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2球目【パフェリー、俺の好みにどストライク!】
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【前回のあらすじ】
フェンス横の扉の先は、異世界へと繋がっていた。
これは日常じゃない。日常の埒外だ!
だって、現代日本において、弓矢を向けられて威嚇されることなんてほぼほぼないっしょ? ヤバイよヤバイよ、なんだよこの国! 未開の地かよ!?
死ぬ死ぬ死ぬ、殺される。
「ま、待って! 話せばわかる! さっきは公衆の面前で騒いで申し訳なかったです! お、俺も、よくわからないところに飛ばされて、動揺して叫んじゃったんです……。別に、この国で暴れようとか、平和を乱そうとか、女の子を襲おうとか、そんなことを考えてるわけじゃない! パフェリー、さん? 信じて、お願い……その矢を向けるの、マジで止めてください」
パフェリーは、俺の話をジッと聞いてくれ、弓矢を下ろしてくれた。た、助かった……?
「…話は分かりました。あなたは《転移者》のようですね。ごく稀に現れるとは聞いたことがありますが、このエルフの国では、私の知る限り初めてです」
転移者? 俺はやはり、日本から、日本ではないどこかへ転移してしまった、ということなんだろうか。
もしそれが本当なら、一体どうやったら元に戻れるんだ? 俺は、ずっとここにいるわけにはいかない。日本に、仙台に帰らなくちゃいけない。だいたい、まだ試合中なんだ。このグラブの中にしっかりと掴んだボール。これを持って帰らないと、試合の続行が出来ないじゃないか! このままずっと戻れないとしたら……永遠に、俺がもぎ取ったアウトカウントが刻まれないことになる。
それだけは嫌だ、野球選手として。
「…許してくれるんだな。じゃあ、俺は行くよ。なんとしても、日本に帰らなきゃならないんだ!」
パフェリーは、俺の言葉を聞き届けて、少し考える風だった。美人は、口元を結んで思案する表情もとびきり魅力的だと思う。死の恐怖から解放されたら、ようやく生き物らしい感覚が蘇ってきた。
本当に、透き通るような肌。化粧水のCMに出てる女優なんか目じゃないくらい。そして、体型を隠そうともしない薄地の白いローブ。ずばり、Dと見た。これはぜひお相手したい。そんな機会があればいい……なんて邪なことをか考えていると、パフェリーの思考がまとまったようで、口を開いた。
「…行くあてはあるのですか?」
「そんなものは、ないよ。ないけど、探さないといけない」
「あなたはこの世界を何も知らないのに? 無理ですよ、何の力も持たない異世界の民のあなたには--。この国を一歩出てしまえば、外界は様々な種族が跋扈する危険なフィールド……私のように、あなたと意思を交わせる者ばかりではないですし、容赦なく食い殺されてしまうこともあり得ます」
確かに、と思う。知らない場所に、知識も武器も持たずに徒手空拳では、あまりに無謀だ。それでは命がいくらあっても足りないだろう。
そういえば、ジャガーズの大先輩、二千本安打達成者の日比野選手もこう言っていた。
『情報は必要不可欠だぞ、お前。知らないマッサージ嬢をいきなり呼ぶとか愚の極みだ。まずはその嬢の性格、年齢、体型、喫煙の有無、そして何より口の堅さ……様々なことをボーイから訊き出しておくことが大事だ。情報は全てを制する、それだけは覚えておけ』
…日比野さんは紛れもなく日本プロ野球の歴史に残る大打者なんだけど、野球に関することをその口から聞いた記憶が全くないなぁ。ただの女狂いのイメージしかない。
ま、でも、趣旨は頷けたし、大事なことだと思う。情報は全てを制する。そして、パフェリーは、恐らくこの世界の情報を多く持っている。
「…俺が間違っていた。パフェリー、俺にこの世界のことを教えてほしい」
そう頼むと、パフェリーの表情が柔らかくなった。うわ、笑うとめっちゃ可愛いこの子……俺、どこまで我慢出来るかな?
『お前は惚れっぽすぎる。プロ野球選手はスキャンダルには気をつけないといかんぞ』
日比野さんはこうも言っていた。気をつけよう。自分を律して……ああ、でもなぁ。
「良かったです、翻意してくれて。私も、あなたの話を聞きたいと思っていたんです。それに、女王様にも御報告しなければなりませんし!」
女王様? そういう王政の国なのか。
「さあ、行きましょう!」
パフェリーは意外と積極的な子で、俺の手を掴んで城へと一直線に進んでいく。俺を取り囲んでいたエルフの女の子たちの輪も見る見る解けていく。
ああ、ほんと、美人ばっかりだなこの国。男いないのかな? いないなら、俺、ずっとここにいて、ハーレム作ってもいいかも。でも本妻は……そう妄想を膨らませながら、パフェリーの美しい横顔と横乳を見つめていた。
フェンス横の扉の先は、異世界へと繋がっていた。
これは日常じゃない。日常の埒外だ!
だって、現代日本において、弓矢を向けられて威嚇されることなんてほぼほぼないっしょ? ヤバイよヤバイよ、なんだよこの国! 未開の地かよ!?
死ぬ死ぬ死ぬ、殺される。
「ま、待って! 話せばわかる! さっきは公衆の面前で騒いで申し訳なかったです! お、俺も、よくわからないところに飛ばされて、動揺して叫んじゃったんです……。別に、この国で暴れようとか、平和を乱そうとか、女の子を襲おうとか、そんなことを考えてるわけじゃない! パフェリー、さん? 信じて、お願い……その矢を向けるの、マジで止めてください」
パフェリーは、俺の話をジッと聞いてくれ、弓矢を下ろしてくれた。た、助かった……?
「…話は分かりました。あなたは《転移者》のようですね。ごく稀に現れるとは聞いたことがありますが、このエルフの国では、私の知る限り初めてです」
転移者? 俺はやはり、日本から、日本ではないどこかへ転移してしまった、ということなんだろうか。
もしそれが本当なら、一体どうやったら元に戻れるんだ? 俺は、ずっとここにいるわけにはいかない。日本に、仙台に帰らなくちゃいけない。だいたい、まだ試合中なんだ。このグラブの中にしっかりと掴んだボール。これを持って帰らないと、試合の続行が出来ないじゃないか! このままずっと戻れないとしたら……永遠に、俺がもぎ取ったアウトカウントが刻まれないことになる。
それだけは嫌だ、野球選手として。
「…許してくれるんだな。じゃあ、俺は行くよ。なんとしても、日本に帰らなきゃならないんだ!」
パフェリーは、俺の言葉を聞き届けて、少し考える風だった。美人は、口元を結んで思案する表情もとびきり魅力的だと思う。死の恐怖から解放されたら、ようやく生き物らしい感覚が蘇ってきた。
本当に、透き通るような肌。化粧水のCMに出てる女優なんか目じゃないくらい。そして、体型を隠そうともしない薄地の白いローブ。ずばり、Dと見た。これはぜひお相手したい。そんな機会があればいい……なんて邪なことをか考えていると、パフェリーの思考がまとまったようで、口を開いた。
「…行くあてはあるのですか?」
「そんなものは、ないよ。ないけど、探さないといけない」
「あなたはこの世界を何も知らないのに? 無理ですよ、何の力も持たない異世界の民のあなたには--。この国を一歩出てしまえば、外界は様々な種族が跋扈する危険なフィールド……私のように、あなたと意思を交わせる者ばかりではないですし、容赦なく食い殺されてしまうこともあり得ます」
確かに、と思う。知らない場所に、知識も武器も持たずに徒手空拳では、あまりに無謀だ。それでは命がいくらあっても足りないだろう。
そういえば、ジャガーズの大先輩、二千本安打達成者の日比野選手もこう言っていた。
『情報は必要不可欠だぞ、お前。知らないマッサージ嬢をいきなり呼ぶとか愚の極みだ。まずはその嬢の性格、年齢、体型、喫煙の有無、そして何より口の堅さ……様々なことをボーイから訊き出しておくことが大事だ。情報は全てを制する、それだけは覚えておけ』
…日比野さんは紛れもなく日本プロ野球の歴史に残る大打者なんだけど、野球に関することをその口から聞いた記憶が全くないなぁ。ただの女狂いのイメージしかない。
ま、でも、趣旨は頷けたし、大事なことだと思う。情報は全てを制する。そして、パフェリーは、恐らくこの世界の情報を多く持っている。
「…俺が間違っていた。パフェリー、俺にこの世界のことを教えてほしい」
そう頼むと、パフェリーの表情が柔らかくなった。うわ、笑うとめっちゃ可愛いこの子……俺、どこまで我慢出来るかな?
『お前は惚れっぽすぎる。プロ野球選手はスキャンダルには気をつけないといかんぞ』
日比野さんはこうも言っていた。気をつけよう。自分を律して……ああ、でもなぁ。
「良かったです、翻意してくれて。私も、あなたの話を聞きたいと思っていたんです。それに、女王様にも御報告しなければなりませんし!」
女王様? そういう王政の国なのか。
「さあ、行きましょう!」
パフェリーは意外と積極的な子で、俺の手を掴んで城へと一直線に進んでいく。俺を取り囲んでいたエルフの女の子たちの輪も見る見る解けていく。
ああ、ほんと、美人ばっかりだなこの国。男いないのかな? いないなら、俺、ずっとここにいて、ハーレム作ってもいいかも。でも本妻は……そう妄想を膨らませながら、パフェリーの美しい横顔と横乳を見つめていた。
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