上 下
24 / 47

関所の前で…

しおりを挟む
翌日……

俺とエレンさん、ギルアスさんは関所の前でリンファさんを待っている。

「おっ!もう来とったんや!アタシより早いやん!」

「ヒビキが時間にうるさいからな。集合時間の十分前には着いてたぞ。」

いやいや……俺がおかしいみたいな言い方だけど……集合時間の十分前…最低でも五分前には集合場所に着くように出るって常識じゃないか?

「ヒビキはんは真面目なんやなぁ。」

リンファさんは感心したように言う。

「……で、ギルアスはん…アレ、伝えたん?」

「いや…まだだな。」

「そうかいな…伝えんでええんか?」

「伝えたら行かないって言いそうだからな……」

「そうなんや?とりあえず、アタシは関与せえへんで。ヒビキはんとエレンはんに嫌われたないねん。」

「……分かった。」

ギルアスさんとリンファさんが何かコソコソと話してるけど…何を話してるかは聞こえないな。まぁ…別に知らなくてもいいことだから話さないだけだろうしな。

「ギルド長~まだ行かないんですか?」

「あー……いや…実はな……後一人、一緒に行くヤツがいるんだよな……」

「そうなんですか?」

「ああ……来たな……」

ギルアスさんが向いた方を見ると、ダグラスさんが歩いてきた。俺は咄嗟にギルアスさんの後ろに隠れた。

……聞いてない…ダグラスさんが一緒とか、聞いてない……ヤバい…気まずいのに加えて怖い……

「……ギルド長…まさかあの人が一緒なんて言いわないよね?」

「……そのまさかだ。」

「……ギルド長…本気で言ってるんですか…?」

……エレンさん…なんか怒ってるような……?

「……あぁ。」

「ギルド長!昨日の今日でわざわざ一緒じゃなくても良かったでしょ!!人の気も知らずに!私はヒビキとルネの街に残ります!勝手に行ってください!」

あれ?…まさか俺のことで怒ってる…のか?てか、ここ『ルネ』って名前の街だったのか……

「ヒビキ、スイ、二人とも帰ろう?無理しなくていいから……」

「あの……俺は大丈夫…なので……」

ギルアスさんも何か理由があって誘ったんだろうし……

「……大丈夫じゃ、ないでしょ…?」

エレンさんが俺の片手を両手で包み込んだ。

……手…また震えてるのか……?

「……暖かい…です…」

「そ、そうかな?昔から体温高くて…」

エレンさんの顔がだんだんと赤くなっていく。

……どうしたんだ?熱があるわけじゃなさそうだけど……

「エ、エレンさん?大丈夫…ですか?顔赤いですよ?体調悪いんですか?」

念のために額に触れて体温を確かめた。

「ふぇっ!?う、ううん!そうじゃないよ!?」

……うん、ちょっと高いような気もするけど、熱があるって感じじゃないな。

「熱はなさそうですね。良かったです。」

「うん……あ、ありがとう……」

俺から目を逸らしたエレンさんの頬はまだ赤い。

……本当に大丈夫か?

「あの…さっきのなんですが……俺は大丈夫なので一緒に行きませんか?王都も気になりますし……」

「……ヒビキがそれでいいなら私はそれでもいいけど……無理しちゃダメだよ?」

「分かりました、エレンさん。」

安心してもらえるように、微笑んでみる。出来てるかは知らないけどな。

カァッとエレンさんの頬が赤く染まった。

「うん…わ、分かってるならいいよ。ほ、ほらギルド長!リンファさん!早く行くよ!」

エレンさんが走って街の門に向かう。

アレ…また転ける気がするな……

俺はエレンさんの後を追いかけた。

「わっ!?」

ほら!

「大丈夫ですか?」

俺がエレンさんの体を支えて、転けないようにした。

「あ…う、うん。だ、大丈夫…だよ。あ、ありがと!」

「どういたしまして。」

俺とエレンさんを先頭に、次は転けないように歩いて門まで向かい、皆で門を出たのだった……





「……なぁ、ギルアスはん。あの二人付き合ってるん?」

「いや、違うな。エレンは完全にヒビキに一目惚れだったんだけどな。ヒビキがさっきエレンが転けそうになって助けたのも、ただ単なる善意だな。」

「マジかいな……エレンはん、気の毒やなぁ……」

「ああ……アイツは自覚無しで女を口説いていくタイプだな。」

「ホンマに……ライバル多くなるなぁ…アタシも負けんようにせな!」

「……は?リンファ?お前、マジで?」

「アタシは本気や!頑張るでぇ~!」

「「はあ~~~~~!?」」

会話に入っていなかったダグラスもこの時ばかりはギルアスと叫んだのだった……

ヒビキ達は後ろでこんなことを話していたのを知るよしもない。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一人だけ竜が宿っていた説。~異世界召喚されてすぐに逃げました~

十本スイ
ファンタジー
ある日、異世界に召喚された主人公――大森星馬は、自身の中に何かが宿っていることに気づく。驚くことにその正体は神とも呼ばれた竜だった。そのせいか絶大な力を持つことになった星馬は、召喚した者たちに好き勝手に使われるのが嫌で、自由を求めて一人その場から逃げたのである。そうして異世界を満喫しようと、自分に憑依した竜と楽しく会話しつつ旅をする。しかし世の中は乱世を迎えており、星馬も徐々に巻き込まれていくが……。

チートスキルで無自覚無双 ~ゴミスキルばかり入手したと思ってましたが実は最強でした~

Tamaki Yoshigae
ファンタジー
北野悠人は世界に突如現れたスキルガチャを引いたが、外れスキルしか手に入らなかった……と思っていた。 が、実は彼が引いていたのは世界最強のスキルばかりだった。 災厄級魔物の討伐、その素材を用いてチートアイテムを作る錬金術、アイテムを更に規格外なものに昇華させる付与術。 何でも全て自分でできてしまう彼は、自分でも気づかないうちに圧倒的存在に成り上がってしまう。 ※小説家になろうでも連載してます(最高ジャンル別1位)

スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった

Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。 *ちょっとネタばれ 水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!! *11月にHOTランキング一位獲得しました。 *なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。 *パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

魔力吸収体質が厄介すぎて追放されたけど、創造スキルに進化したので、もふもふライフを送ることにしました

うみ
ファンタジー
魔力吸収能力を持つリヒトは、魔力が枯渇して「魔法が使えなくなる」という理由で街はずれでひっそりと暮らしていた。 そんな折、どす黒い魔力である魔素溢れる魔境が拡大してきていたため、領主から魔境へ向かえと追い出されてしまう。 魔境の入り口に差し掛かった時、全ての魔素が主人公に向けて流れ込み、魔力吸収能力がオーバーフローし覚醒する。 その結果、リヒトは有り余る魔力を使って妄想を形にする力「創造スキル」を手に入れたのだった。 魔素の無くなった魔境は元の大自然に戻り、街に戻れない彼はここでノンビリ生きていく決意をする。 手に入れた力で高さ333メートルもある建物を作りご満悦の彼の元へ、邪神と名乗る白猫にのった小動物や、獣人の少女が訪れ、更には豊富な食糧を嗅ぎつけたゴブリンの大軍が迫って来て……。 いつしかリヒトは魔物たちから魔王と呼ばるようになる。それに伴い、333メートルの建物は魔王城として畏怖されるようになっていく。

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

異世界に転生したけど、俺の初期スキルが色々おかしい!

月暈シボ
ファンタジー
平凡な少年マサキは生前の勇気が女神達に認められ、三つの勢力が争う異世界エレンディアに転生する。達人級のスキルを与えられる中立勢力を選んだマサキだったが、目論見は外れクソ雑魚状態からのスタートを切ることになる。その危機を美少女魔術士アリサに助けられたマサキは、彼女に憧れと恋心を抱き冒険者として生きる決意を固める。のだが、肝心のアリサとの仲はなかなか進展せずに、逆に新たに仲間に加わる娘達に翻弄されてしまう?!

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

処理中です...