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王都に到着しました

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「はい、これで大丈夫ですよ。」

「ありがとう!ヒビキ!」

エレンさんの手を治療して、再び俺達は王都に向けて歩きだした。今日の夕方には王都に着く予定だ。

のらりくらりと歩いていると俺はある看板を見つけた。

「……『魔物飛び出し注意』?」

なんか…『鹿飛び出し注意』みたいな感じで『魔物飛び出し注意』って書いてる……

「ああ、本来は王都に近いここら辺は魔物なんて生息してないはずなんだが……魔王が現れた影響か魔物の数も増えてるし強くなってるんだ。」

「そうなんですね……」

魔王の影響なのか……まぁ、何も影響がないならわざわざ別の世界から勇者を召喚してまで魔王を討伐しようとは思わないよな。

「ギルド長!質問です!どうして勇者をわざわざ別の世界から召喚するんですかー?この世界にも強い人がいますよね?」

……エレンさんの言う通り…確かにそうだよな。

「あぁ、それは……まぁ、極端な話、俺達にはない特別な力を持っているから、だな。俺達には魔王を討伐できないんだ。勇者達が持つ、特別な力じゃない限り魔王は特別できない……だから別の世界から召喚されるんだ。」

「……特別な力、ですか?」

「あぁ、そうだ。どんな名前だったか……」

「『すきる』やろ?」

ギルアスさんが思い出そうとしていると、リンファさんがフォローした。

「ああ、それだ!」

……『すきる』って…『スキル』ってことだよな?……なんか……うん、やっぱり俺は巻き込まれただけだったんだな……そういう特別な力なんかないし……改めて自分が邪魔者だったことを再確認できたな……

「今回、勇者を召喚したのは神の神託があったからそうですよ。勇者達を召喚せよ、という内容以外に『別の世界にある学校の学生の1クラスを我々が指定します』という内容も含まれていたとか。」

だからあんなに1組にこだわってたのか……

「ルイスはん、よう知っとるなぁ……」

「ふふ、商人の情報網を舐めてはいけませんよ?」

……商人は敵に回しちゃダメそうだな……





それからも俺達は王都を目指し、夕日が綺麗な時間になった。

「わあっ!ヒビキ!見て!スゴいよ!門がめっちゃ大きいよ!」

エレンさんが興奮し気味にはしゃぐ。

「確かに……ルネの倍近くありそうですね。」

流石、王都だけあって門はルネよりめっちゃデカかった。

「ヒビキ、エレン。並ぶぞー」

「はーい!」

「すみません、今行きます。」



王都に入るための列に並んで三十分……やっと王都に入ることができた。昼間はもっと並んでいて三時間は当たり前らしい。

「皆さん、本日はありがとうございました。楽しい一日になりました。王都でのお買い物の際は是非、我が商会へお越し下さいませ。では、失礼します。」

「ばいばーい!またねー!」

ニッコリと笑顔で去っていったルイスさんにスイが元気よく手を振った。それにルイスさんは手を振り返して自身が経営する商会へ入って行った。

「じゃ、俺達はこっちだ。」

ギルアスさんに連れられてやって来たのは……まさかの貴族街だった。貴族街は名前の通り、王都の中で貴族が住む区画だ。

「ギルド長……なんでこんなところに来たんですか……?私、間違いなく場違いなんですけど……」

エレンさんがボヤいたのに俺も首を縦に降って同意した。

「ん?ま、大丈夫だからさっさと行くぞ。」

「せやで、気にしても疲れるだけやで~」

リンファさんまで……まぁ、俺達には着いて行くしかないからなぁ……

「よし、着いたぞ。王都にいる間はここに泊まるからな。」

ギルアスさんに連れられて、俺達はデッカイ屋敷にたどり着いた。

「えっと……ここは?」

「王国の伯爵家の屋敷だ。エレン、お前は胸張って堂々と歩けよ。ヒビキは……まぁ、普段通りでいい。」

「はい?」

なんで俺だけ?

「お前は普段から高貴な雰囲気漂わせてるんだから気にせずとも屋敷で働いてる奴らは自然に下に付くだろうからな。」

「……はい?」

余計意味が分からなくなった……

「ギルアスはん、そんなんヒビキはんに自覚あるわけないやん。まぁ、ヒビキはんはなんも気にせんでええよ。普通に入ったらいいねん。」

「そう、ですか……」


……なんか話によると…この屋敷で働く使用人達は伯爵家に対する忠誠心が高いらしく、礼儀がなってない人を門前払いしてしまうらしい。で、緊張して縮こまると、何か企んでいるのでは?と追い出されるかも知れないらしい。だから堂々と歩けって言ったらしいけど……そうなるとやっぱり俺が普段通りでいいって言われる意味が分からないよな……

「よし…じゃあ、入るぞ。」

ギルアスさんが屋敷の門を開けると……執事?がやって来た。

「お久しぶりでございます、ギルアス様。皆さんのお部屋はご用意出来ておりますが先に荷物を置かれますか?」

「ああ、案内してやってくれ。」

「畏まりました。」

次は屋敷のドアを執事さんが開けた。

『おかえりなさいませ、ギルアス様。お客様、ようこそいらっしゃいました。』

と、多分この屋敷で働いている使用人さん達が頭を下げた。

……ん?ちょっと待て、今『おかえりなさいませ』って言ったよな?…………あ…そういえば、ギルアスさんの家で料理した時、『逃げてきた』って言ってたような……まさか実家から逃げてきたのか……

「それでは、皆様のお部屋へご案内致します。」

ギルアスさんに聞こうとしたらちょうど執事さんにそう言われ、とりあえず用意してくれたという部屋に行くことになったのだった……



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