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番外編・ルウさんぽ
ルウとの日々・2
しおりを挟む「ナーちゃん、おてて~」
授業を終えて、今日もルウと手を繋いで帰路に着く。
以前に二人で決めた手の繋ぎ方で、手袋にルウの小さな手が入り。
ぎゅっと握ってくれた。
「えへへ、ぽかぽかだね」
「ルウの手、あったかいから私もすっごく助かってるよ」
「ルウのおてて、ぬくぬく?」
「ふふ、そうだね。ぬくぬくだよ」
パッと表情を明るくさせて、ルウが小さな手を大きく伸ばす。
そして、私の手を精一杯ぎゅっと握った。
「じゃあ、もっとナーちゃんをギュッして、あったかくするの」
「ありがとね。ルウ」
可愛いルウの仕草に頬笑みながら。
帰り道を歩いていると、ふわりと甘い香りが漂ってきた。
「あ! おいもさんだ!」
「おいもさん?」
ルウが指をさすので視線を向ければ。
道の端にて露店を出し、イモを焼いているおじさんがいた。
甘い香りの正体は焼き芋だ。
「ルウ、おもいさんすき!」
そう言って、ルウは自分の鞄を開いてゴソゴソと何やら探している。
どうしたのだろうかと、覗き込めば……可愛らしい袋を取り出した。
「えへへ、ルウ……おこづかいもってきてるの」
「ルウ、買い食いは駄目だってモーセ講師が言ってるよ?」
「でもね、でもね。おもいさん食べたいもん……」
胸に可愛らしい小遣い袋を抱いて、私を見上げるルウ。
その瞳にねだられては、私には断る事はでき無い。
「じゃあ内緒にしてあげる。でも夜ご飯もあるから一個だけだよ?」
「やた! やた!」
ルウは嬉しそうに、お小遣い袋を開く。
でも……その金額は焼き芋を買うには少し足りなかった。
「おいもさん……」
あまりに悲しそうな表情なので、私は……
自分の持っていたお金を、焼き芋が買える分だけ入れてあげる。
「ルウ、内緒だよ?」
「っ!! ……ナーちゃん、すき」
ギュッとお返しのハグを貰いながら、ルウは駆け出す。
焼き芋売りのおじさんに、少し緊張しながらもお小遣い袋を広げていた。
「おじちゃん、おいもさん。いっこください」
気のいいおじさんが、ルウに笑いかけながら焼き芋を渡す。
それを持って、ルウは戻ってきた。
嬉しそうに満面の笑みだ。
「かえた!」
「よかったね、ルウ」
「えへへ。ナーちゃんのおかげ」
こんなに喜んでくれるなら、買い食いを内緒にするぐらい軽いものだ。
「じゃあ、これ……はんぶんこ!」
「え? いいの? 私はそんなにお金払ってないよ?」
「ううん。ちがうの、ルウはナーちゃんといっしょにたべたかったの」
笑うルウが、半分の焼き芋を渡してくれる。
ただ私と食べたいから半分にしてくれる。
いつしか失っていた子供ながらの純粋な優しさに、不思議と笑みがこぼれた。
「ありがとう。美味しいね」
「うん! おててつないでたべたい」
「じゃあ、こっちおいで」
焼き芋屋さんの端に置かれた、お客用椅子で一緒に食べる。
手は互いに握りながら、片手で焼き芋を頬張った。
「えへへ。だいすきなナーちゃんと、いっしょにおもいさん~」
ルウの陽気な声、焼き芋の香り、口いっぱいに広がる甘さに……心まで満たされる。
本当に美味しい。
「……おかしいの。儂は買い食いは駄目だと言っておったのに」
「っ!!」
「あ……」
焼き芋に夢中になっており、気付かなかった。
いつの間にかモーセさんが来ており……私達の前に立っていることに。
「あ、あの……これは……」
「儂の注意を聞かない子は、宿題二倍だったはずじゃがの~?」
「わ、私がルウに買ってあげたんです。ルウは悪くありません」
「ルウがナーちゃんにお願いしたの! ナーちゃんわるくないよ!」
互いに庇うような言葉を発した瞬間。
モーセさんはフッと笑った。
「互いに優しい子らよの。お主らは」
そう言って、モーセさんは焼き芋屋さんにお金を渡す。
買った焼き芋を手にして、私達の隣に座った。
「儂も買い食いした事を黙っておいてくれるかの?」
「え?」
「モーセおじちゃん。いいの?」
「ほほほ、実はな? 儂も帰り道の途中で焼き芋の香りに釣られたんじゃ。これで共犯だな? 皆には内緒だぞ?」
ニカリと笑うモーセさんの言葉に、私達は頬笑みながら頷く。
優しいモーセさんの気遣いに感謝し、買い食いはしないように反省しながら。
今日だけは。
三人共犯で……温かくて心が満たされる焼き芋を食べた。
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