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底辺召喚士

入学試験7

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「今度はそっちの事も教えてよ。」



自分の事を話したから、とテンニーンに乞うメイ。
普通では得られない情報を貰った訳だから話さない訳にはいくまい。
ポリポリと頬を掻きながら口を開く。

「私はクロウ王国の王子だという事は話しましたから...何が聞きたいですか?」

「変身についてと、そのペンダントかな!」

テンニーンはやっぱり、という顔をしながら話し始めた。

「分かりました。戦闘中に話した通り、私は『龍人』です。この事実は父上ですらも知らないので内密にお願い致します。龍人についてはデミドラン様の方が詳しいと思いますが、ざっくりと説明しますね。」

龍人とは、遥か昔に古龍と人類が交わった結果生まれた種族。
その種族の存在は、この帝国の上層部か古龍か同じ龍人しか知らない。
この帝国には龍人達による集まりが有り、情報の共有をしている。
そして個々は、世界の秩序を保つ為に働いていて、古龍自体とも交流がある。
世界の秩序を保つというのは、古龍達の目的と同じでお互いに助け合いながら隠密に活動を続けていた。

「ざっとこんな感じですかね?」

『うむ、そうだな。』

デミドランに確認を取り、話を続ける。

「龍人は『龍化』という変身能力を持っていて、極めると龍と同じ姿になることが出来るのです。私は未だ修行の身なので中途半端にしか出来ませんが。」

苦笑いを零しながら、恥ずかしげに片腕だけ龍化して見せた。

「500年前には、デミドラン様も含む五大古龍と呼ばれる先祖達が人類と戦いました。龍化を極めた龍人もその時加勢していたのです。」

「え、ランちゃんって五大古龍なの?」

『ちゃん呼びはやめろって。』

ムスッとしながらメイの頬を叩くトカゲに、テンニーンは苦笑いしか出ない。
自分達の祖である五大古龍をペット感覚で扱うという事がどういう事なのか、メイの末恐ろしさに身震いしつつも、当の本人がそれを受け入れている事に少々引いていた。

「で、ですね。このペンダントなんですけども...。」

そう言ってペンダントを外し、鎖に吊り下げられた紅玉を名残惜しそうに眺める。
そして、メイの手を取り紅玉を手渡した。

「これは貴方のお父上が持っていた物なのでお返し致します。」

「えっ?」

「これは五大古龍の一角、『獄炎龍 フレモヘイズ』様の宝玉である『グラナート・クライノート』です。」

デミドランは、メイの掌で鈍く光る紅玉を寂しげな瞳で見ていた。
それに気づいたメイは流石に何かを察する。

「これって...。」

「そうです。フレモヘイズ様は500年前に人類に討伐されました。古龍は濃度の高い魔力を持っていて、それを保管する役目を持つのが体内にある宝玉なのです。五大古龍ともなると、その力は絶大です。5つ揃うと何でも願いが叶うと言われています。だから人類は欲しがった。そして唯一手に入れた『グラナート・クライノート』を大切に保管していた。」

『それがハルバート王国だ。』

「なるほどわからん。」

『お前の父親が持っていた剣に収められていたんだ。』

「それを我等龍人が混乱に乗じて密かに回収したのです。」

話が突然すぎて入ってこない。
メイがデミドランを倒す時に聞いた話は、人類の一部が何か世界の秩序を乱す事をしようとしているから止めなければならないという事、それには古龍の集結と宝玉の力が必要な事を聞いていた。
しかし、それを保管していたのが自分の父親で、古龍の一角は既に討伐されていたのだ。
そしてそれは、メイの敵が予想以上に強大だという事を意味していた。

メイは元々頭は悪くない。
最悪、自分の力で諸悪の根源をポンッと捻じふせればいいと考えていた。
しかしこの話を聞くと、全人類が敵と成り得る。

「...なるほど。」

顎に手を添え、考える。

「とりあえず全てを教えなかったランちゃんは飯抜きね。」

『えっ。』

真剣な顔で言い渡された実刑判決に反論すら出来ない。

「あと、これはテンニーン、貴方が持っていて。」

そして『グラナート・クライノート』を無理矢理手渡す。

「とりあえず、試験を終わらせましょう。」

メイの行動原理は平和を保つ事にある。
どんな世界でも、一貫してそれを守ってきた。
正義が勝つ。絶対に。
だから『魔法少女 マジカル☆マジカ』が大好きなのだ。

覚悟を決めた少女の旅が、今始まる。



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