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第七話

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「で、書いてみたの?」
「うん」

 三日連続の雨。梅雨だとわかってはいるけれど降り続く雨に学校のみんなはうんざりしはじめている。だけどぼくはもっと降ってほしいと祈ってしまう。

「サイくんいい加減にしなよ。このまま会ってたら向こうが図に乗っちゃうよ」

 ぼくのことを心配するりゅーちゃんは、気を揉んでいる。ぼくがキリサメを雨の精だと思い込んでいるんじゃないかと、彼にお金を貢がされたり、誘拐されたり監禁されたりするんじゃないかと過激な心配を。

「それに、雨の精なんて」

 あたしは後ろの言葉を聞きたくなくて、顔をキッと上げて言い返す。

「わかってる。ぼくだってわかってるさそれくらい。妖精、精霊、魔法使い、みんな昔の人が考えだした神話やお伽話の一部分でしかなくて、科学的根拠もなんにもないってことくらい……」

 だけど。

「でもね、いない、って断言したらそこでおしまいじゃないか。可能性を切り離しちゃうんだよ。精霊さんと一緒に遊んだり笑ったり怒ったりできるんじゃないか、って思えるだけでも世界は変わるよ。りゅーちゃんも、ぼくのこと馬鹿にするの? そんなのいつまでも信じてたらいけないって。ぼくはまだ夢の世界でしか幸せになれないカワイソウな男の子のままなの?」
「サイくん……」

 ハッとする。言いすぎたかもしれない。

「大丈夫だよ。ぼくは夢の世界とこの現実世界を行き来できる秘密の鍵を手に入れたから。ごめんね、心配させちゃって」
「ううん。あたしこそごめん。サイくんがわかってるんならいいの。子供なんかじゃないもんね。あたしたち、もう、大人の階段を上ってるんだから」

 中学生になってようやく見つけた夢の世界と現実世界を結ぶ鍵。キリサメが教えてくれたもの。書きはじめたばかりの日記帳。今日の天気欄は、雨マーク。

「今日も、会うのね」
「勿論」

 りゅーちゃんはぼくの素直な反応を見て微笑む。そして。

「雨の精霊さんによろしくね」
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