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誰かを好きになったことなんて一度もない、と言い切るとすればそれはちょっと大袈裟かもしれない。
いや、さすがに好きになったことはある。でもその好きは人間的好意みたいなもので、異性、この場合男子への感情になるとそれこそ幼稚園の頃というより物心ついた時からその手の記憶ない。私服はスカートはけないから持ってない。制服でもパンツ選ぶほど強いこだわりでもないのだけど。同級生の女子のことは素直に可愛いと思うから女子のほうが好きなのかもしれない。とはいえ、特定の女子を好きだって思った記憶もないんだけど。ただ、女子のあれこれはなんとなくいろいろ許せた。男子に対してはかしこまるというか求めるというかわりと厳しく見てしまってるんだと思う。なんでかわからないけど。顔の良さは判断つくけどそこと好きは自分の中では全く直結しないし、ある意味理想が高いのかもしれなくて、何か特別なものを求めているからか、強く好きだとか、つい目で追ってしまうような誰かを見つけたことは一度もなかった。
恋バナは苦痛だった。噂程度で誰々が誰々と付き合ってるという話くらいはふーんと聞けるし興味なくはないけど、具体的に相談されるとなると手に余った。アドバイス出来ることは何もないうえに、意味もわからなかった。喋ったこともない廊下ですれ違うだけの先輩を好きになる意味がわからないんだけどと口をついて出そうになる。延々と聞かされるだけならまだしも何故か急にこちらの心配を始めるケースはもっと困る。
「え?晶は今まで好きになった人いないの?誰も?本当に?」
「絶対彼氏作ったほうがいいよ。世界変わるよ」
「瀬川くんとかどう?仲いいよね。はじめのころ、二人は付き合ってると思ってたんだけど違うんだよね?」
世界変わるとか意味わからない。急に変わられてもついてけない。瀬川は小学のもっと前からの知り合いだし仲は悪くないけど、そういうのはない。普通に付き合いやすいし親しいって言ってもいいのかもしれないけど、男として意識したことはゼロ。
親同士が仲がよくて、幼馴染みたいなものなのだと思う。うちで食べる米は、瀬川の母親の実家で作ってる米を買っているわけで、同じ釜の飯を食うというわけではないけど同じ米を食べて育った仲。容姿はいいほうだと思う。小柄だけどキレイな顔をしているのはわかる。面倒見がよくて頼まれたら断れないタイプだから小学からずっと生徒会とか委員会活動とかをやっていて、人がいないからとあたしも誘われたこともあるけど断固として断った。向き不向きというものがあるんだから考えて誘ってほしい。優しいし顔が悪くないから割ともてたみたいで、告られているらしき場に出くわすという気まずい状況に陥ったことがあるな、そういえば、中学の時だったか。後で気まずそうにしてた。
「見た?」
「そりゃ見たよ」
「ああいうのどうすれば正解なんだろうな。よくわからないんだ」
「そんなの私はもっとわからないんだけど。つきあってくれって頼まれたのならつきあえばいいんじゃないの?」
今思い出すとなんか嫌味ったらしくて感じ悪すぎ。思い返して恥ずかしくなって凹むレベル。その時確かに瀬川はムッとしていたと思う。彼にしては珍しく。
「そういうのは違うだろう。相手の気持ちってものもある。晶にはわからないってことはよくわかったよ」
そう言って立ち去った。何回か噂は聞いたけど瀬川は結局誰とも付き合ってなかったと思う。よく知らないけど有名人の誰とかに似てるって言われてかなり人気あったらしいけどすごい不思議だった。面食いっていうのがどうもよくわからない。ろくに喋ったこともない瀬川のことを涙がでるほど好きって言ってた子もいたけど、その有名人の○くんに似てるかららしい。瀬川に告ってOKされて付き合いだしたあと、その有名人の○くんに会う奇跡が起きて付き合おうって言われたらどうするんだろうな。似てる程度なわけだから○くんのほうが圧倒的にかっこいいわけで。涙が出るほど好きってなに?そんな強い感情でも、一瞬で乗り換えちゃうんじゃないの?だって顔の優劣ならはっきりつくんだし、出発点そこだったらどうなるんだろう。
まあ本人にはそんなこと言わないけど、瀬川のこと聞きたくてあたしに近づいてくる女の子がたまにいてなんとなく気分よくなかったのは確か。
いや、さすがに好きになったことはある。でもその好きは人間的好意みたいなもので、異性、この場合男子への感情になるとそれこそ幼稚園の頃というより物心ついた時からその手の記憶ない。私服はスカートはけないから持ってない。制服でもパンツ選ぶほど強いこだわりでもないのだけど。同級生の女子のことは素直に可愛いと思うから女子のほうが好きなのかもしれない。とはいえ、特定の女子を好きだって思った記憶もないんだけど。ただ、女子のあれこれはなんとなくいろいろ許せた。男子に対してはかしこまるというか求めるというかわりと厳しく見てしまってるんだと思う。なんでかわからないけど。顔の良さは判断つくけどそこと好きは自分の中では全く直結しないし、ある意味理想が高いのかもしれなくて、何か特別なものを求めているからか、強く好きだとか、つい目で追ってしまうような誰かを見つけたことは一度もなかった。
恋バナは苦痛だった。噂程度で誰々が誰々と付き合ってるという話くらいはふーんと聞けるし興味なくはないけど、具体的に相談されるとなると手に余った。アドバイス出来ることは何もないうえに、意味もわからなかった。喋ったこともない廊下ですれ違うだけの先輩を好きになる意味がわからないんだけどと口をついて出そうになる。延々と聞かされるだけならまだしも何故か急にこちらの心配を始めるケースはもっと困る。
「え?晶は今まで好きになった人いないの?誰も?本当に?」
「絶対彼氏作ったほうがいいよ。世界変わるよ」
「瀬川くんとかどう?仲いいよね。はじめのころ、二人は付き合ってると思ってたんだけど違うんだよね?」
世界変わるとか意味わからない。急に変わられてもついてけない。瀬川は小学のもっと前からの知り合いだし仲は悪くないけど、そういうのはない。普通に付き合いやすいし親しいって言ってもいいのかもしれないけど、男として意識したことはゼロ。
親同士が仲がよくて、幼馴染みたいなものなのだと思う。うちで食べる米は、瀬川の母親の実家で作ってる米を買っているわけで、同じ釜の飯を食うというわけではないけど同じ米を食べて育った仲。容姿はいいほうだと思う。小柄だけどキレイな顔をしているのはわかる。面倒見がよくて頼まれたら断れないタイプだから小学からずっと生徒会とか委員会活動とかをやっていて、人がいないからとあたしも誘われたこともあるけど断固として断った。向き不向きというものがあるんだから考えて誘ってほしい。優しいし顔が悪くないから割ともてたみたいで、告られているらしき場に出くわすという気まずい状況に陥ったことがあるな、そういえば、中学の時だったか。後で気まずそうにしてた。
「見た?」
「そりゃ見たよ」
「ああいうのどうすれば正解なんだろうな。よくわからないんだ」
「そんなの私はもっとわからないんだけど。つきあってくれって頼まれたのならつきあえばいいんじゃないの?」
今思い出すとなんか嫌味ったらしくて感じ悪すぎ。思い返して恥ずかしくなって凹むレベル。その時確かに瀬川はムッとしていたと思う。彼にしては珍しく。
「そういうのは違うだろう。相手の気持ちってものもある。晶にはわからないってことはよくわかったよ」
そう言って立ち去った。何回か噂は聞いたけど瀬川は結局誰とも付き合ってなかったと思う。よく知らないけど有名人の誰とかに似てるって言われてかなり人気あったらしいけどすごい不思議だった。面食いっていうのがどうもよくわからない。ろくに喋ったこともない瀬川のことを涙がでるほど好きって言ってた子もいたけど、その有名人の○くんに似てるかららしい。瀬川に告ってOKされて付き合いだしたあと、その有名人の○くんに会う奇跡が起きて付き合おうって言われたらどうするんだろうな。似てる程度なわけだから○くんのほうが圧倒的にかっこいいわけで。涙が出るほど好きってなに?そんな強い感情でも、一瞬で乗り換えちゃうんじゃないの?だって顔の優劣ならはっきりつくんだし、出発点そこだったらどうなるんだろう。
まあ本人にはそんなこと言わないけど、瀬川のこと聞きたくてあたしに近づいてくる女の子がたまにいてなんとなく気分よくなかったのは確か。
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