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モニカ・レイを仲間に!

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「ごめんねぇ、ローくんが強引すぎてぇ! そんな怒んないでぇ~」

と、今度はリナが馴れ馴れしく近づいてくる。
そしてそっと俺の耳へ唇を近づけ、

「あのさ、トーガ・ヒューズくん、もしもパーティーに加わってくれるならさ……個人的にサービスしてあげても良いわよ? もちろん、みんなには内緒でね♩ 可愛い君ならいつでもオッケー!」

 リナは俺の耳元で甘い言葉を囁く。
 サービスとはたぶん、"そういうこと"を指しているのだろう。
この女がいきなりこんなことをいいだしたのは、多少は俺の魔力経路に惹かれている影響だと思われる。

「そうですか、そんなサービスが。随分と気前がいいんですね?」

「あなただけの特別よ。さっ、こっちへいらっしゃいな」

「……だから冗談じゃない! とさっき申し上げたはずです!」

 俺はそう叫び、リナを振り解く。

「これからよろしくお願いします、モニカさん! 俺は君と一緒に頑張りたいです!」

 そしてリナを横切り、寂しそうにうなだれて居たモニカへ握手を求める。

「はぇ!? あ、あの、その……!」

 彼女は驚きと喜びがない混ぜとなった、とても面白い表情をしている。
うん、すごく可愛いぞ、モニカは!

「な、なんで!? なんでそんなクソ雑魚女を選ぶのよ!? うちらと組んだ方が得じゃないの!?」

 逆にリナは"信じられない"といった様子を見せている。
どこから、そんな自信が湧いてくるのやらと、俺は内心呆れてしまった。
 仕方ないので、詳しく説明してやろうと、リナたちの方へ再び向き直る。

「とりあえず、誘ってくれたことには感謝している……! お陰で自信がついたよ。俺は、Eランクであろうとも、今の俺がお前らBランクの冒険者でさえ、喉から手が出るほど欲しい人材だってことにな!」

 俺は呆然としていたリナやローレンスへそう言い放つ。

「ならなんで!?」

「理由は二つ。まず一つ! 俺がモニカを選んだのは、彼女が神官職だからだ! 俺は魔術師、パルは格闘家、ピルはテイマー……攻撃力は絶大なものの、回復役がいない。盤石な布陣を組むためには、回復役が必要だと思いたところだったんだ。そしてこのモニカは、そのことが分かったうえで俺に声をかけてきた! この判断力の高さを、俺は評価したい!」

 正直なことを言っただけなのだが、モニカは嬉し恥ずかしと言った具合に頬を赤く染めている。対してローレンスたちは、顔色を真っ青に染めていた。

「しかし、モニカの素晴らしい判断力に対して、あなたたちはまるでわかっていない! あなた達のパーティー構成は剣士、戦士、野伏……回復役がいない! つまり俺がそちらへ加入するメリットが少ない! たかが少し高いランクの依頼が受けられるなど、モニカと比べれば唾棄すべきものだ!」

「わかったわよ! じゃあ、そこの神官も加えれば良いんでしょ!? ねぇ、ロー君!?」

「ああ、まぁ……」

 やけくそ気味のリナがそういうと、ローレンスは微妙な表情を浮かべていた。
相変わらずこのお坊ちゃんは、流されやすく、情けないと思う。

「たしかにあんたらが、最初からそのつもりで声をかけてきていたのなら、多少は考慮する余地はあったかもしれないな」

 俺がそういうと、ローレンスたちは押し黙った。

「そして二つ目、これが1番重要だ。俺はあんたたちが嫌いだ! 戦いは常に死と隣り合わせだ。だから俺は信頼できる人に、この背中を預けたい!」

「ぐっ……」

「他人を人前でを蔑み、先約があるにも関わらず、それをそっちのけで話を進めるような、お前らを俺は信用できん! お前らこそ、俺の前から消えろ! いますぐに! お前らの仲間になど、絶対になるものか!」

 俺は悔しそうに口元を歪める、リナの目の前で、あえてモニカの手を取った。

「あっちで詳しい話をしましょう、モニカさん」

「は、はいっ!」

「すまない、俺のせいで少し嫌な思いをさせてしまって……」

「い、いえ! その……ありがとうございますっ! あたしを選んでくれて嬉しいですっ!」

 勢いで繋いだモニカの手は温かく、柔らかい。
そしてやはり、本当に若かった頃の甘酸っぱい記憶を思い出す。

「あと、一つ付け加えさせていただきますと、私とピルは奴隷ではなく、名誉タルトン人です。その旨、ゆめゆめお忘れなきように……」

「べぇーだっ! つぎ変なこと言ってきたら、わたしとレオパルドくんがふんずけてやる!」

 さすがのパルとピルも頭に来たのか、ローレンスたちへそう吐き捨てていた。

「だよなぁ……」
「偉いぞ、トーガ・ヒューズ、よく言った!」
「あいつら、もう落ち目だなぁ……」

 などというひそひそ話が周囲から沸き起こる。

 俺に振られてしまったローレンス達は、その場で恥ずかしそうにうつむくことしかできなかったのである。

「で、では改めまして、モニカ・レイです! 神官職です!」

 食堂に着き、腰を据えるなり、モニカは改めて自己紹介をした後に、深々と頭を下げてきた。やはりモニカは凄くまじめで、良い娘だと思う。

「トーガ・ヒューズ、魔術師です。後ろの2人は姉妹で、姉が格闘家のパル・パ・ルル、妹がテイマーのピル・パ・ルルです。先に言っておきますけど、2人は俺の家族で、名誉タルトン人です。そこのところはくれぐれもよろしく頼みます」

「ご家族ですか。わかりました!」

 モニカは早速立ち上がると、パルとピルへ歩み寄り、握手を求めた。

「モニカ・レイです。これからよろしくお願いします」

「パル・パ・ルルです、よろしくお願いしますモニカさん!」

「ピル・パ・ルルだよ! よろしくねー!」

 さすがは元王族というべきか。
パルとピルは爽やかな笑顔でモニカの挨拶へ応えるのだった。

「では、早速契約と行きましょう。こちらへ加入のサインを」

「は、はいっ!」

 モニカは素直にペンを受け取って、俺の一党へ加わることへの承認のサインをした。
 これにて晴れて、神官モニカ・レイは名実ともに俺の指揮下へ入ることとなった。

「では早速、明日にでもキークエストを受けるとしましょう」

「キー……ってぇ!? い、いきなりですか!?」

 キークエストとは特定の魔物を狩り、その成果を持ち帰ることで、冒険者ランクを上昇させるものを指す。

 ちなみにライセンスを取得して早々に、キークエストを受けようとするなんて、普通じゃ考えられないことだ。
でも、最短ルートを目指すと決めた以上、これぐらいは当然である。

「ちなみに俺の目標は、いち早く"王国魔導士"になることです。そのつもりでいてください」

「王国魔導士にですか!? 本気で!?」

「冗談でこんなこと言いませんよ。もし、ついて行けないと思ったらいつでも言ってくださいね」

「そ、そんな滅相もありません! が、がんばります!」

 モニカはやや震えながらも、元気に答えてくれた。
これで躊躇うようなら、可哀そうだがそこまでの関係と考えていたが杞憂だったらしい。それに……

(村を出たばかりの頃のエマもこんな感じだったな……こんな風に頑張り屋さんで……もしかして、この子は俺と同じく、何らかの影響で若返ったエマなんじゃ……?)

「あ、あの……なにか、あたし変ですか……?」

 モニカは不思議そうな表情でこちらを見上げていた。
俺は気恥ずかしさを隠すべく、わざと視線を逸らすのだった。

「そ、それじゃあ今日はこれで解散! 明朝早く、ここへ集合ってことで!」

「わかりました! どうぞこれからよろしくお願いします!」

「お、おう……」

 俺はモニカから逃げるように、集会場を後にする。

(早く、モニカのことをまともに見られるようにならないと。こんなんじゃ、この先が思いやられるな……)

ーーこの時、俺は背中に妙な視線を感じていた。

(この視線はローレンスたちだな。暫く少し用心しておくか……)
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