悪人少な目になってしまいますが、
精進して色んなタイプの登場人物が書けるようにがんばります。
また小話が書けたときには、よかったら読みに来てやってください。
あ!ダウントン、大好きですww 影響されてますねww
番外編が追加されので、久々に最初から一気読み…イイ。何回読んでもガロポロ家+使用人のみんな全員大好き(*´ω`*)
使用人の中に混じって『今、奥様笑った?!』『いや目を細めただけだろ』とかしたい( *´艸`)
ご夫婦の仲もますます良いようで(*´∀人)この調子なら第二第三のお子さんも期待出来そう。
ジュリエットさんに似た女の子が産まれて、笑ったりした日には…求婚者は長蛇の列になるだろうなwww
温泉ジャンボプリンさん、最初から読み直してくださったんですか?
わー♪ 嬉しいでっす!
久々読んでも楽しんで頂けましたでしょうか?
ガロポロ邸のみんなを好きになってくれてありがとうございます。
ガロポロ家皆が愛し過ぎる。
モナーレさんもジュリエットの事を理解してくれる良い人生の先輩で、素敵な心の友(どうしてもジャイアンが出てくる)で、過去の招待の事もも水に流して(断りの手紙は誰か出してたのかな?)繋がりを持ってくれてありがたや。
オデル、吟味しつつ速攻で別宅買って定期的に愛を確かめあうんでしょうね(0゚・∀・)wktk
比翼連理みたいな夫婦で、使用人達も微笑ましい人達ばかりで、読んでいて本当に幸せになります。
タチアオイさん、読んでくださってありがとうございます!
当初本編でもっと活躍する予定だったモナーレなのですが、モナーレしか喋らないのが酷すぎてまるっとカットしたんですよ(笑)
小話で少しですが出番が作れてよかったです。
タチアオイさんのコメントでわたしが幸せなってます♪ありがとうございます♪