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第四話
しおりを挟む今日の天気、晴れ。
朝、ぼくの落胆した表情を見て、ママが驚いていたけど、梅雨がはじまったのに雨が降らないから、って言ったら笑われた。
ぼくはいつ雨が降ってもいいように、いつ雨の精に会ってもいいように、白い傘片手に家を出る。
「サイくんおはよ。今日雨なんて降る?」
「わからないけど、降ったら困るから」
不思議そうな顔をしているクラスメイトをよそに、ぼくは平然と傘片手に教室へ。
雲一つない青空を恨む日が来るなんて、思いもしなかった。
早く、雨が降ればいい。
照る照る坊主を逆さまに吊って、雨乞いをしてみようか? それとも雨雲を探しにドラゴンの背に乗って旅に出ようか?
ぼくの背中から真っ白な翼が生えたら、雷雲を呼びに四階の教室の窓から思いっきり飛び出していけるのに。
授業を横目に、どこまでも続いていきそうなスカイブルーを睨みつける。
平凡な日常に突然現れた夢の残滓。
何浮かれているんだろう、と思いながらもぼくはつい、考えてしまう。
……今度彼に会ったら、何を話そう。
「梅雨前線って入梅と同時に逃げる気がする」
「何言ってるの。貴重な梅雨の晴れ間なんだからありがたがりなさい」
ぼくの不平不満など一蹴してりゅーちゃんはアッサリ応える。とりつくしまもない。
「りゅーちゃんも作ろうよ」
「何を」
「逆さま坊主」
「サイくん……授業中にこっそり作ってたでしょ」
「うん」
ぼくがティッシュペーパーで作った逆さま坊主を見せて頷くと、うん、じゃないよと
りゅーちゃんは苦笑する。だけど、ぼくにとってみれば授業よりも雨の精霊さんの方が
重要だ。
「今度いつ雨降るかなぁ」
りゅーちゃんは暫く黙って、考えて、ぽつり、とぼくに零す。
「梅雨前線が西から北上してるから、明日にでも降るんじゃない?」
「ホント?」
ぼくが向日葵が花開くように喜んだのは言うまでもない。
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