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怪物街道 鬼の話
作戦会議
しおりを挟む昼もそれなり、僕とぼっこさんと貂は作戦会議を始めた。
「貂は、運動能力的にはどれくらいあるんだ?」
「あたしは動物の妖怪よ?結構動けるわ。ただ、化術は使えなくなるわね」
「難しいか」
「そりゃそうよ。化術は、身体の構造を変える、或いは、相手にその様であると認識させる妖術よ。勿論、色々と種類があるから例外も存在するけどね。こんな凄い力、そうそう簡単には扱えないものなの。動きながらとか、集中出来ない環境とかじゃ普通は無理ね」
「貂の化術は要になる。前線は無理だな」
ふーむ、と顎に手を当てながら僕は質問を考える。何をやるにも下調べと準備は大切だ。
やってやろうぜ!おうさ!勝負だー!なんて言ってなんだかんだあっても勝てるなんてのはほんの一握りの天才か、よっぽど運の良いやつだけである。そんな小説や漫画みたいな事は期待出来ない。
妖怪とこうやって作戦会議してる時点で何言ってんだという気もするが。
「この前妖狐さんが見せたような、家の大きさを超えるような茶釜や無限に湧き出る水とかは無理って言っていたよな。化術にも制限はあるのか?」
「単純な力量ね。今のあたしじゃ無理。大きくても人を少し超える程度かしら。それに、液体とかも難しいのよ。無限になんてもってのほかね」
「質量はどうなってるんだ?」
「不可思議の一言よ。考えてみなさい。妖狐さんだけの質量のままじゃ、どれだけスカスカにしてもあんな大きな茶釜は生み出せないでしょ」
成程、じゃあやっぱり反則気味な術だ。自然の摂理を覆せるじゃないか。バッチリ小説や漫画みたいな事だった。
それにしても、普通に戦いながらポンポン好き勝手していた妖狐さんって本当に何者なんだ。
「何よ、そんなんじゃ作戦なんて考えられないなんて言わないでよね」
「逆だよ。人間くらいの大きさの、あらゆる物に変化出来る力なんて、ちゃんと今の時点で反則だ。集中しないと出来ないなんて制限でも何でもない。これで負けたら単純に僕が悪いだけだから、むしろ重圧に困ってる」
「…ふーん?あっそ」
貂は少し頬を染めて顔を背けた。お世辞でも何でもない。本心だ。
「ぼっこさんは、僕の状態の把握や…枕返しのような、夢に引き摺り込むような力を持っているということでしょうか」
貂の力は概ね把握出来たので、今度はぼっこさんに質問をした。
「あんたって、ぼっこちゃんには敬語なのね」
良いだろ別に。貂は貂でぼっこさんに親しげだし。姉妹みたいで仲良いのだこの二人。
「枕返しの力は、私が意図的に使えるわけでもないし、あれは通常備わってないって思ってもらった方がいいかな。君だけじゃなくても、貂ちゃんの時のような、建物や家屋の把握とかも出来るよ。戦うとかはちょっと無理かなぁ」
「まぁ、そもそもそんな妖怪じゃないわよね。ぼっこちゃんに戦ってもらうのは無理でしょ」
「ん?んー…」
僕は頭の中で少し考え
「一応、思いついた。で、二人に確認なんですが…」
質問をして、頭の中で浮かんだ考えを二人に伝えた。
「あんた、マジでやる気?」
「私は反対だなぁ…」
二人からは難色を示された。
「僕は鬼に認められる必要があるので、危険は承知しないと。で、僕の我侭の戦いだから二人には出来るだけ危険な目にあってもらいたくない。色々な条件をこなせて良いじゃないですか」
「いや、でもあんた…」
貂も反対の気を示し出したが
「どうせ、君は一人でも何かやるつもりなんだよね…。本当に危なくなったら、どれだけ悔しくてもなりふりかまわず、何を利用してでも逃げるって約束してくれる?」
ぼっこさんがそんな提案をした。
「わかりました」
僕はそれに頷いた。
「早めに鬼とやり合わないと、相手にされない可能性とか色々と考えられます。そこらへんまで手を回すのは面倒なので、今日中に鬼に向けて手紙を出しましょう」
「鬼に届けれんの?」
「そこは私が、ぬらりひょんのお爺さんにでもお願いしたらきっと大丈夫だと思う。それより、怪我が治ってからじゃダメなの?」
「それだといつになるやら、です。鉄は熱いうちに打たないと」
「君って結構強引だよね…」
「さて、一旦寝ましょう!ちょっと限界近いです!」
「じゃあ、やっぱさっきの作戦はやばいでしょ。…あたしもここで寝かせてよね」
「みんなでお昼寝ってのは、なんかいいね」
僕達は夜に向けて、少し身体を休めた。
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