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伯爵家との顔合わせ

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あれから俺達は風呂を堪能した後、支度をしてから使用人さんに案内してもらい食堂に移動した。ちなみにギルアスさんは俺とスイより先に上がって食堂に向かっていた。

「すみません、皆さん。お待たせしました。」

どうやら俺とスイが最後だったみたいでギルアスさんやリンファさん、ダグラスさん、エレンさんは既に食堂にいた。

「いやいや、構わんよ。そろそろ妻と娘も来るはずなのだが……」

…噂をすれば、だな……

コンコンッ

食堂に入って用意してもらっていた席に着こうとしていると、ドアをノックする音がした。開いたドアの先には一人の少女と大人の女性がいた。

「お久しぶりです、叔父さ………まあっ!旦那さま!いらしていたのですね!ずっと会いたかったです!」

と、少女の顔が明るくなった。

『……は?』

「…………は…?」

皆が驚いているが……一番驚いたのは俺だ。なぜなら……

「ふふふ、旦那さま。いついらしたのですか?来てくださったなら声をかけてくださればご挨拶しましたのに…」

そう言いながら少女……以前、魔物に襲われているのを俺が助け、馬車に乗っていたルイファ伯爵家のアイシャさんが俺の腕にしがみついたからだ。

そうか……ここ、ルイファ伯爵家だったのか…………って!いや!今はそこじゃない!旦那さまってどういうことだ!?

「アイシャ…この前話していた『王子様』はヒビキ君のことかね?」

「はい!お父様!ヒビキ様…いいえ!旦那さまは私を危機から救ってくださった救世主であり私だけの王子様です!ですのでお父様!私と旦那さまの結婚を許可してください!」

「い、いや…ちょっ……」

なんか話が…!?

「いいだろう、ヒビキ君なら。」

「ありがとうございます!お父様!」

ちょい待てぇぇぇ!俺の意見を無視するなぁぁぁ!?

「おいこら待て!」

「ッ!?」

「いたっ!?」

グレイスさんとアイシャさんはギルアスさんにポカンと頭を叩かれた。ナイス!ギルアスさん!

「アイシャ、お前は会って早々何言ってるんだ。グレイスも勝手に話を進めるな。」

「う…す、すみません……」

「むー…」

アイシャさんは不満げだけど……仕方ない、自業自得だ。

「…で、ヒビキ。次は何をやらかしたんだ?」

うぉぉい!

「何でそうなるんですか。やらかしてません。」

心外だな!?

「……ヒビキ、アイシャに会った経緯を全部話してくれ。」

「……分かりました。」

なんか信用ないな……

「いつ会ったか、というのはルネの街を出て二日目です。あの日の朝、俺が水を汲みに行ったのを覚えていますか?その途中で魔物に人が襲われていたので加勢しに行ったんです。そして、その襲われていたのがアイシャさん達です。」

「そうです!旦那さまはまさしく私を救ってくださった命の恩人なのです!あと少し旦那さまの到着が遅ければ皆死んでいました!魔物に襲われ死を悟った時ギリギリで目の前に旦那さまが現れて魔物を剣や魔法で討伐する姿はまさしく白馬に乗った王子様です!」

「…それは言い過ぎです……」

マジで……なんかこの世界の人は他人を持ち上げるよな……

「お前か……俺のアイシャをたぶらかしたのはッ!!」

ちょっ!剣!?

俺と同い年くらいの男性がいきなり部屋に入ってきて剣を抜き斬りかかってきた。

ガキンッ

「なッ!?」

魔力を圧縮して固めるイメージで障壁を張ると剣を弾いた。ラノベなんかでよくある魔力障壁だな。まさか防がれるとは思ってなかったのか驚きが見えるな。

「……どういうつもりですか?」

「くっ……お前みたいな冴えないヤツが俺の妹をたぶらかすなど言語道断!成敗してくれよう!」

「…………はい?」

…………ただのシスコンかよ!?

「…お兄様?だん…お客様に向かって何をしているんですか?屋敷の中で剣を抜くなんて。それも私の恩人に。ねえ?お兄様?」

アイシャさんはニッコリと笑っている。……が、目は笑っていない。圧がスゴい……

「い、いや…俺はただお前をたぶらかした不届き者を…」

「お に い さ ま ?」

「……すまない……」



それからアイシャさんのお説教があり、改めて自己紹介をすることになった。

「……俺はアイシャの兄のコレラだ。」

「ヒビキです。王都にいる間、こちらでお世話になります。」

お互い決して「よろしく」とは言わない。俺はいきなり剣を向けられたしな。まぁ…相手は俺……本人曰く俺がアイシャさんをたぶらかしたのが気に入らないみたいだが。

「すまない、ヒビキ君……」

「いえ、グレイスさんが謝ることではありませんよ。」

「それでもだ。私の監督不行き届きだからな。コレラ。ヒビキ君に謝りなさい。」

「…………ふん!」

「コレラ!!いい加減にしなさい!」
 
そっぽを向いたコレラさんにグレイスさんが叱責する。

「いいですよ、グレイスさん。言葉だけの謝罪を受けても意味ありませんから。」

いい気はしないからな。

「……そうか。分かったよ。」

……と、そんな感じでモヤモヤはしたものの、とりあえず顔合わせは終了したのだった……

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