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モニカの秘め事<前半モニカ視点>
しおりを挟むあたしの名前はモニカ・レイ。
天空神様へ祈りを捧げることで発動する"神聖術"の使い手で、駆け出しのEランク冒険者……だったはずなんですけど……
「では、モニカ、さっきまでの復習だ。このように敵に周囲を取り囲まれた時はな……」
こうして優しく丁寧に、勉強を教えてくれているのは、あたしの所属するパーティーのリーダーで、しかもこの間、名誉ある"王国魔術師"
となったトーガ・ヒューズくん。
あたしとだいたい同じ年くらいなのに、強くて、やさしくて、かっこよくて、すごく大人なリーダーです。
でもトーガくんと一緒に行動をしていたがために、まだまだへっっぽこなあたしは、分不相応もいいところなSランク冒険者となってしまたのです……。
それはトーガくんもよくわかっているようで……こうして度々戦闘や、魔術学に関して、あたしのために時間を割いて教えてくれているのでした。
「トーガ様、少々宜しいでしょうか?」
と勉強中に、部屋へ入ってきたのは、トーガくんの恋人? ひょっとすると奥さんかもしれない、サブリーダーのパル・パ・ルルさん。
とっても強くて、それでいて美人な方で、あたしはパルさんのことを勝手にお姉さんのように慕っています。
あたしパルさんのことも大好きです!
「どうした? 今はモニカと勉強中なのだが?」
「すみません。今、下に王国騎士団の方々がいらしてまして、お引っ越しの件で相談があるとのことで」
「ふぅむ……騎士団が直接か……」
こうやって考えるトーガくんの姿も、すごく素敵だとあたしは思いました。
なんだか時々、年が近いだなんて思えないほど、とっても大人な魅力があるのです!
これを尊いというのでしょうか!?
「あ、あ、えっと! あたし、1人で勉強してるから良いよ! 気にしないで!」
へっぽこなあたしに構うよりも、今は騎士団の人たちとちゃんとお話をしてもらいたい。
そんな気持ちを込めての言葉でした。
「しかし……」
とはいえ、あたしがそう言ってもちゃんと悩んでくれるトーガくんは、本当に素敵な男の子なんだと思います!
「良いから、大丈夫だから!」
「……ありがとうモニカ。なるべくすぐに戻るよう心がける」
彼はそう言って、極々自然にあたしの頭を撫でて、パルさんと一緒に部屋を出てゆくのでした。
わあぁ……今日、髪洗えないよ! どうしよう……! このナチュラルな優しさが嬉しいのですっ!
と、おバカなことを考えるのはここまで。
ちゃんと1人で勉強をしないとと、机へ向かいます。
最初こそ、1人でちゃんとできていましたが、やがて……
「はぁ……なんか集中できないなぁ……」
こうして机へ項垂れてしまったのは、勉強に飽きてしまったのもあるのですが……1番は、部屋の匂いでした。
なにせここはトーガくんが長らく間借りしている、宿屋の一室。
ここにはだいぶ長くくらいしているようで、だから彼の匂いが染み付いているのです。
この匂いを嗅いでいると、あたしの心臓は勝手に高鳴り出します。
そして、いつも1人でこんな風に悶々としているときと、同じく、あたしの足と足の間がムズムズし始めるのでした。
「トーガくん、やっぱりパルさんと、そういうことしてるんだろうなぁ……」
あの2人はわりとよく人目も憚らず、キスを……時々、結構濃厚なのもしています。
だからきっと、そういうことも毎晩のようにしているはずです。
「きっとピルちゃんもだよなぁ……」
パルさんの妹さんで、最近ではすごく仲のいいメンバーのピル・パ・ルルちゃん。
あの子も、パルさんほどではないけれど、トーガくんとよくキスをしたりイチャイチャしていたりします。
ーー正直、そんなルル姉妹があたしはとっても羨ましいのですっ!
「でも、あたしへっぽこだしなぁ……トーガくんよりお子様だしなぁ……」
勇気も自信もありません。だけど、ムズムズはより一層強まって、胸の辺りも勝手に張り始めるではありませんか。
どうしよう……ここ最近、毎晩になっちゃてるし……しかもよりによってここはトーガくんの部屋だよ……?
と考えつつ、一応、息を潜めて耳をそば立ててみます。
すると窓の外から、トーガくんの声が聞こえてきました。
こっそり覗いてみると、トーガくんとパルさんは騎士団の方と、宿屋を出てゆくのが見えました。
「そっか……騎士団の人たちとおでかけするんだ……?」
何故か、安堵し、そんなことを口走るあたしでした。
本当はこんなことを人様の部屋でするのは良くないと、頭ではわかっています。
だけどすでに疼きは、抑えようもないほど、あたしの気持ちを昂らせているのでした。
「か、帰ってくる前でに終わらせれば……! 最近、あたし早めだし……! はぁ……はぁ……」
あたしは意を決して、机へ突っ伏しました。
トーガくんの残り香がいっぱい溶け込んだ空気を吸い込みます。
期待と緊張、少々の罪悪感があたしをより一層の興奮へと導いてゆきます。
「トーガくんっ……好きっ……んんっ!」
そして恐る恐る疼きの原因である胸と、そこへ手を伸ばしてゆきます。
●●●
ーーまずい現場を目にしてしまった……
騎士団との話が早々に終わり、部屋に戻ってみれば、呼吸を荒げているモニカの姿を見てしまったのである。
しかも、だいぶ後半というか、最高潮の場面だったようで……さすがにここで扉を全開にするわけには行かず……
そして最高潮が終わったからといって、いきなり入るのもモニカのことを考えると、よくないわけで……
(やっぱりモニカは俺のことを、こんなにも慕ってくれていたんだな……)
度々、俺の行動に対する彼女のリアクションから、予想はできていた。
俺自信も、最近はモニカのことを"エマ"の代わりとは見ておらず、1人の女の子として魅力的だと思っている。
本当は今すぐにでも、その気持ちを受け止め、願いを叶えてやりたいところではある。
しかしそうできないのは、"神聖術師としてのモニカ"の将来のことを考えているため、に他ならない。
(俺のバフ効果は相当強力だ……今のモニカには、到底耐えられないだろう……耐えられたところで、自分の実力か、バフ効果の影響かの判断がつかず、暴走してしまう危険性もある……)
それだけ慎重になってしまうほど、モニカのポテンシャルは高いのだ。
さすがは、あのエマの実子といったところだ。
そして後悔しない人生を送る、といった自分の命題を主軸に、"モニカの女の子としての気持ち"と"神聖術師としてのモニカ"を天秤にかけたとき、どうしても後者の方に考えが傾いてしまう。今の段階ではそう判断している。
(だから早めにモニカにはしっかり勉強をこなしてもらい、いろいろな経験を積んでもらおう)
俺とて、いつまでもモニカの気持ちを放って置きたくはないのだから。
おっと、モニカ、ようやく起き上がって勉強を再開し始めたな。えらいえらい。
「ただいま、遅くなった」
「あ、あ! お、おかえりっ! ごめん、ちょっと居眠りしちゃってて、あんまし進んでなくて……」
モニカは顔を真っ赤にしながら、そう言い訳をしてきた。
ちょっと服が乱れているのは……気づいてないふりをしておこうと思う。
ーーそんなこんなで、日々は進んでゆき、いよいよ俺はこの宿屋を出て、王国が所有する館へ引っ越しをしてゆく!
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