上 下
5 / 9

5話 神崎さんとテスト本番

しおりを挟む
 ジィリリリリリリリリリリリリリリリリ!!
 朝を告げる目覚まし時計が今日も一日頑張れよと言わんばかりに部屋に鳴り響く。非常にうるさい。

 あれから2日が経ち、今日はいよいよ
 テスト本番である。
 なのだが……。

「眠い!!」

 ガバッと布団に身体をうずめる。
 眠いのは、今日に限ったことではない。
 僕はとても朝という時間に弱いのだ。
 そんな僕を尻目に、
 日差しがこれでもかというくらいに
 襲ってくる。

 ガチャッ。

「お兄ちゃん!!」

 ガバッ。背中にダイブされる。
 うっ。重たい。

「遅れちゃうよ、早く起きてー!!」

「わ、わかったわかった」

 俺は、妹を抱っこしながら、リビングに
 向かう。宮本舞。僕の8つ下、小学1年生の妹である。まだ甘えん坊の妹だ。

「あら、やっと起きたのね、
 もうご飯できてるわよ」

「へーい」

 今日の朝ごはんは、味噌汁とご飯。
 そして、油の良い匂いが鼻に幸福をもたらしてくれるサンマの塩焼きである。
 これでこそ、日本食。
 と言った感じだ。

「そういえば、昴、最近、放課後遅いけどなにしてるの?」

 あぁ……そうか、すっかり忘れていた。
 今まで学校が終わればすぐに帰宅していた僕が、遅く帰って来ていたら確かに
 不思議に思うのも当然だ。

「いや、まぁ、用事というか、そんな感じだよ」

 説明するのが、難しいのでとりあえず
 用事ということにしといた。

「用事……? なんか怪しいわね、危ないことしてたらお母さん許さないわよ」

「許さないわよー!!」

 妹も、母の真似をし、加勢してきた。
 二人とも疑いの目線を送っている。

「別に悪いことはしてないから大丈夫だって!」

 その後も、終始疑われていたが、
 まぁ、悪いことはしてないということで
 なんとか乗り切った。


 ♢♢♢


「ふぅー朝は大変だったな……あと30分くらいあるし、とりあえず復習しとくか」

 丁度30分経ったくらいだろうか、
 ガラガラガラ。
 担任の先生が入って来た。

「それじゃあテストをはじめるぞー、関係のないものは全部しまえー」

 テスト開始である。

 カリカリと解き始める。

「あれ……? ここどうやるんだっけ」

 まずいな、ど忘れしてしまった。
 ここも復習しておくべきだったか。
 いや……待てよ。ここ確か、花さんに教えた公式の基本形だよな……。ってことは……思い出した!!

「時間だー、テスト集めろー」

「これで、全部終わりっと」

 思ったよりできた気がする。
 花さんとの勉強が役に立った。
 そういえば、花さんは大丈夫だろうか。
 花さんは一つ学年が上なので、
僕らとは違う
 試験の時間で行われると聞いていた。

「なんか気になる……」

 昨日も、勉強を行ったのだが、
 花さんはとても眠そうにしていた。
 まさか……寝坊なんてことはないよな……!?
 あれだけバイトと両立させて、
 頑張っていたのに、寝坊で終わって
 しまったら花さんもショックだろう。

「一応、見に行ってみるか……」

 ♢♢♢

「上級生の教室なんてはじめてきたなぁ」

 えーと花さんのクラスはっと……。
 あれ? そういやクラスなんて聞いたことなかったぞ。まずいな。
 誰かに聞かないと、でも緊張するなぁ。

 とりあえず話を聞いてくれそうな人を探す。
 あの人なんか、良い人そうだな。
 よし、あの人に聞いてみよう。

「あのー突然すみません」

「ん? 君は……? 見ない顔だけど、
 どうかしたの?」

「実は聞きたいことがあって……花さ……いや神崎花さんって知ってますか?」

「勿論、知ってるわ。というより、知らない人なんていないんじゃないかしら。
 それに……あの子は本当に忠告を聞かないんだから……」

 何やらブツブツ言っている。
 何か花さんと、あったのだろうか。

「あら、ごめんなさい。話が途切れてしまったわね。その神崎さんがどうかしたのかしら?」

「いえ、神崎さん、きちんと学校に来てるかなと思って」

「神崎さん、そういえば今日は見てないわね……」

「本当ですか!?」

「え、ええ……」

「ちなみに、2年生はテストは何時から……?」

「そうね、あと、1時間くらいかしら」

 まずい。神崎さんがどこに住んでいるか
 わからないが、それでも今から用意をするならば、時間は限られている。

「あの、神崎さんの携帯の番号知ってたら教えてくれませんか?」

「ええ、いいわよ」

「ありがとうございます!」

 人気の少ない場所に行き、早速、花さんに電話をかける。

 プルルルルルルル。プルルルルルルルル。
 なかなかつながらない。

「頼む、繋がれ!!」

 プルルルルルルルル
 ガチャ。

「出た!! 花さん、テストもうすぐ始まっちゃいますよ早くしてください!」

「んー……ふぁい? だれー?」

 ふぁい!? なんだこの気の抜けたふにゃふにゃ声は!?
 いつもの花さんじゃない!!
 そうだ、これは間違いなく、
 ……寝ぼけている!!

「ふぁいじゃないですよ花さん!! 昴です昴!! テスト始まりますよ!!」

「しゅばる~? しゅばしゅば~」

「何歌ってるんですか! 早く起きてください!!」

「しゅばる……昴……?
 昴……もしかして昴か!?」

「そうですよ!! それよりも試験始まりますって!!」

「まずい!!」

 ダダダダダダダダダダダダッ。

 花さんが急いで用意している姿が
 物音でわかった。

「良かった、花さん気付いてくれて……、
ってええ!?」

 通話を切ろうと、スマホを
 耳から外すと、なんと着替えている花さんの姿がそこにはあった。

「な、なんでテレビ通話に!?」

 しかし、ボタンを押しても元の電話に戻らない。
 まさか、花さん慌ててたから気付かずに押したんじゃ。

「暑いから、下着も着替えるか……」

 そんなことになっているとは知らない
 花さんは、一枚、一枚と脱いでいく。

「ストーッッッップ!!」

 急いで、スマホを強制終了させる。


「危なかった……」

 太ももに続く、事件を起こしてしまうところだった。

「神崎さんいたかしら?」

「おわっ!!」

「あら、ごめんなさい驚かせちゃったわね。
 神崎さんは、無事かしら?」

「今起きたみたいで。まぁ、とりあえず、用意してたんで大丈夫そうですけど」

「本当にあの子は……。ちゃんと指導しなくちゃいけないわね。君はもう帰っても大丈夫よ。テストで疲れてるでしょ?
 神崎さんは、私が引き継いでおくわ」

「わかりました、ありがとうございます」

 たまに優しい人に見えて、怖いっていうパターンの人もいるけど、見かけ通りの良い人だな。この人。
 なんだか、神崎さんと面識あるみたいだし、この人に任せておけば、後は大丈夫かな。

「じゃあ、お先に失礼します」

「ええ、気をつけてね」

後に、花さんから聞いた話によると、
テストには間に合い、そこそこの
点数は稼げたみたいだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妊娠しなかったら夫に捨てられた

杉本凪咲
恋愛
公爵令息との政略結婚。 新しい人生をスタートした私だが、夫は非道な言葉を私に放つ。 しかも、使用人と関係を持っているみたいで……

私を棄てて選んだその妹ですが、継母の私生児なので持参金ないんです。今更ぐだぐだ言われても、私、他人なので。

百谷シカ
恋愛
「やったわ! 私がお姉様に勝てるなんて奇跡よ!!」 妹のパンジーに悪気はない。この子は継母の連れ子。父親が誰かはわからない。 でも、父はそれでいいと思っていた。 母は早くに病死してしまったし、今ここに愛があれば、パンジーの出自は問わないと。 同等の教育、平等の愛。私たちは、血は繋がらずとも、まあ悪くない姉妹だった。 この日までは。 「すまないね、ラモーナ。僕はパンジーを愛してしまったんだ」 婚約者ジェフリーに棄てられた。 父はパンジーの結婚を許した。但し、心を凍らせて。 「どういう事だい!? なぜ持参金が出ないんだよ!!」 「その子はお父様の実子ではないと、あなたも承知の上でしょう?」 「なんて無礼なんだ! 君たち親子は破滅だ!!」 2ヶ月後、私は王立図書館でひとりの男性と出会った。 王様より科学の研究を任された侯爵令息シオドリック・ダッシュウッド博士。 「ラモーナ・スコールズ。私の妻になってほしい」 運命の恋だった。 ================================= (他エブリスタ様に投稿・エブリスタ様にて佳作受賞作品)

夫の幼馴染が毎晩のように遊びにくる

ヘロディア
恋愛
数年前、主人公は結婚した。夫とは大学時代から知り合いで、五年ほど付き合った後に結婚を決めた。 正直結構ラブラブな方だと思っている。喧嘩の一つや二つはあるけれど、仲直りも早いし、お互いの嫌なところも受け入れられるくらいには愛しているつもりだ。 そう、あの女が私の前に立ちはだかるまでは…

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

両隣から喘ぎ声が聞こえてくるので僕らもヤろうということになった

ヘロディア
恋愛
妻と一緒に寝る主人公だったが、変な声を耳にして、目が覚めてしまう。 その声は、隣の家から薄い壁を伝って聞こえてくる喘ぎ声だった。 欲情が刺激された主人公は…

【完結】君は強いひとだから

冬馬亮
恋愛
「大丈夫、君は強いひとだから」 そう言って、あなたはわたくしに別れを告げた。 あなたは、隣でごめんなさいと涙を流す彼女の肩を抱く。 そして言うのだ。 「この子は僕が付いてないと生きていけないから」と。

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

白い結婚の王妃は離縁後に愉快そうに笑う。

三月べに
恋愛
 事実ではない噂に惑わされた新国王と、二年だけの白い結婚が決まってしまい、王妃を務めた令嬢。  離縁を署名する神殿にて、別れられた瞬間。 「やったぁー!!!」  儚げな美しき元王妃は、喜びを爆発させて、両手を上げてクルクルと回った。  元夫となった国王と、嘲笑いに来た貴族達は唖然。  耐え忍んできた元王妃は、全てはただの噂だと、ネタバラシをした。  迎えに来たのは、隣国の魔法使い様。小さなダイアモンドが散りばめられた紺色のバラの花束を差し出して、彼は傅く。 (なろうにも、投稿)

処理中です...