死霊術師の人生日記

胡嶌要汰

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第2章

第十六話「1人」

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 俺は迷宮の帰り道で少しずつ弱い魔物を倒して行ってアルバータ達のレベリングをした。

 そのおかげで迷宮の入り口に着くまでに
アルバータはLV30→LV45
ボウはLV15→34
ケルはLV105→109
にまで上がった。

 B階級迷宮ダンジョン名だけあってそこそこ経験値が稼げる。
しかも、アルバータ達が戦った経験値が俺にまで来るので俺は何もしなくても経験値が稼げていることに気がついた。

 最後の階を登ると階段先でダックさんが仁王立ちで腕を組んで待っていた。

「遅かったな」
「いやぁ。そのぉ。レベルを上げてましてぇ。少しでも強くなろうと思って。」
「……」

 まずい。
また怒らせたかな。
【死霊術師】なんてほとんど役に立たないのにか。
また言われるんだろうなぁ。

 そう思っていた。
だが、ダックさんの反応は俺の予想を越して笑っていた。

「いい心がけだ! その気を絶対に忘れるんじゃないぞ!」
「……は、はい!」

 俺はこんなことで褒められたのは初めてだった。
こんな事前にもどこかで……

 あれ?
前にも?
俺は前にこんな事があったのか?
あれ?あれ?
俺は……どこで生まれたんだ?

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。」
「おい! 大丈夫か!? ヨウ!」

 は!
俺は速峰陽平。
生まれは……日本だ!

 俺は自分が転生者である事を忘れていた。
この世界の人ではない記憶を持っている。
だけど、父さんの顔がぼやけて思い出す様になってきた。

「おい! 意識はあるか!? おい! 大丈夫か!?」
「大丈……夫……です。」

――バタン。
 俺はその場で倒れ込んでしまったらしい。

 俺は倒れている間俺は夢を見た。
前世の夢だ。
母さんと父さんが幸せそうに食卓を囲む夢だ。
だけど、突然母さんと父さんが目の前から消えてしまった。
その時に俺は目を覚ました。

「はぁはぁはぁはぁ。……夢……か。」

 俺は改めて1人なんだと思わされた。
これから俺は1人……なのか……

「主人様! 大丈夫でしたか!?」
「アルバータ! それにボウ! ケル!お前達こそ大丈夫だったか?」
「えぇ。あのダックとやらに言われてここにお運びいたしました。」
「そうか……って。え!? アルバータ、お前、人と話せる様になったのか!?」
「いえ、話せません。ですが、私は元人間です。人間の言葉くらいわかります。」
「そうか。そうだったな……うん。ありがとう」
「ありがたきお言葉! ありがとうございます!」

 そうだ。
まただ、また俺は1人だなんて考えてた。
みんなが居るじゃないか。

 俺は今後一切「1人」なんて言うのはやめにするとしよう。
これは本当にやめた方がいい。

「ところで……ここどこだ?」
「ここはギルドの医務室です。」
「ん? 今話したのはアルバータか?」
「いえ、私は何も」
「私よ私。」

 突然扉を開けて入ってきたのはナース姿の女性だった。
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