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見守るあなたへ

それぞれ②

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あなたの友達も

笑っているよ



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「次はあれを食べよう!!」

ルルに手を引かれながらラバルトは財布をみる

「おいおい、俺の給料がなくなっちまうよ」

「いいじゃないですか、あなたが魔法を使えなくなって…無職になって騎士団に入団するまでの間、誰が食事を奢ってあげてたのかなー?」

「本当に、頭が上がりません」

「分かればよろしい!じゃあ、次はあれね!ラバルトいこう!」

「へいへい、分かったよルル」


ルルは串に刺さった肉を食べながら幸せそうに微笑む
ラバルトもそんな彼女が愛おしくて、笑みを見せた


「それにしてもなんで騎士団に?入団条件も厳しいし、ハウル様も別の仕事を紹介するって言ってくれていたのに」

「あぁ…まぁそれなりに剣も使えるしな、年齢も30までセーフだし」

「おじさん」

「うるせぇ、お兄さんだ!…まぁ」

(お前と同じように誰かを守るために生きたいから、騎士になった……なんて恥ずかしくて言えないな)

そんな事を考えていたラバルトをじっとルルは見つめた

「なにか隠してる?」

「いやいや、隠してないって!」

「ふーん…まぁいいや、ねぇラバルト…騎士になったならさ、休みの間しばらくは国を離れても大丈夫だよね」

「ん?あぁ、釈放されて自由だからな、どっか行きたいのか?」

「うーんと、魔法学校も長期の休みがあるし、良かったら私の育った国に…両親と会わない?」

「お、お前………それって」

「うん、そゆこと、挨拶はしとかないとね」

二人とも、顔を赤くしながら
暫くの沈黙があり
ラバルトが口を開いた


「行こう、ルル……お前のご両親に会わせてくれるか?」

「!!うん、もちろん!」


ルルは微笑み
ラバルトに抱きついた

「おわ!?」

「ふふ、それにね、私のお母さん騎士なんだ、鍛え直してもらいなよ」

「か、母さんが騎士なのか?」

「うん、ギリシア王国の騎士で…私の大好きなお母さん、名前も同じにしてるの」

「それって………………」

「うん、ルル・、マリアンヌはお母さんの名前!」


マリアンヌ

ギリシア王国の守護剣と呼ばれた偉大な騎士だ……
これはこってり鍛え直されそうだな…



微笑むルルと

苦笑しながらも覚悟を決めたラバルトは幸せそうに

いつまでも連れ添って歩いた








ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





おじいちゃんも



あなたが生きていてくれたから



きっと幸せよ



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



牢の中

グラッジは目の前の花を見つめる

瓶の中に少量の水が入れられ
一輪のタンポポが差されている

ひ孫であるソフィアが持って来てくれた一つの贈り物


牢の中に持ち込めるのはこれだけだ


だがそのタンポポを見て彼はただ笑顔で

嬉しそうに笑っていた



(私はこの牢を出ることはできないだろう、それだけの事をしてきた………………ただ)




(ここで、こうして花を見つめる日々も悪くはない………………)



これでいい



いや




これがいい










グラッジはその余生を牢の中で過ごした

人々は彼を孤独に
たった一人で死んだと
不幸に死んだというだろう


けど

禁忌に染まり
満たされぬ欲望を追い続けたあの日々と


一輪の花を見て満たされる毎日



どちらが幸せだったのか


それは彼だけが決めることだ





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー









そしてあなたは



私達のもとへ










ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「よいしょ、ソフィア…大丈夫?」

「うん!だいじょうぶ!!」

三歳となったソフィアを馬車に乗せてアリサも隣に

向かいにはカイエンも一緒だった


「ねぇね……どこいくの?」

「ソフィアのおじいちゃんと、おばあちゃんのところだよ」

「さっきあったよ?」

カイエンがソフィアを撫でながら呟く

「今から会いに行くのはお母さんのとこのおじいちゃんとおばあちゃんだよ」

「おかあさんの?」

「うん、落ち着いて会いに行けなかったから、お母さんと一緒に会いに行こう?」

「うん!ソフィアね…いっぱいお話したい!」

「それは、難しいかも」

「なんで?」

「二人ともね、寝てるんだ……けどソフィアも挨拶だけはしないとね」

「?………………おかあさん、悲しいの?」

「ううん、違うの…ちょっとね」

向かいにいたカイエンは心配そうにアリサを見る

「大丈夫か?」

「うん、大丈夫……久々に会いにいくんだから、泣いていられないよね」


ソフィアは少し首をかしげながら
母であるアリサの膝に座る

「おかあさん、だいじょうぶ…ソフィアがいるよ」

「ほんとうだ、ソフィアがいるからお母さん、へっちゃらになったよ」

笑い合う二人を見つめながら
カイエンは馬車を走らせるようにお願いした






アリサは両親を亡くした事を未だに確認していない

手紙を呼んで知った
亡くなったのは事実だろう

けど

もしかすると生きているかもしれない

そんな希望を失いたくなくて
両親の眠るお墓に行くことをどこか拒んでいた

けど
ソフィアを両親に見てもらうために
覚悟を決めたのだ


(待っててね、お母さん、お父さん……今、会いにいくから)


アリサはソフィアを抱きしめながら



両親の眠るフェルト国へと思いを馳せた







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー











大丈夫だよ


アリサ
あなたはすごく優しくて


強い子だって知ってるから


安心して
私達に会いにおいで


待ってるから



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