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1話 不良美少女との出会い

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「うーん……そろそろチャイムの鳴る時間かなぁ……」

目一杯の背伸びを行い、伏せ気味であった身体を目覚めさせる。

 キーンコーンカーンコーン。

 よし、授業終了!!
いつもと何一つ変わらない授業を告げるチャイムは、
僕をお昼ご飯へと誘ってくれる。


 僕、山倉高校に通う高校1年生、宮本昴みやもとすばるは、いつものように昼食をとる。僕の席は日当たりの良い窓際。うちのクラスは席をくじ引きではなく、自由に選ぶことが出来る為、毎回、一番後ろの窓際をいつも選ぶ。
 日当たりも良く、なによりも……静かだ。僕は、ひっそりと生きる窓際族まどぎわぞくなのである。
 クラスカーストと呼ばれるものがあるが、僕はそのどれにも位置しない。いやきっとクラスメイトからは、認知もされていない。だが、それで良い。人間関係とは複雑なものだ。
人は関わりを持つからこそ、何かしらの問題が起こるのだ。知られていなければ、変に噂が立つこともないし、疑いをかけられることもない。消極的だと思う人もいるかも知れないが、それで良いのだ。

現状で困っていることはないし、めんどくさい人間関係なんて言語両断!
このまま誰とも関わらずひっそりと
平和に過ごすことが正解だと思っている。

「うーん、美味しい、今回のは良くできてるかも」

 自分で作った弁当を食べながら、ポカポカ陽気に照らされる。この昼食の時間こそ至福の時間……。
そんな陽気に照らされ続けていると、唐突に睡魔が襲ってくるのは言うまでもない。

「うっ、今日みたいな天気の良い日は特に眠く……」

 だが、寝てしまっては……!!
 一番平和な昼休みの時間が短くなってしまう……!!

「耐えろ……耐えるんだ僕!」

 窓際族としてのプライドがなんとか僕の身体を起こそうとするが、睡眠はやはり待ってくれない。

うっ……ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ。
スヤスヤ。


 ♢♢♢


「あのさぁ、そろそろ起きてくんないかな」

 ん……何やら声がする。
 もしかして夢? 僕はいつの間にか寝てしまったのか? 
それにしてもなんだか、机にしては頭がじんわりと暖かい気がするのは気のせいだろうか。
 まるで、もちもちのクッションの上に眠っているみたいだ。

「もしもーし」

 視界がまだぼやけていて良く分からないが、やはり、どこからか声がする。
 僕に話しかけてくる人は、授業中の先生くらいだけれども……。静かなこの感じ。僕にはわかる。この感じは、もう授業はとっくに終わっている。つまりは放課後。
 でも、そんな僕に話しかけてくる人間なんているわけがない。そうか、夢から覚めたつもりがまた夢を見ているんだ。最近、人生がループするアニメを見たけれど、ついに僕の夢まできてしまったか。まぁ、夢ならもう少し眠っとこう。
 再び、眠りにつこうとしたら、頭を軽く叩かれた。

「痛たああああああああああああ」

 実際、ほとんど、痛みはなかったのだが、突然の襲撃に思わず、驚いて条件反射で叫び声をあげてしまう。

「え……?」

 上を見上げると、少し自分なりに
 アレンジさせたのだろう、制服を着た
 サラサラとした金髪の見知らぬ女の子の顔が至近距離に
 あった。色っぽい息遣いが微かに聞こえる。
何故こんなに近いのか。
 寝ぼけた頭の中で、5秒考える。
 そうか……この気持ちのいい寝心地……
この距離感……!
 そうか、わかった! 謎が解けたぞ!
 僕は膝枕されているんだ!!

「いや、なんでええええええええええ!?」

 そう気づくとともに、
 ツッコミを入れる。
 誰だこの子は!? 一体どんな状況だ!?

「やっと起きた」

 彼女は、そう言うと、
 右手でチョップの構えをしていた。チョイチョイと右手をブンブンと
 振っている。きっと、頭を叩いたのは、この右手の
 チョップだろう。いや、そんな事よりもだ。
この状況は大変まずいのでは……!?
 ガバッと、素敵なベッドから起き上がると、
 僕は女の子に尋ねる。

「ど、どちら様ですか?」

 勢い余って、少しどもってしまった。

「あたし? あたしは神崎花かんざきはな。なんか色々有名らしいよ、知らないけど」

 神崎花だって? 僕はなぜかその名前に聞き覚えがあった。
神崎花……どこかで聞いたことがあるような……
 ん……確か。

「まさか……不良だと学園一恐れられている神崎花さん!?」

「学園一って……、あー、あたしそんな風に言われてるから、みんな逃げ出すのか。納得納得」

 この噂は、僕が入学した時からあったはずだが神崎さんは、何故か今頃気付いたかのような反応をしていた。

「その神崎さんがどうしてここに……。神崎さんは、上級生だから、違う階のはずだし、なぜ僕は膝枕を……」

 思い出すと恥ずかしくなる。

「あー……説明しないとダメ?」

 神崎さんは気怠げそうにこっちを
 見つめている。

「して頂けると助かるんですが……」

「うーん、あんたが寝てて……それを起こしたらコロコロ転がってきて太ももに乗ってきたって感じだね」

「すみませんでしたあああああああああああああ!!」

「いや、別に気にしてないからいいよ」

 神崎さんは本当に気にしていない
 ようだった。
 良かった。事案にならなくて済みそうだ。
 学校内の人から訴えられるなんて、
 想像もしたくない。

「でも、僕に用事って一体……」

「あーそうだった、あんた明日、昼、
 屋上にきてよ」

「え……」

 僕の平和な日常は、今日終わりを告げるのかもしれない。




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