上 下
45 / 79

モニカの秘め事<前半モニカ視点>

しおりを挟む

 あたしの名前はモニカ・レイ。

 天空神様へ祈りを捧げることで発動する"神聖術"の使い手で、駆け出しのEランク冒険者……だったはずなんですけど……

「では、モニカ、さっきまでの復習だ。このように敵に周囲を取り囲まれた時はな……」

 こうして優しく丁寧に、勉強を教えてくれているのは、あたしの所属するパーティーのリーダーで、しかもこの間、名誉ある"王国魔術師"
となったトーガ・ヒューズくん。
 あたしとだいたい同じ年くらいなのに、強くて、やさしくて、かっこよくて、すごく大人なリーダーです。

 でもトーガくんと一緒に行動をしていたがために、まだまだへっっぽこなあたしは、分不相応もいいところなSランク冒険者となってしまたのです……。

 それはトーガくんもよくわかっているようで……こうして度々戦闘や、魔術学に関して、あたしのために時間を割いて教えてくれているのでした。

「トーガ様、少々宜しいでしょうか?」

 と勉強中に、部屋へ入ってきたのは、トーガくんの恋人? ひょっとすると奥さんかもしれない、サブリーダーのパル・パ・ルルさん。
とっても強くて、それでいて美人な方で、あたしはパルさんのことを勝手にお姉さんのように慕っています。
 あたしパルさんのことも大好きです!

「どうした? 今はモニカと勉強中なのだが?」

「すみません。今、下に王国騎士団の方々がいらしてまして、お引っ越しの件で相談があるとのことで」

「ふぅむ……騎士団が直接か……」

 こうやって考えるトーガくんの姿も、すごく素敵だとあたしは思いました。
なんだか時々、年が近いだなんて思えないほど、とっても大人な魅力があるのです!
これを尊いというのでしょうか!?

「あ、あ、えっと! あたし、1人で勉強してるから良いよ! 気にしないで!」

へっぽこなあたしに構うよりも、今は騎士団の人たちとちゃんとお話をしてもらいたい。
そんな気持ちを込めての言葉でした。

「しかし……」

とはいえ、あたしがそう言ってもちゃんと悩んでくれるトーガくんは、本当に素敵な男の子なんだと思います!

「良いから、大丈夫だから!」

「……ありがとうモニカ。なるべくすぐに戻るよう心がける」

 彼はそう言って、極々自然にあたしの頭を撫でて、パルさんと一緒に部屋を出てゆくのでした。

 わあぁ……今日、髪洗えないよ! どうしよう……! このナチュラルな優しさが嬉しいのですっ!

 と、おバカなことを考えるのはここまで。
ちゃんと1人で勉強をしないとと、机へ向かいます。

最初こそ、1人でちゃんとできていましたが、やがて……

「はぁ……なんか集中できないなぁ……」

こうして机へ項垂れてしまったのは、勉強に飽きてしまったのもあるのですが……1番は、部屋の匂いでした。

 なにせここはトーガくんが長らく間借りしている、宿屋の一室。
 
 ここにはだいぶ長くくらいしているようで、だから彼の匂いが染み付いているのです。
この匂いを嗅いでいると、あたしの心臓は勝手に高鳴り出します。

 そして、いつも1人でこんな風に悶々としているときと、同じく、あたしの足と足の間がムズムズし始めるのでした。

「トーガくん、やっぱりパルさんと、そういうことしてるんだろうなぁ……」

 あの2人はわりとよく人目も憚らず、キスを……時々、結構濃厚なのもしています。
だからきっと、そういうことも毎晩のようにしているはずです。

「きっとピルちゃんもだよなぁ……」

 パルさんの妹さんで、最近ではすごく仲のいいメンバーのピル・パ・ルルちゃん。
あの子も、パルさんほどではないけれど、トーガくんとよくキスをしたりイチャイチャしていたりします。

ーー正直、そんなルル姉妹があたしはとっても羨ましいのですっ!

「でも、あたしへっぽこだしなぁ……トーガくんよりお子様だしなぁ……」

 勇気も自信もありません。だけど、ムズムズはより一層強まって、胸の辺りも勝手に張り始めるではありませんか。

 どうしよう……ここ最近、毎晩になっちゃてるし……しかもよりによってここはトーガくんの部屋だよ……?

 と考えつつ、一応、息を潜めて耳をそば立ててみます。

 すると窓の外から、トーガくんの声が聞こえてきました。
こっそり覗いてみると、トーガくんとパルさんは騎士団の方と、宿屋を出てゆくのが見えました。

「そっか……騎士団の人たちとおでかけするんだ……?」

 何故か、安堵し、そんなことを口走るあたしでした。

 本当はこんなことを人様の部屋でするのは良くないと、頭ではわかっています。

 だけどすでに疼きは、抑えようもないほど、あたしの気持ちを昂らせているのでした。

「か、帰ってくる前でに終わらせれば……! 最近、あたし早めだし……! はぁ……はぁ……」

 あたしは意を決して、机へ突っ伏しました。
 トーガくんの残り香がいっぱい溶け込んだ空気を吸い込みます。

 期待と緊張、少々の罪悪感があたしをより一層の興奮へと導いてゆきます。

「トーガくんっ……好きっ……んんっ!」

 そして恐る恐る疼きの原因である胸と、そこへ手を伸ばしてゆきます。


●●●


ーーまずい現場を目にしてしまった……

 騎士団との話が早々に終わり、部屋に戻ってみれば、呼吸を荒げているモニカの姿を見てしまったのである。

 しかも、だいぶ後半というか、最高潮の場面だったようで……さすがにここで扉を全開にするわけには行かず……

そして最高潮が終わったからといって、いきなり入るのもモニカのことを考えると、よくないわけで……

(やっぱりモニカは俺のことを、こんなにも慕ってくれていたんだな……)

 度々、俺の行動に対する彼女のリアクションから、予想はできていた。

 俺自信も、最近はモニカのことを"エマ"の代わりとは見ておらず、1人の女の子として魅力的だと思っている。

 本当は今すぐにでも、その気持ちを受け止め、願いを叶えてやりたいところではある。
しかしそうできないのは、"神聖術師としてのモニカ"の将来のことを考えているため、に他ならない。

(俺のバフ効果は相当強力だ……今のモニカには、到底耐えられないだろう……耐えられたところで、自分の実力か、バフ効果の影響かの判断がつかず、暴走してしまう危険性もある……)

 それだけ慎重になってしまうほど、モニカのポテンシャルは高いのだ。

 さすがは、あのエマの実子といったところだ。

 そして後悔しない人生を送る、といった自分の命題を主軸に、"モニカの女の子としての気持ち"と"神聖術師としてのモニカ"を天秤にかけたとき、どうしても後者の方に考えが傾いてしまう。今の段階ではそう判断している。

(だから早めにモニカにはしっかり勉強をこなしてもらい、いろいろな経験を積んでもらおう)

 俺とて、いつまでもモニカの気持ちを放って置きたくはないのだから。

 おっと、モニカ、ようやく起き上がって勉強を再開し始めたな。えらいえらい。

「ただいま、遅くなった」

「あ、あ! お、おかえりっ! ごめん、ちょっと居眠りしちゃってて、あんまし進んでなくて……」

 モニカは顔を真っ赤にしながら、そう言い訳をしてきた。

 ちょっと服が乱れているのは……気づいてないふりをしておこうと思う。


ーーそんなこんなで、日々は進んでゆき、いよいよ俺はこの宿屋を出て、王国が所有する館へ引っ越しをしてゆく!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

強さがすべての魔法学園の最下位クズ貴族に転生した俺、死にたくないからゲーム知識でランキング1位を目指したら、なぜか最強ハーレムの主となった!

こはるんるん
ファンタジー
気づいたら大好きなゲームで俺の大嫌いだったキャラ、ヴァイスに転生してしまっていた。 ヴァイスは伯爵家の跡取り息子だったが、太りやすくなる外れスキル【超重量】を授かったせいで腐り果て、全ヒロインから嫌われるセクハラ野郎と化した。 最終的には魔族に闇堕ちして、勇者に成敗されるのだ。 だが、俺は知っていた。 魔族と化したヴァイスが、作中最強クラスのキャラだったことを。 外れスキル【超重量】の真の力を。 俺は思う。 【超重量】を使って勇者の王女救出イベントを奪えば、殺されなくて済むんじゃないか? 俺は悪行をやめてゲーム知識を駆使して、強さがすべての魔法学園で1位を目指す。

死んで全ての凶運を使い果たした俺は異世界では強運しか残ってなかったみたいです。〜最強スキルと強運で異世界を無双します!〜

猫パンチ
ファンタジー
主人公、音峰 蓮(おとみね れん)はとてつもなく不幸な男だった。 ある日、とんでもない死に方をしたレンは気づくと神の世界にいた。 そこには創造神がいて、レンの余りの不運な死に方に同情し、異世界転生を提案する。 それを大いに喜び、快諾したレンは創造神にスキルをもらうことになる。 ただし、スキルは選べず運のみが頼り。 しかし、死んだ時に凶運を使い果たしたレンは強運の力で次々と最強スキルを引いてしまう。 それは創造神ですら引くほどのスキルだらけで・・・ そして、レンは最強スキルと強運で異世界を無双してゆく・・・。

勇者がパーティーを追放されたので、冒険者の街で「助っ人冒険者」を始めたら……勇者だった頃よりも大忙しなのですが!?

シトラス=ライス
ファンタジー
 漆黒の勇者ノワールは、突然やってきた国の皇子ブランシュに力の証である聖剣を奪われ、追放を宣言される。 かなり不真面目なメンバーたちも、真面目なノワールが気に入らず、彼の追放に加担していたらしい。 結果ノワールは勇者にも関わらずパーティーを追い出されてしまう。 途方に暮れてたノワールは、放浪の最中にたまたまヨトンヘイム冒険者ギルドの受付嬢の「リゼ」を救出する。 すると彼女から……「とっても強いそこのあなた! 助っ人冒険者になりませんか!?」  特にやることも見つからなかったノワールは、名前を「ノルン」と変え、その誘いを受け、公僕の戦士である「助っ人冒険者」となった。  さすがは元勇者というべきか。 助っ人にも関わらず主役級の大活躍をしたり、久々に食事やお酒を楽しんだり、新人の冒険者の面倒を見たりなどなど…………あれ? 勇者だったころよりも、充実してないか?  一方その頃、勇者になりかわったブランシュは能力の代償と、その強大な力に振り回されているのだった…… *本作は以前連載をしておりました「勇者がパーティーをクビになったので、山に囲まれた田舎でスローライフを始めたら(かつて助けた村娘と共に)、最初は地元民となんやかんやとあったけど……今は、勇者だった頃よりもはるかに幸せなのですが?」のリブート作品になります。

ごめんみんな先に異世界行ってるよ1年後また会おう

味噌汁食べれる
ファンタジー
主人公佐藤 翔太はクラスみんなより1年も早く異世界に、行ってしまう。みんなよりも1年早く異世界に行ってしまうそして転移場所は、世界樹で最強スキルを実でゲット?スキルを奪いながら最強へ、そして勇者召喚、それは、クラスのみんなだった。クラスのみんなが頑張っているときに、主人公は、自由気ままに生きていく

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

処理中です...