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決闘
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さっきのコレラさんの一言で何故か会議は中断して騎士の訓練所にやって来た。
いや……会議が終わってからでよかったんだけどな……それに夜なんだけど……
「ねぇ…ギルド長。会議を中断してよかったんですか?」
「いいことはないが……まあ…いいだろ。面白そうだしな。」
いいことないなら中断しなくてよかったんですけど……
「どうしたんだ?何かあったのか?」
「コレラ様とそこの坊主が決闘するらしいぞ。」
「まあ…コレラ様は伯爵家の歴史でギルアス様以来の天才といわれていますが……」
ほら……噂を聞きつけて使用人達まで集まってきたぞ……
「これからコレラとヒビキ君の決闘を始める!両者ともに生死に関わる攻撃でない限り攻撃の手段は問わない!私が勝負あったと判断した時点で終了とする!」
つまり剣でも魔法でもいいってことか。
「では………始め!」
「はぁっ……!」
合図と同時にコレラさんは俺に向かって剣を振りかざした。俺はそれを横に軽く飛んでよける。
……なるほどな……型にハマった剣術か……この動きは魔物と戦ったことがないな。
確かに威力もあって綺麗なフォームから「強い」…そう感じるかもな。けど……やっぱり型にハマっていて動きは単純だな。綺麗に型にハマってる分、動きは読みやすい。よし……
そのままコレラさんは体勢を整えた後、蹴りを入れる……フリをして剣を横に振るう。が……これは俺も予想してた。
「なっ…!」
コレラさんが驚きの声をあげた。その理由は簡単だ。俺が剣から手を離したからだ。俺は剣を振りかぶっていたコレラさんの手首と胸ぐら辺りを掴み、その勢いのままコレラさんを地面に投げつけた。まあ、背負い投げの要領だな。
「がはっ…!」
背中を打ちつけたコレラさんが顔を歪めた。勝負あったな。
「そこまでだ!勝者はヒビキ君!」
「えっと……大丈夫…ですか…?」
「クソッ!」
俺が手を差し出すとコレラさんは悔しそうに顔を歪めて、俺の手を振り払って何処かに行ってしまった。
※ギルアス視点
「……会わないといけない、か……」
ギルアスはヒビキとコレラの決闘には目にもくれず、一人そう呟いた。
ヒビキが何気に言ったその一言がずっとギルアスの頭に残っていたのだ。
「…ん?もう終わったのか?」
「……うん…なんか……一瞬だった……」
エレンはギルアスに対する敬語も忘れて唖然とした様子だ。
「まあ、ヒビキだからな。コレラの最初の一撃でコレラの剣術の特徴を考察したんだろうな。」
「あ……言われてみたらヒビキ…わざとコレラ様の攻撃を避けてたかも……ヒビキなら振り払えるはずなのに……」
アイツはまだ本気なんて出してないみたいだからな……今回の古代竜討伐で本気が見れると面白いだろうな。
「ヒビキ、ちょっと来い。」
「どうかしましたか?ギルアスさん。」
「お前はコレラと戦ってどう思った?」
「そうですね……」
ヒビキは少し考える様子を見せた後、感想を述べ始めた。
「……そうですね…魔物と戦ったことのない剣術でした。綺麗な型にハマっていて動きも読みやすく単純でした。教わった素振りを無理やり攻撃手段に変えている感じです。後は…頭が固すぎます。真正面から叩き落とすという自分が負けることを前提としていない作戦でした。初見の相手との対戦は、相手の大体の性格とその時の感情を把握して作戦を立てるべきだと思います。」
……コレラ…お前が自分でヒビキに決闘を申し込んだからどうなっても自業自得だと思っていたが……さすがに相手が悪かったな……なんたって相手はあの一瞬でここまでお前の事を分析して問題点まであげるようなヤツだったんだからな……
「それらを踏まえて……」
ん?
「……現時点で彼には『ギルアスさん以来の天才』だと呼ばれる資格はないと思います。彼がギルアスさん以来の天才だなんてギルアスさんに対する侮辱です。」
ハッキリと言い放ったヒビキに、ほとんどの使用人達がヒビキを睨み付けた。だがヒビキはそれに気付きながらも顔色一つ変えなかった。
「使用人の皆さん……どうして俺が剣や魔法じゃなく、体術を使って一撃で勝負を着けたか分かりますか?」
ああ……なるほどな…そういうことか……ったく…お前は不器用なお人好しだな……
「言ったはずです。現時点でと。俺は職業とは関係のない、あくまで技で決着を着けました。そうすれば彼は屈辱を味わいますから。」
「……コレラ様を見下しているのですか?」
怒りが混じった使用人の言葉にヒビキは首を横に振った。
「ッ!?ならなぜ!」
「……彼は、悔しさを噛み締めて自分の経験値にするタイプだからです。彼は、次は俺に剣を使わせてやると…そう考え自分の実力を伸ばします。彼が自分の剣術の問題点に気付き、自分で解決した暁には世間から『天才』と呼ばれるでしょう。」
『…………』
ったく……自分が恨まれ役を買ってまですることじゃないだろ……
「ヒビキ、ちょっと来い?」
「…?はい。」
一瞬考えはしたものの、ヒビキはすぐに俺の元に来た。
「えっと…俺なにかしちゃいましたか……?」
「ぷっ…くふふっ……ははははっ!」
何か勘違いしてるな。
「え…えっと……?」
「ありがとうな。」
俺がぽんっとヒビキの頭に手を置くと、普段から表情が変わらないヒビキだが、今は珍しく見るからに動揺した。
「お前は何も考えずにコレラと勝負すればよかったんだぞ。アイツの事なんか考えずにな。まったくの赤の他人だろ?」
「ギルアスさんの家族ですから。」
「ったく…お前は随分とお人好しだな。」
「嫌われるよりかは人のために何かした方がいいですから。」
本当に……コイツはやっぱりどこか掴みにくいヤツだ……まあ、嫌な気はしないがな……
こんなやり取りをしている間も、ヒビキはギルアスの手が心地よかったのか逃げるようなことはせず、ギルアスが離すまでそのままでいた。そしてギルアスの目にはヒビキが少し微笑んでいるように写ったのだった……
いや……会議が終わってからでよかったんだけどな……それに夜なんだけど……
「ねぇ…ギルド長。会議を中断してよかったんですか?」
「いいことはないが……まあ…いいだろ。面白そうだしな。」
いいことないなら中断しなくてよかったんですけど……
「どうしたんだ?何かあったのか?」
「コレラ様とそこの坊主が決闘するらしいぞ。」
「まあ…コレラ様は伯爵家の歴史でギルアス様以来の天才といわれていますが……」
ほら……噂を聞きつけて使用人達まで集まってきたぞ……
「これからコレラとヒビキ君の決闘を始める!両者ともに生死に関わる攻撃でない限り攻撃の手段は問わない!私が勝負あったと判断した時点で終了とする!」
つまり剣でも魔法でもいいってことか。
「では………始め!」
「はぁっ……!」
合図と同時にコレラさんは俺に向かって剣を振りかざした。俺はそれを横に軽く飛んでよける。
……なるほどな……型にハマった剣術か……この動きは魔物と戦ったことがないな。
確かに威力もあって綺麗なフォームから「強い」…そう感じるかもな。けど……やっぱり型にハマっていて動きは単純だな。綺麗に型にハマってる分、動きは読みやすい。よし……
そのままコレラさんは体勢を整えた後、蹴りを入れる……フリをして剣を横に振るう。が……これは俺も予想してた。
「なっ…!」
コレラさんが驚きの声をあげた。その理由は簡単だ。俺が剣から手を離したからだ。俺は剣を振りかぶっていたコレラさんの手首と胸ぐら辺りを掴み、その勢いのままコレラさんを地面に投げつけた。まあ、背負い投げの要領だな。
「がはっ…!」
背中を打ちつけたコレラさんが顔を歪めた。勝負あったな。
「そこまでだ!勝者はヒビキ君!」
「えっと……大丈夫…ですか…?」
「クソッ!」
俺が手を差し出すとコレラさんは悔しそうに顔を歪めて、俺の手を振り払って何処かに行ってしまった。
※ギルアス視点
「……会わないといけない、か……」
ギルアスはヒビキとコレラの決闘には目にもくれず、一人そう呟いた。
ヒビキが何気に言ったその一言がずっとギルアスの頭に残っていたのだ。
「…ん?もう終わったのか?」
「……うん…なんか……一瞬だった……」
エレンはギルアスに対する敬語も忘れて唖然とした様子だ。
「まあ、ヒビキだからな。コレラの最初の一撃でコレラの剣術の特徴を考察したんだろうな。」
「あ……言われてみたらヒビキ…わざとコレラ様の攻撃を避けてたかも……ヒビキなら振り払えるはずなのに……」
アイツはまだ本気なんて出してないみたいだからな……今回の古代竜討伐で本気が見れると面白いだろうな。
「ヒビキ、ちょっと来い。」
「どうかしましたか?ギルアスさん。」
「お前はコレラと戦ってどう思った?」
「そうですね……」
ヒビキは少し考える様子を見せた後、感想を述べ始めた。
「……そうですね…魔物と戦ったことのない剣術でした。綺麗な型にハマっていて動きも読みやすく単純でした。教わった素振りを無理やり攻撃手段に変えている感じです。後は…頭が固すぎます。真正面から叩き落とすという自分が負けることを前提としていない作戦でした。初見の相手との対戦は、相手の大体の性格とその時の感情を把握して作戦を立てるべきだと思います。」
……コレラ…お前が自分でヒビキに決闘を申し込んだからどうなっても自業自得だと思っていたが……さすがに相手が悪かったな……なんたって相手はあの一瞬でここまでお前の事を分析して問題点まであげるようなヤツだったんだからな……
「それらを踏まえて……」
ん?
「……現時点で彼には『ギルアスさん以来の天才』だと呼ばれる資格はないと思います。彼がギルアスさん以来の天才だなんてギルアスさんに対する侮辱です。」
ハッキリと言い放ったヒビキに、ほとんどの使用人達がヒビキを睨み付けた。だがヒビキはそれに気付きながらも顔色一つ変えなかった。
「使用人の皆さん……どうして俺が剣や魔法じゃなく、体術を使って一撃で勝負を着けたか分かりますか?」
ああ……なるほどな…そういうことか……ったく…お前は不器用なお人好しだな……
「言ったはずです。現時点でと。俺は職業とは関係のない、あくまで技で決着を着けました。そうすれば彼は屈辱を味わいますから。」
「……コレラ様を見下しているのですか?」
怒りが混じった使用人の言葉にヒビキは首を横に振った。
「ッ!?ならなぜ!」
「……彼は、悔しさを噛み締めて自分の経験値にするタイプだからです。彼は、次は俺に剣を使わせてやると…そう考え自分の実力を伸ばします。彼が自分の剣術の問題点に気付き、自分で解決した暁には世間から『天才』と呼ばれるでしょう。」
『…………』
ったく……自分が恨まれ役を買ってまですることじゃないだろ……
「ヒビキ、ちょっと来い?」
「…?はい。」
一瞬考えはしたものの、ヒビキはすぐに俺の元に来た。
「えっと…俺なにかしちゃいましたか……?」
「ぷっ…くふふっ……ははははっ!」
何か勘違いしてるな。
「え…えっと……?」
「ありがとうな。」
俺がぽんっとヒビキの頭に手を置くと、普段から表情が変わらないヒビキだが、今は珍しく見るからに動揺した。
「お前は何も考えずにコレラと勝負すればよかったんだぞ。アイツの事なんか考えずにな。まったくの赤の他人だろ?」
「ギルアスさんの家族ですから。」
「ったく…お前は随分とお人好しだな。」
「嫌われるよりかは人のために何かした方がいいですから。」
本当に……コイツはやっぱりどこか掴みにくいヤツだ……まあ、嫌な気はしないがな……
こんなやり取りをしている間も、ヒビキはギルアスの手が心地よかったのか逃げるようなことはせず、ギルアスが離すまでそのままでいた。そしてギルアスの目にはヒビキが少し微笑んでいるように写ったのだった……
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