66 / 85
開闢の始まり
四大学園対抗戦 予選8
しおりを挟む「まぁ、戦力も温存したいし、いいですよね。ランさん?」
「そうだな。俺らに決める権限なんて元から無いっぽいけどな。」
ガハハと笑いながら既にフェドールと握手しに行っているメイの背中を眺める。
テンニーンも肩を竦めながら笑うが、二人とも解っているのだ。
何よりもメイが仲間想いだという事を。
仲間が怪我をすれば真っ先に駆け寄り治療するし、自分一人の戦いに集中すれば良い物を知らぬ間に仲間全員分の結界を張っていたり。
どんな時でも仲間の為に行動しているのがメイなのだ。
それが彼女の魅力であり、どれ程適当でお気楽な態度でも周りに仲間が集まって来てしまう『カリスマ性』を成している。
「私はメイ。よろしく。」
フェドールの大きな手。
メイの手を軽く包み込める程のサイズだ。
これに腹を抉られたフェイリスはどれ程苦しかっただろうか。
思わず握手にも力が入る。
「ははっ、そんな怖い顔をしなくても大人しくしていれば直ぐに終わらせてあげるよ。」
握り返すフェドールは爽やかな笑みを零す。
メイは心の中で舌打ちをし、踵を返して距離を取る。
ある程度距離が取れ、互いに見合う形になった。
審判の片腕が挙がり、振り下ろされる。
「ハジメッッッ!!!!!」
デミドランには一瞬、メイの姿が霞んで見えた。
しかし、他の生徒や観客からは何も起きていない様に見えているのだろう。
「どうした?特別サービスだ。好きな所に打ち込んでいいぞ?」
両腕を広げ、少女に余裕を見せるフェドール。
それにメイは笑顔を返す。
「もう済んだので早く救護室で治療した方がいいですよ?」
ペキン
「???」
広げた腕の関節が、通常とは反対側へと折れていた。
ペキン
そして膝も本来とは反対側に折れ、フェドールは顔面から地面へ衝突した。
「ハガッ...!?!?ゥガアァアアアアアアアアアッッッ!!!!!」
「し、勝負ありイィイイッッッ!!!!」
迷わず審判が試合を止め、救護班が駆け付ける。
あまりの痛さと驚きで叫びながら身悶えするテカテカマッチョな巨漢を担架で運んでいった。
そして割れんばかりの歓声。
一体何が起きたのかと、得体の知れない少女の実力に観客達のボルテージは最高潮へと上った。
( 全く、趣味が悪いなぁ。)
メイは心の中で悪態をつく。
この世界では普通なのかも知れないが、こんな残虐な行為を褒められるのにメイは慣れていない。
少なくともメイの世界では御法度だろう。
まぁアモス理事長の事だ。
こういった試合でのダメージは軽減される様な仕組みになっているのだろう。
自分でやっといてだが、先程の様な試合では『イップス』になってもおかしくない。
そんなメイの思惑とは裏腹に、アモスは困っていた。
先程から、今年のアンソロポジーの生徒は凄いと周りの貴族一同から持て囃されている。
( ふーむ、あの生徒がイップスにならぬ様に祈ろう。)
勿論、会場内で受けた精神的、肉体的ダメージは軽減される様にはなっているが、メイの様な『例外』仕様では無かったのだ。
せいぜいフェドールの苦痛を和らげる程度。
( トーナメントに『一服』仕込んでおいて良かったわい。)
フォッフォと笑いながら、次の試合を見届けようと姿勢を正した。
『白バラの騎士団』は残り一人。
気の強そうな女性が、怒りの表情を露にしてメイと握手する。
「あなた、覚悟は出来てる?」
「え、なんのことです?」
メイはキョトンとして目をパチクリしているが、勿論演技だ。
気の強そうな女性の身体がプルプルと震える。
「私はシュリ。絶対に貴女を屈服させてみせるわ!」
メイとの握手を捨て去り、短剣を構えて開始の合図を待つ。
一方のメイも、半身で軽く構える。
どう見てもボクサーの構えだが。
審判の腕が挙がり、振り下ろされた。
「ハジメッッッ!!!!!」
0
お気に入りに追加
126
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
旦那様、どうやら御子がお出来になられたようですのね ~アラフォー妻はヤンデレ夫から逃げられない⁉
Hinaki
ファンタジー
「初めまして、私あなたの旦那様の子供を身籠りました」
華奢で可憐な若い女性が共もつけずに一人で訪れた。
彼女の名はサブリーナ。
エアルドレッド帝国四公の一角でもある由緒正しいプレイステッド公爵夫人ヴィヴィアンは余りの事に瞠目してしまうのと同時に彼女の心の奥底で何時かは……と覚悟をしていたのだ。
そうヴィヴィアンの愛する夫は艶やかな漆黒の髪に皇族だけが持つ緋色の瞳をした帝国内でも上位に入るイケメンである。
然もである。
公爵は28歳で青年と大人の色香を併せ持つ何とも微妙なお年頃。
一方妻のヴィヴィアンは取り立てて美人でもなく寧ろ家庭的でぽっちゃりさんな12歳年上の姉さん女房。
趣味は社交ではなく高位貴族にはあるまじき的なお料理だったりする。
そして十人が十人共に声を大にして言うだろう。
「まだまだ若き公爵に相応しいのは結婚をして早五年ともなるのに子も授からぬ年増な妻よりも、若くて可憐で華奢な、何より公爵の子を身籠っているサブリーナこそが相応しい」と。
ある夜遅くに帰ってきた夫の――――と言うよりも最近の夫婦だからこそわかる彼を纏う空気の変化と首筋にある赤の刻印に気づいた妻は、暫くして決意の上行動を起こすのだった。
拗らせ妻と+ヤンデレストーカー気質の夫とのあるお話です。
婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜
平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。
だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。
流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!?
魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。
そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…?
完結済全6話
【短編】冤罪が判明した令嬢は
砂礫レキ
ファンタジー
王太子エルシドの婚約者として有名な公爵令嬢ジュスティーヌ。彼女はある日王太子の姉シルヴィアに冤罪で陥れられた。彼女と二人きりのお茶会、その密室空間の中でシルヴィアは突然フォークで自らを傷つけたのだ。そしてそれをジュスティーヌにやられたと大騒ぎした。ろくな調査もされず自白を強要されたジュスティーヌは実家に幽閉されることになった。彼女を公爵家の恥晒しと憎む父によって地下牢に監禁され暴行を受ける日々。しかしそれは二年後終わりを告げる、第一王女シルヴィアが嘘だと自白したのだ。けれど彼女はジュスティーヌがそれを知る頃には亡くなっていた。王家は醜聞を上書きする為再度ジュスティーヌを王太子の婚約者へ強引に戻す。
そして一年後、王太子とジュスティーヌの結婚式が盛大に行われた。
王子は婚約破棄をし、令嬢は自害したそうです。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「アリシア・レッドライア! おまえとの婚約を破棄する!」
公爵令嬢アリシアは王子の言葉に微笑んだ。「殿下、美しい夢をありがとうございました」そして己の胸にナイフを突き立てた。
血に染まったパーティ会場は、王子にとって一生忘れられない景色となった。冤罪によって婚約者を自害させた愚王として生きていくことになる。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる