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あかいせかい

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「被疑者死亡! 被疑者死亡! 窓から飛び降りた!!」

「救急隊はまだか、早くしろっ!!」

「ダメだ、脈が無い。そっちはどうだ、蘇生できるか!?」

「教室はダメだ、死体が4……5人! うちひとりは警官!!」

「お前たちは階段に回れ! ひとりでも多く助けろ!!」

 ドタドタと慌ただしい足音が私の周囲を荒らしまわり、朱に染まった教室が青い人波で埋め尽くされていく。

 原因は、殺人。

 そこら中に転がっている死体。

 多くの人生が終わったし、終わらされた。

 全部でいったい何人だろう。

 10人。

 20人。

 もっと、多い。

 ひとつのクラスでは足りないほど、死んだ。

 そして――。

「しっかり目を開けて! 白山さんっ!! もうすぐ救急車が来るから頑張るんだっ!!」

 ――私の人生も、終わった。

 大きくて、ゴツゴツしていて、でも暖かい手が、どれだけ懸命に傷口を押さえて出血を止めようとしても……無駄。

 首元に刻みつけられた傷口から私の命がこぼれ落ちていく。

 私はきっと死ぬだろう。

 でも、その前にやらなければいけないことがある。

「くれい……けい、ぶ……さ……」

「声を出すんじゃない、傷口が開くっ!」

 私を必死に助けようとしてくれても、それよりも大切なことがあるんだ。

「おわって、ませ……ん……」

「ああ、終わらない! 終わらせるものか!! 君は終わっちゃいけない!!」

 違う。

 まだ終わっていないのは……。

「ひと……ごろ……しが、じけん……が……」

 私を含めたクラスメイトの人たちに悪魔の囁きを与え、誘惑して操って。

「さつじん、きが……」

 罠にかけて、殺し合いをさせた殺人鬼。

 自らは一切手を下すことなく、他人に他人を殺させる最低の人でなし。

 そんな殺人鬼が、全ての黒幕が、野放しなのだ。

「まだ、つづきます……」

 彼を止めなければ、また事件は起こるだろう。

 どこかで誰かが殺し合うはずだ。

 それは、ダメだ。

 そんな悪は許容できない。

 だから、止めて欲しい。

 終わらせて欲しい。

夜見坂よみさかなぎを、止めて……ください」
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