59 / 107
二章
73話
しおりを挟む
「おかたん! もうすこしでつく?」
「うん、あと少しだよ。リルレット」
向かうのは、母の眠るお墓。
揺れる馬車の中で暇になったリルレットはシルウィオの膝に座って、彼の頬を引っ張るようにして遊び始める。
シルウィオは抵抗もせずにされるがまま……いや、むしろ嬉しそうだ。
その光景に微笑みつつ、私は馬車の外を見つめる。
私の母は、グラナートの辺境の村にある共同墓地に埋めてもらう事を望んだ。
父が……アレだったので、同じ家系のお墓に入るのは嫌だったのかもしれない。
母らしい選択だ。
だから母が眠る村に向かう道は、のどかな野原が広がる田舎道だった。
真っ青な空と見渡す限り新緑の平原。その光景にふと思い出す。
ここへ最後に来たのは……アドルフの……グラナートの王妃になったばかりの頃だっただろうか
◇◇◇
揺れる馬車の中、アドルフは外を見渡して言葉を失っていた。
なにせ、見渡す限りなにもない平原なのだから当然だ。
貴族らしからぬ土地に私の母が眠っていることを驚くのも無理はない。
『こんな所に、カーティアの母が眠っているのか』
『幼い頃の記憶しかないですが。母は、父とあまり仲が良くなかったので……』
『そういうものか……まぁ、亡き後ぐらいはのどかな場所に居たいという気持ちは分からないでもないが』
『ふふ、そうですね』
長い時間を馬車が走り、辿り着いた農村の近くに母のお墓は建っていた。
村から少し離れた広い野原にポツンと立った墓標は悪目立ちしているように見える。
ここ一帯は共同墓地であるのだが、流石に貴族家が建てたお墓の近くに建てることは憚られるのだろう。
管理もろくにされておらず、雑草が生い茂っている。
その光景は、少し……
『……寂しいところだな』
『そうですね……父がお墓を管理する事を放棄して。私も王妃教育でなかなか来れず。少し……寂しい事になってしまってますね』
呟きながら、私はせめてもと墓標の周辺に生えている雑草を抜いた時。
アドルフもしゃがみ込んで、私と同じように雑草を抜き始めた。
『っ……?』
『陛下!?』
私や、周囲の護衛が驚くのも当然だった。
アドルフは王家の人間だ。私の行為を下品だと吐き捨てるかと思っていたのに。
むしろ彼は、嬉しそうに笑いながら雑草を抜いていくのだ。
『感謝はいらないぞ……俺にとっての義母なんだ。これぐらいはするさ』
『アドルフ……』
『それに、案外楽しいな。王として忙殺されそうな日々に、こうしてのどかな場所で過ごすのを夢見ていたんだよ。いいな、ここ』
彼は楽しそうに、母のお墓周りの雑草処理を嫌な顔もせずにしてくれる。
そして積もった雑草を見てやり切った表情を浮かべた後、私と共にお墓に挨拶をしてくれた。
『義母も、これで少しは喜んでくれるだろう……いっそ、墓の周りを花畑にでもするか!』
『ふふ、そうですね。いつか時間があれば母にそうしてあげましょうか。……ありがとう、アドルフ』
『あぁ、いつかそうしよう。すっかり夜だな……帰ろうか。カーティア』
『はい!』
草むしりをして汚れた手。とても王家の手には見えないけれど、お互いに汚れた手を繋いで歩いていく。
笑い合い、未来を話しながら。
◇◇◇
どうして、今になって思い出すのだろう。
お互いに愛して合っていた頃の、数少ない思い出。
忘れていた記憶を思い出して戸惑っていると、馬車が停まった。
「着きました。カーティア様」
目的地に着いたようだ。
先導したジェラルド様の言葉に、私は馬車を降りる。
そこには、記憶と変わらなぬ母のお墓があった。
少し違うのは、私が王妃時代に村の人たちに頼んだおかげか、雑草の管理をしてもらえて、綺麗にしてもらっている。
村の人達には感謝をしないと。
とはいえ、ここはグラナートでも辺境の地。村の人達は私のことなどあまり覚えてもいないだろう、いきなり押しかけても困らせそうだな。
「ここに、おかたんのおかたんがいるの?」
「そう……私達を見守ってくれてるのよ。リルレット」
「じゃあ、りるもありがとーする!」
「そうだな、俺も……挨拶しておこう」
シルウィオと共にリルレットの手を引いて、母のお墓に挨拶をする。
幸せになったことを報告し、お墓参りも済ませ……帰ろうと振り返った時だった。
「……っ!!」
「わー! きれー!」
「……見事だな」
母のお墓しか見ていなかったから、気付かなかった。
振り返れば……綺麗な花畑が広がっていた。
ちょうど、母のお墓から見える綺麗な景色に思わず息を呑む。
記憶と違う。こんな花畑が広がってはいなかったはずなのに。
「どうして……」
宝石のように色鮮やかに咲き誇った花々が、見惚れてしまう程の絶景を作りだしている。
風がそよげば、散っていく花弁が虹のように空に川を描くのだ。
あまりに見事な光景に、私達を含め……グレインやジェラルド様も言葉を失って見惚れていた。
「……あれま、お客さんだ。こんにちは」
見惚れていると、見知らぬ男性が私達を見て声をかけた。
三十歳ほどだろうか、持っている道具からこの共同墓地の掃除をしている方だろう。
屈託のない笑顔を浮かべて私達へと会釈をする彼に、思わず声をかけてしまう。
「あ、あの……少し聞いてもいいですか?」
「……どうしましたか? おらたちは貴族様のご要望に応えられるような事、あまりできないですよ?」
「い、いえ。聞きたいだけです。ここから見える花畑ですが、いつから……ここに?」
「あぁ……あれは……」
男性は笑顔を浮かべて答えた。
「数年前、いきなりやって来た男があそこに植え始めたんですわ。片腕も動かないような怪我人でね、聞けば、なんでも……代償のせいだとか訳わかんないこと言っていたかな?」
「……それ、は」
「とはいえ、楽しそうに笑って農作業も手伝ってくれるし……うちの村とも直ぐに打ち解けて、すっかり村の一員ですよ。あいつが熱心に花を植え育てて、今やこの光景でしょう? 大したもんですよ」
––––いっそ、墓の周りを花畑にでもするか!
ただの偶然。
しかし聞かずにはいられなかった。確かめるように疑問を口にする。
「あの……その人は……」
「しかもそいつ、もうじきに結婚するんですよ。片腕が使えないからって介護してた女性と恋仲になってね。せっかくだからあの花畑で結婚式でもしようかなんて、考えとるんですわ」
そこまで喋った男性は、遠くに目をこらしたかと思うと「お!」と跳ねた声を出す。
「噂をすれば、ほら! 向こうで歩いてる奴だよ!」
彼が指さす方向を見て、目を見開く。
女性と寄り添って、笑いながら歩いていたのは……
––魔法とは、一つの結論だけでなく……予想も出来ない結果が起きるのです。人智を超えた、僕らの予想など超えた神秘的な結果を起こす……だから面白いんです。
そうか……シュルク殿下が言っていたことが、ようやく分かった。
きっと、この事を……
花畑で歩く男女を見つめ、その光景を心の底から祝福する気持ちから自然と微笑みがこぼれる。
「良かったら呼んできましょうか?」
男性の気遣いに、首を横に振る。
私も、彼の人生からは消えよう。それがお互いの一番だろう。
「大丈夫です。ただ……”ありがとう”とだけ……伝えておいてくれますか?」
「え? なにを……」
困惑した表情を浮かべた男性に頭を下げ、私はリルレットとシルウィオの手を握る。
色とりどりの花弁が舞い散り、その花弁が頬を撫でる中で二人に微笑んだ。
「帰ろうか! シルウィオ、リルレット……私達の居場所に」
「うん! おかたん! りるね、かえったら、まほーのべんきょうするの!」
「リルレット、私も手伝えることは何でもするからね」
「うん!」
「俺は、帰れば久々にカティと時間を過ごしたい」
「ふふ、私もです。シルウィオ……大好きだよ」
「っ……知ってる。俺も同じだ」
喜ぶリルレット、そして照れるシルウィオと共に歩き出す。
振り返ることはない。
今も私の手は最愛の家族と繋がって……離れることはないから。
私達は……お互いの幸せのために生きていこう。
きっとそれが、互いに望んだ道だから。
どうか、幸せに。
ありがとう……––––
「うん、あと少しだよ。リルレット」
向かうのは、母の眠るお墓。
揺れる馬車の中で暇になったリルレットはシルウィオの膝に座って、彼の頬を引っ張るようにして遊び始める。
シルウィオは抵抗もせずにされるがまま……いや、むしろ嬉しそうだ。
その光景に微笑みつつ、私は馬車の外を見つめる。
私の母は、グラナートの辺境の村にある共同墓地に埋めてもらう事を望んだ。
父が……アレだったので、同じ家系のお墓に入るのは嫌だったのかもしれない。
母らしい選択だ。
だから母が眠る村に向かう道は、のどかな野原が広がる田舎道だった。
真っ青な空と見渡す限り新緑の平原。その光景にふと思い出す。
ここへ最後に来たのは……アドルフの……グラナートの王妃になったばかりの頃だっただろうか
◇◇◇
揺れる馬車の中、アドルフは外を見渡して言葉を失っていた。
なにせ、見渡す限りなにもない平原なのだから当然だ。
貴族らしからぬ土地に私の母が眠っていることを驚くのも無理はない。
『こんな所に、カーティアの母が眠っているのか』
『幼い頃の記憶しかないですが。母は、父とあまり仲が良くなかったので……』
『そういうものか……まぁ、亡き後ぐらいはのどかな場所に居たいという気持ちは分からないでもないが』
『ふふ、そうですね』
長い時間を馬車が走り、辿り着いた農村の近くに母のお墓は建っていた。
村から少し離れた広い野原にポツンと立った墓標は悪目立ちしているように見える。
ここ一帯は共同墓地であるのだが、流石に貴族家が建てたお墓の近くに建てることは憚られるのだろう。
管理もろくにされておらず、雑草が生い茂っている。
その光景は、少し……
『……寂しいところだな』
『そうですね……父がお墓を管理する事を放棄して。私も王妃教育でなかなか来れず。少し……寂しい事になってしまってますね』
呟きながら、私はせめてもと墓標の周辺に生えている雑草を抜いた時。
アドルフもしゃがみ込んで、私と同じように雑草を抜き始めた。
『っ……?』
『陛下!?』
私や、周囲の護衛が驚くのも当然だった。
アドルフは王家の人間だ。私の行為を下品だと吐き捨てるかと思っていたのに。
むしろ彼は、嬉しそうに笑いながら雑草を抜いていくのだ。
『感謝はいらないぞ……俺にとっての義母なんだ。これぐらいはするさ』
『アドルフ……』
『それに、案外楽しいな。王として忙殺されそうな日々に、こうしてのどかな場所で過ごすのを夢見ていたんだよ。いいな、ここ』
彼は楽しそうに、母のお墓周りの雑草処理を嫌な顔もせずにしてくれる。
そして積もった雑草を見てやり切った表情を浮かべた後、私と共にお墓に挨拶をしてくれた。
『義母も、これで少しは喜んでくれるだろう……いっそ、墓の周りを花畑にでもするか!』
『ふふ、そうですね。いつか時間があれば母にそうしてあげましょうか。……ありがとう、アドルフ』
『あぁ、いつかそうしよう。すっかり夜だな……帰ろうか。カーティア』
『はい!』
草むしりをして汚れた手。とても王家の手には見えないけれど、お互いに汚れた手を繋いで歩いていく。
笑い合い、未来を話しながら。
◇◇◇
どうして、今になって思い出すのだろう。
お互いに愛して合っていた頃の、数少ない思い出。
忘れていた記憶を思い出して戸惑っていると、馬車が停まった。
「着きました。カーティア様」
目的地に着いたようだ。
先導したジェラルド様の言葉に、私は馬車を降りる。
そこには、記憶と変わらなぬ母のお墓があった。
少し違うのは、私が王妃時代に村の人たちに頼んだおかげか、雑草の管理をしてもらえて、綺麗にしてもらっている。
村の人達には感謝をしないと。
とはいえ、ここはグラナートでも辺境の地。村の人達は私のことなどあまり覚えてもいないだろう、いきなり押しかけても困らせそうだな。
「ここに、おかたんのおかたんがいるの?」
「そう……私達を見守ってくれてるのよ。リルレット」
「じゃあ、りるもありがとーする!」
「そうだな、俺も……挨拶しておこう」
シルウィオと共にリルレットの手を引いて、母のお墓に挨拶をする。
幸せになったことを報告し、お墓参りも済ませ……帰ろうと振り返った時だった。
「……っ!!」
「わー! きれー!」
「……見事だな」
母のお墓しか見ていなかったから、気付かなかった。
振り返れば……綺麗な花畑が広がっていた。
ちょうど、母のお墓から見える綺麗な景色に思わず息を呑む。
記憶と違う。こんな花畑が広がってはいなかったはずなのに。
「どうして……」
宝石のように色鮮やかに咲き誇った花々が、見惚れてしまう程の絶景を作りだしている。
風がそよげば、散っていく花弁が虹のように空に川を描くのだ。
あまりに見事な光景に、私達を含め……グレインやジェラルド様も言葉を失って見惚れていた。
「……あれま、お客さんだ。こんにちは」
見惚れていると、見知らぬ男性が私達を見て声をかけた。
三十歳ほどだろうか、持っている道具からこの共同墓地の掃除をしている方だろう。
屈託のない笑顔を浮かべて私達へと会釈をする彼に、思わず声をかけてしまう。
「あ、あの……少し聞いてもいいですか?」
「……どうしましたか? おらたちは貴族様のご要望に応えられるような事、あまりできないですよ?」
「い、いえ。聞きたいだけです。ここから見える花畑ですが、いつから……ここに?」
「あぁ……あれは……」
男性は笑顔を浮かべて答えた。
「数年前、いきなりやって来た男があそこに植え始めたんですわ。片腕も動かないような怪我人でね、聞けば、なんでも……代償のせいだとか訳わかんないこと言っていたかな?」
「……それ、は」
「とはいえ、楽しそうに笑って農作業も手伝ってくれるし……うちの村とも直ぐに打ち解けて、すっかり村の一員ですよ。あいつが熱心に花を植え育てて、今やこの光景でしょう? 大したもんですよ」
––––いっそ、墓の周りを花畑にでもするか!
ただの偶然。
しかし聞かずにはいられなかった。確かめるように疑問を口にする。
「あの……その人は……」
「しかもそいつ、もうじきに結婚するんですよ。片腕が使えないからって介護してた女性と恋仲になってね。せっかくだからあの花畑で結婚式でもしようかなんて、考えとるんですわ」
そこまで喋った男性は、遠くに目をこらしたかと思うと「お!」と跳ねた声を出す。
「噂をすれば、ほら! 向こうで歩いてる奴だよ!」
彼が指さす方向を見て、目を見開く。
女性と寄り添って、笑いながら歩いていたのは……
––魔法とは、一つの結論だけでなく……予想も出来ない結果が起きるのです。人智を超えた、僕らの予想など超えた神秘的な結果を起こす……だから面白いんです。
そうか……シュルク殿下が言っていたことが、ようやく分かった。
きっと、この事を……
花畑で歩く男女を見つめ、その光景を心の底から祝福する気持ちから自然と微笑みがこぼれる。
「良かったら呼んできましょうか?」
男性の気遣いに、首を横に振る。
私も、彼の人生からは消えよう。それがお互いの一番だろう。
「大丈夫です。ただ……”ありがとう”とだけ……伝えておいてくれますか?」
「え? なにを……」
困惑した表情を浮かべた男性に頭を下げ、私はリルレットとシルウィオの手を握る。
色とりどりの花弁が舞い散り、その花弁が頬を撫でる中で二人に微笑んだ。
「帰ろうか! シルウィオ、リルレット……私達の居場所に」
「うん! おかたん! りるね、かえったら、まほーのべんきょうするの!」
「リルレット、私も手伝えることは何でもするからね」
「うん!」
「俺は、帰れば久々にカティと時間を過ごしたい」
「ふふ、私もです。シルウィオ……大好きだよ」
「っ……知ってる。俺も同じだ」
喜ぶリルレット、そして照れるシルウィオと共に歩き出す。
振り返ることはない。
今も私の手は最愛の家族と繋がって……離れることはないから。
私達は……お互いの幸せのために生きていこう。
きっとそれが、互いに望んだ道だから。
どうか、幸せに。
ありがとう……––––
895
お気に入りに追加
12,069
あなたにおすすめの小説
婚約者の側室に嫌がらせされたので逃げてみました。
アトラス
恋愛
公爵令嬢のリリア・カーテノイドは婚約者である王太子殿下が側室を持ったことを知らされる。側室となったガーネット子爵令嬢は殿下の寵愛を盾にリリアに度重なる嫌がらせをしていた。
いやになったリリアは王城からの逃亡を決意する。
だがその途端に、王太子殿下の態度が豹変して・・・
「いつわたしが婚約破棄すると言った?」
私に飽きたんじゃなかったんですか!?
……………………………
たくさんの方々に読んで頂き、大変嬉しく思っています。お気に入り、しおりありがとうございます。とても励みになっています。今後ともどうぞよろしくお願いします!
【完結】貴方達から離れたら思った以上に幸せです!
なか
恋愛
「君の妹を正妻にしたい。ナターリアは側室になり、僕を支えてくれ」
信じられない要求を口にした夫のヴィクターは、私の妹を抱きしめる。
私の両親も同様に、妹のために受け入れろと口を揃えた。
「お願いお姉様、私だってヴィクター様を愛したいの」
「ナターリア。姉として受け入れてあげなさい」
「そうよ、貴方はお姉ちゃんなのよ」
妹と両親が、好き勝手に私を責める。
昔からこうだった……妹を庇護する両親により、私の人生は全て妹のために捧げていた。
まるで、妹の召使のような半生だった。
ようやくヴィクターと結婚して、解放されたと思っていたのに。
彼を愛して、支え続けてきたのに……
「ナターリア。これからは妹と一緒に幸せになろう」
夫である貴方が私を裏切っておきながら、そんな言葉を吐くのなら。
もう、いいです。
「それなら、私が出て行きます」
……
「「「……え?」」」
予想をしていなかったのか、皆が固まっている。
でも、もう私の考えは変わらない。
撤回はしない、決意は固めた。
私はここから逃げ出して、自由を得てみせる。
だから皆さん、もう関わらないでくださいね。
◇◇◇◇◇◇
設定はゆるめです。
読んでくださると嬉しいです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】潔く私を忘れてください旦那様
なか
恋愛
「子を産めないなんて思っていなかった
君を選んだ事が間違いだ」
子を産めない
お医者様に診断され、嘆き泣いていた私に彼がかけた最初の言葉を今でも忘れない
私を「愛している」と言った口で
別れを告げた
私を抱きしめた両手で
突き放した彼を忘れるはずがない……
1年の月日が経ち
ローズベル子爵家の屋敷で過ごしていた私の元へとやって来た来客
私と離縁したベンジャミン公爵が訪れ、開口一番に言ったのは
謝罪の言葉でも、後悔の言葉でもなかった。
「君ともう一度、復縁をしたいと思っている…引き受けてくれるよね?」
そんな事を言われて……私は思う
貴方に返す返事はただ一つだと。
【完結】側妃は愛されるのをやめました
なか
恋愛
「君ではなく、彼女を正妃とする」
私は、貴方のためにこの国へと貢献してきた自負がある。
なのに……彼は。
「だが僕は、ラテシアを見捨てはしない。これから君には側妃になってもらうよ」
私のため。
そんな建前で……側妃へと下げる宣言をするのだ。
このような侮辱、恥を受けてなお……正妃を求めて抗議するか?
否。
そのような恥を晒す気は無い。
「承知いたしました。セリム陛下……私は側妃を受け入れます」
側妃を受けいれた私は、呼吸を挟まずに言葉を続ける。
今しがた決めた、たった一つの決意を込めて。
「ですが陛下。私はもう貴方を支える気はありません」
これから私は、『捨てられた妃』という汚名でなく、彼を『捨てた妃』となるために。
華々しく、私の人生を謳歌しよう。
全ては、廃妃となるために。
◇◇◇
設定はゆるめです。
読んでくださると嬉しいです!
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
【完結】殿下、自由にさせていただきます。
なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」
その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。
アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。
髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。
見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。
私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。
初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?
恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。
しかし、正騎士団は女人禁制。
故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。
晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。
身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。
そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。
これは、私の初恋が終わり。
僕として新たな人生を歩みだした話。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。