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第36話 アメリス、連れて行かれる
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「アメリス様、こんなところで何をしているんですか!」
するとどこからともなく、兵士の一人が現れた。張り込みのために服装は商人の格好をしており、違和感を感じる。
「事情があったのよ。実は……」
私は先ほどまで何があったのかを話した。摩訶不思議な技を使う男がいたこと、ローナはそれにやられてしまったが、私はなぜか無事で逃げることができたことを説明した。
「……そんなことがあったのですか。にわかには信じ難い話ですが、信じましょう」
彼はこくりと頷きながら言った。ああよかった、あまりに滑稽無糖な話だから信じてもらえないかと思ったけどわかってくれたみたい。
安心していると、いつの間にか私とローナの周りに兵士たちが集まってきていた。ローナはまだ寝ぼけ眼で、起きてはいるものの泥酔しているような状態だ。
「ごめんなさい、心配かけて。でも私が見てきたことは本当のことだし、ここからの動きが大切だと思うの。何か考えがある人はいない?」
私は取り囲んでいる兵士たちに向かって問いかける。なんだか私を意地でも逃すまいという気概が感じられた。しかし、その態度とは違ってみんな押し黙って何も言わなかった。いつもならもっと反応があるはずなのに。まるで人形みたいである。しばらく彼らと視線を交わしていると、兵士たちは一斉に息をそろえて口を動かし、こう言い放った。
「それならいい考えがあります」
彼らはそういうとジリジリと私の方へと距離を詰めてきた。
「ちょっと、何してるのよ」
これでは鮨詰め状態であり、全く身動きがとれない。遊んでいる暇はないというのに。あまりにも近くに寄ってくるので、目の前にいた一人を押し除けようとして手を前に出した瞬間だった。急にその手を掴まれてしまう。そこからはあっという間だった。
なぜか兵士たちは私とローナを急に拘束したのだ。ガッチリと関節を決められてしまい、自分の意思で体を動かすことなどできない。
「やめてよ、もう逃げないから安心しなさいって!」
彼らに黙って行動したことは申し訳ないと思うが、いくらなんでもこれは強引すぎる。ここまで意固地になっている姿など見たことがない。何かおかしいと思いジタバタするが、屈強な肉体に押さえつけられてしまってはどうすることもできない。
「いいえ、これでいいんですよ。こうしないとあなたは逃げてしまうでしょう?」
右腕を押さえつけていた兵士が、私に向かって囁いた。息が耳にふれ、鳥肌がぞくりと背中から首筋まで登ってくる。
「あなた何を…」「だって言ったじゃん、にがさないって」
私の言葉に、確実に兵士ではない男の声が飛び込んできた。兵士の声だったら誰かなんて一目瞭然で判断できる。まさかこの声は……!
「ねえ、お嬢さん」
口を動かしているのは目の前の兵士のはずなのに、見知った顔が放つ声は先ほど聞いたばかりのあの男の声であった。
ここで兵士たちの妙な行動にも納得がいく。歴戦の彼らがこれだけの人数の見張りを動員していて、薬屋の不審な動きをつかめていないはずがないのだ、洗脳でもされていない限りは。そして正気ならば私を捕えるなどという行動をとるはずがないのである。またこの仮説が正しければ、あの時男が私を見逃したことにも合点がいく。見逃してもその場にいた兵士たちは記憶を操作されているのであり、とるに足らない存在だとあの時は身慣らされていたのだろう。
どうやらすでに兵士たちはあの男の手の中にあり、私は絶体絶命の危機に陥っているらしい。なんとか危機を乗り越えたと思っていたが、乗り越えた先は断崖絶壁の崖であった。
その時ひゅうと風が吹き、地面から砂埃が一気に巻き上がる。
「あなたには能力が通じないみたいだ。だからこのまま肉体的に拘束させてもらうよ」
私とローナは兵士たちに取り押さえられるままに、薬屋の中へと連れて行かれてしまった。
するとどこからともなく、兵士の一人が現れた。張り込みのために服装は商人の格好をしており、違和感を感じる。
「事情があったのよ。実は……」
私は先ほどまで何があったのかを話した。摩訶不思議な技を使う男がいたこと、ローナはそれにやられてしまったが、私はなぜか無事で逃げることができたことを説明した。
「……そんなことがあったのですか。にわかには信じ難い話ですが、信じましょう」
彼はこくりと頷きながら言った。ああよかった、あまりに滑稽無糖な話だから信じてもらえないかと思ったけどわかってくれたみたい。
安心していると、いつの間にか私とローナの周りに兵士たちが集まってきていた。ローナはまだ寝ぼけ眼で、起きてはいるものの泥酔しているような状態だ。
「ごめんなさい、心配かけて。でも私が見てきたことは本当のことだし、ここからの動きが大切だと思うの。何か考えがある人はいない?」
私は取り囲んでいる兵士たちに向かって問いかける。なんだか私を意地でも逃すまいという気概が感じられた。しかし、その態度とは違ってみんな押し黙って何も言わなかった。いつもならもっと反応があるはずなのに。まるで人形みたいである。しばらく彼らと視線を交わしていると、兵士たちは一斉に息をそろえて口を動かし、こう言い放った。
「それならいい考えがあります」
彼らはそういうとジリジリと私の方へと距離を詰めてきた。
「ちょっと、何してるのよ」
これでは鮨詰め状態であり、全く身動きがとれない。遊んでいる暇はないというのに。あまりにも近くに寄ってくるので、目の前にいた一人を押し除けようとして手を前に出した瞬間だった。急にその手を掴まれてしまう。そこからはあっという間だった。
なぜか兵士たちは私とローナを急に拘束したのだ。ガッチリと関節を決められてしまい、自分の意思で体を動かすことなどできない。
「やめてよ、もう逃げないから安心しなさいって!」
彼らに黙って行動したことは申し訳ないと思うが、いくらなんでもこれは強引すぎる。ここまで意固地になっている姿など見たことがない。何かおかしいと思いジタバタするが、屈強な肉体に押さえつけられてしまってはどうすることもできない。
「いいえ、これでいいんですよ。こうしないとあなたは逃げてしまうでしょう?」
右腕を押さえつけていた兵士が、私に向かって囁いた。息が耳にふれ、鳥肌がぞくりと背中から首筋まで登ってくる。
「あなた何を…」「だって言ったじゃん、にがさないって」
私の言葉に、確実に兵士ではない男の声が飛び込んできた。兵士の声だったら誰かなんて一目瞭然で判断できる。まさかこの声は……!
「ねえ、お嬢さん」
口を動かしているのは目の前の兵士のはずなのに、見知った顔が放つ声は先ほど聞いたばかりのあの男の声であった。
ここで兵士たちの妙な行動にも納得がいく。歴戦の彼らがこれだけの人数の見張りを動員していて、薬屋の不審な動きをつかめていないはずがないのだ、洗脳でもされていない限りは。そして正気ならば私を捕えるなどという行動をとるはずがないのである。またこの仮説が正しければ、あの時男が私を見逃したことにも合点がいく。見逃してもその場にいた兵士たちは記憶を操作されているのであり、とるに足らない存在だとあの時は身慣らされていたのだろう。
どうやらすでに兵士たちはあの男の手の中にあり、私は絶体絶命の危機に陥っているらしい。なんとか危機を乗り越えたと思っていたが、乗り越えた先は断崖絶壁の崖であった。
その時ひゅうと風が吹き、地面から砂埃が一気に巻き上がる。
「あなたには能力が通じないみたいだ。だからこのまま肉体的に拘束させてもらうよ」
私とローナは兵士たちに取り押さえられるままに、薬屋の中へと連れて行かれてしまった。
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