コンビニーズ

プロローグ 自己紹介大会

ラーソンのりんご飴２

　隣の席から椅子を引く音がしてハッとする。
　さっきの女の子に気を取られていたらもう、海音の列の自己紹介が終わっていた。
　少し茶髪のサラサラな髪が顎の辺りで切り揃えられていて、彼女が動くと隣の海音にもふわっといい香りが届いた。
「越川実です。好きな食べ物はラーソンのりんご飴です。」
　実は小さな声で言うとちらっと海音の方を見てから席に座った。海音はさっきの女の子にしたようににこっと笑顔を向けた。実は目が合うとすぐに前を向いてしまったので、海音は自分の笑顔が引き攣っていたのか少し心配になった。けれど、あの固くて大きくて食べにくいけど、飴とりんごの甘さが混ざった絶妙な美味しさと食感がたまらないデザートを好きな人が意外といるんだという驚きで、海音の頭はラーソンのりんご飴でいっぱいになった。
「ラーソンのりんご飴好きなやつ多いな。」
　担任が大きな口を開けて4人のことを交互に見て笑った。どうやら海音がぼーっとりんご飴のことを考えている間に、もう1人ラーソンのりんご飴が好きだと言った子がいたらしい。振り返ると、綺麗な黒髪が少し目にかかっていてアンニュイな雰囲気を纏ったボーイッシュな女の子が担任の言葉に苦笑いで頷いていた。

　みのは静かな子なのかなと思ったら結構おしゃべりで、ゆきはクールな子なのかなと思ったけど意外と表情が豊かで一緒にいればいるほど好きになったな。